西脇美絵子の東京アマポーラ

大劇場を制覇したサラの圧倒的な存在感と作品のクオリティ

フラメンコ・フェスティバル・イン TOKYOが、
昨日、いよいよ開幕。
10年ぶりに、サラ・バラスが日本にやって来た。

4年あまりの産休期間をへて、
母となったサラは、昨年12月に舞台に復帰。
ニューヨークをはじめ世界各国で復帰後初のツアーを重ねながらの来日だ。

力強くシャープな動き、
正確無比にしてこの上なく心地良いサパテアード
一糸乱れぬ連続ブレリタ、
夢のように空を舞うファルダ.......
そしてその身体がつかみ動かす周囲の空気のなんと大きいこと!

舞台に登場するやいなや、
あの華麗な"サラの世界"が、圧倒的な迫力で繰り広げられた。
10年の時を経ても、全く変わらないどころか、
さらに進化したサラが、そこにいた。

この作品は、
パコ・デ・ルシア、エンリケ・モレンテ、カマロン、アントニオ・ガデス、モライート、カルメン・アマジャ、
サラ・バラス(及び現代フラメンコ)が多大な影響を受けた6人の偉大なマエストロに捧げられたオマージュ。
アンソロジーのスタイルで、
先達一人ひとりに小作品が捧げられていくという構成だ。

中でも秀逸だったのが、
ガデスに捧げられた「カルメンたち」から「フールカ」へのくだりだ。
特に、サラが男装で踊った「フアルーカ」には、息を呑んだ。

超絶のサパテアードが創出する音とコンパスのうねりで圧倒しつつも、
そこに静寂の間が、ゆったりと織り込まれていく。
静謐で密度の濃い空気が大きな会場を埋め尽くしていく。

そのファーカのさなか、
アンダルアの土の匂いを感じさせる一瞬にドキリとする。
あぁ、これがサラの成熟の証か...。
それは、初めて見るサラの一面だった。

ファルーカの最後に登場した特別ゲスト、
サックスのティム・リースとの
スリリングな極上のセッション。

そしてタンゴのリズムにのせたようなティエント(このアレンジが超カッコイイ!)で、
空気は一転して、華やかな群舞となって、この章はおわった。

最終的に、
90分の上演予定が30分伸びて120分ノンストップ!
だが、贅沢で心地良い舞台の緊張が、終始会場を支配した。
観客はかなり早い段階から、拍手をお送り、会場の温度をさらに上げた。

素晴らしかったのはバイレだけではない。
舞台を構成するさまざまな要素が高水準の仕事をしていた。

もう少し全体に光量を上げてもいいような気もするが、
抜群の演出力を備えた照明、
バックの大音量にかき消されることなく響き割ったサパテーアド、
大劇場で、フラメンコの音圧を制御した音響。
サラのあの他に類のない美しいファルダに象徴される、衣装。
総合芸術としての粋が一つに凝縮された舞台だった。

こうした舞台作品としてのクォリティの高さは、
サラの、これまで舞台活動のスケールの大きさと経験の豊富さを
何よりも物語っていたと思う。

私達のアイドル、サラは、
大スターへと変貌を遂げ、
舞踊団を率いる座長としても、優秀なスタッフとの熱い信頼関係を築いていることを、
改めて、強烈に印象づけた。

それは、当然の如くサラの踊りにも現れていて、
その立ち姿の揺るぎなさは、
まさしく大地と深くつながっていた。
その手を高く振り上げれば振り上げるほど
サラの身体は、重みを増した。

客席は、久しぶりのサラとの再会に、開演前から興奮気味。
上演途中のかなり早い段階から、拍手が度々湧き起こり、
最後は総立ちのスタディングオーベーション!となって、幕を閉じた。

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西脇美絵子 プロフィール

フラメンコ・シティオ主幹、及びアクースティカWEB担当。フラメンコ専門雑パセオ・フラメンコの編集長を経て、フリーランスの編集ライター、プロデューサーとして活動。取材執筆、公演・ライブ等の企画制作・プロモーション、映像ソフトの企画・制作などフラメンコの現場を主なフィールドに仕事を重ねる。スタッフとして参加した主な公演に「フラメンコ曽根崎心中」、「第1回日本フラメンコ・フェスティバル」など。単行本では「逢坂剛対談集/フラメンコやりたいほうだい」、「フラメンコ上達ポイント50」等。また数多くの映像ソフトも手掛けている。
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