スペイン情報満載!フラメンコ・ウォーカー

第2回 ヘレスの"スイング"よ、永遠に!「モライート通り」誕生[Vol.2]Moraito

フラメンコ・ウォーカー第2回は、2月から3月にかけて滞在していたヘレス・デ・ラ・フロンテーラ関連でお届けします。
 ヘレス・デ・ラ・フロンテーラは、アンダルシア州カディス県にある都市。早くからヒターノが定住し、フラメンコが生まれ育った場所で、フラメンコの礎を築いたアーティストの中にはヘレス出身者の名前が多く挙げられます。フラメンコのほかに、馬術、シェリー酒そしてF1サーキットの開催地としても知られています。

そのヘレスで、2月24日から2週間、毎年恒例のフラメンコフェスティバル「フェスティバル・デ・ヘレス」が開催されました。スペインでは "フラメンコフェスティバル"と称する催しはが、マドリードやセビージャなど各地で行なわれていますが、その中でもヘレスのフェスティバルは、海外からの参加者には比較的アクセスしやすいと思います。というのは、期間中は毎日、何かしら舞台公演やコンサートがあり、その公演会場のほとんどが徒歩圏内にあるのです。同時に踊りやパルマ(フラメンコのリズムをとる手拍子)のクラスも並行して開催されているので、体力さえ続けば短期間で集中してどっぷりフラメンコ漬けになれるのです。フラメンコの仕事を始めてからはバイレ練習生を基本的に引退した私ですが、このフェスティバルのクルシージョだけは、細々と参加を続けて12年。年に一度は、一流アーティストがどうやって踊りを作っていくのかを間近で見させていただいています。

 フラメンコは楽譜のない音楽。同じ名の曲種であっても、地域によって違いがあります。身近なものに例えるなら...「うどん」。(もう少し洒落た例えができればいいのですが...)「うどん」と言えば、皆さん同じ食べ物が頭に浮かびますよね。ところが関西と関東とでは、つゆの色が違います。そして、上に乗っている具や麺の太さや形状にも地域によって違いがあります。フラメンコの曲にも、それと共通したところがあるように思います。その土地の気候や受け継がれて来た風習、住人の嗜好、さらには歌う人の個性によっても同じ曲種、同じ歌詞を歌ってもアレンジが変わって来ます。

 さて、ここヘレスにも独特の味=サボールがあります。例えば「ブレリア」。フラメンコをやっている方にはお馴染みの"ブレリア・デ・ヘレス"には、ヘレスならではのノリが感じられます。そのヘレスのノリ="スイング"を何とも心地よく、さらには、フラメンコの深い響きをも心にガツンと感じさせてくれるのがモライートの弾くギターです。モライート(=モライート・チコ)は、ヘレス出身のフラメンコギタリスト。本名マヌエル・モレノ・フンケーラ。残念ながら昨年8月、54歳でこの世を去ってしまいました。

Moraito/モライートと著者 演奏はもちろん温かい人柄からも、皆に愛されていた素晴らしいアーティスト、モライート。その名前がサンティアゴ地区の道につけられました。「BARRERAS」改め「Calle MORAITO CHICO」。(「今週のコンパス」コーナーで既に紹介されていました。)生前の自宅のすぐ側で、よく立ち寄っていたバル「アルコ・デ・サンティアゴ(ARCO DE SANTIAGO)」のある通りです。ヘレスには、サンティアゴとサンミゲルという2つの重要なフラメンコ地区がありますが、このバルはサンティアゴのアーティストがよく訪れる有名なバルのひとつ。「黒木メイサ×アントニオ・エル・ピパ」の番組のロケにもご協力いただきました。撮影当日、先回りしてバルに行くと、なんと!モライートが私達を迎えてくれ、出演してくれたのです。コーディネーターの私にも知らされていなかったスペシャルプレゼントでした。
 このバルから、サンティアゴ広場を背にした通りの突き当たりには、モライートが共演者達とリハーサルに使っていたペーニャ・ルイス・デ・ラ・ピカ(Peña Luis de la Pica)があります。そして広場には、この地区出身の偉大なカンタオールのソルデーラ(El Sordera)やテレモト(Terremoto de Jerez)の胸像があります。広場から少し曲がったところには、モライートが2009年にオープンしたギターショップもありました。そう、その辺りはまさにモライートが生活していた場所、歩いていた道です。
 ヘレスを訪れる機会がありましたら、是非「モライート通り」にお立寄下さい。あのギターの音色とメロディーを思い出しながら。
フラメンコに、そしてフラメンコを愛する全ての人にたくさんの愛情と情熱を注いでくれていたモライートは、永遠に生き続けています。

*クルシージョ(Cursillo)=短い日数のワークショップ

写真協力:ミゲル・アンヘル・ゴンザレス(フォトグラファー/www.myangelflamenco.com

  • Yahoo!ブックマークに登録する
  • はてなブックマークに登録する
  • livedoorクリップに登録する
  • FC2ブックマークに登録する
  • Buzzurlブックマークに登録する
  • del.icio.usブックマークに登録する
  • ニフティクリップに登録する

関連CD情報

モライート・チコ「モラオ・モラオ」

モライート・チコ「モラオ・モラオ」

モライートの第2作。現在入手できる彼の唯一のCD。
2,940円

坂倉まきこ(Makiko Sakakura) プロフィール

1994年から10年間ラテンアメリカで過ごす。そこでフラメンコと出会い、本場スペインに通い始める。数多くのアーティストの舞踊クラスに参加する一方、カンテ、ギター公演も見逃すことなく各地で鑑賞。日本へ帰国後、スペインでの経験を活かし、コーディネーターとしてスペイン人アーティスト招聘企画やフラメンコ通訳、翻訳、執筆などに携わる。現在も日本〜スペインの往復を続けながら、フラメンコの広報活動に従事。主な仕事にアルカンヘル来日公演の企画制作、NHK「黒木メイサ スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」コ―ディネイタ―、DVD「アントニオ・ガデスその人生と舞踊の倫理」字幕作成等。スペインのフラメンコ誌Guia FLAMA 日本担当(www.guiaflama.com)、2012年ビエナル・デ・セビージャ:ヒラルディージョ賞審査員。

坂倉まきこへのお問い合わせはこちら

タグ :