1ヶ月で71公演行われたビエナル・デ・フラメンコ。2年に1度セビージャで開催されるこのフェスティバル、第17回の今年は9月30日に閉幕しました。プログラムが発表されてから実際の公演まで2,3ヶ月あるため、幾つかの公演で出演者の変更や豪華ゲスト登場などのサプライズがありました。

IMG_1795.jpg 最終日のマエストランサ劇場での公演のタイトルは「LA PUNTA Y LA RAiZ」。「PUNTA」は「先端」、「RAiZ」は「根」。フラメンコの創成期を支えた往年のマエストロ達という「根」から育った"芽"である「先端」は、現在活躍しているアーティスト達ということです。
 この公演では、自分の根となってくれた恩師へのオマージュという場面が多く盛り込まれていました。舞台上のスクリーンに映し出される師と弟子の姿。マノロ・マリン(Manolo Marin)とラファエル・カンパージョ(Rafael Campallo)、マティルデ・コラル(Matilde Coral)とラファエラ・カラスコ(Rafaela Carrazco)。そして大ベテランであるメルチェ・エスメラルダの「根」であるマエストラ(マエストロの女性形)アデリータ・ドミンゴ(Adelita Domingo)の姿が。今年の7月31日に亡くなられたので、ビエナルのプログラムの発表後のこと。本来なら、この日は劇場にいらっしゃっていたはずでしょう。
(右写真:ファルキート(Farruquito)とギタリストのラモン・アマドール(Ramon Amador))

 セビージャのバイレの大御所マティルデ・コラルと夫のラファエル・エル・ネグロ(Rafale El Negro)そして、ファミリア・ファルーコの長であるファルーコ(Farruco)の3人は60年代から70年初めにかけてバイレのトリオ"ロス・ボレコス(Los Bolecos)"として大旋風を起こしました。その当時の映像とそれに重なるようなシルエットだけのバイレのシーン。それに続き、スクリーンには、映画「フラメンコ」で踊る、祖父ファルーコと当時11歳のファルキート姿が映し出されました。当初はファミリアの最年少バイラオールのエル・カルペタ(El Carpeta)が出演の予定でしたが、兄のファルキートが登場。今年30歳、8月に父親になったばかりです。その他に、血縁の師弟関係ではバイラオーラ、ベレン・マジャ(Belen Maya)が亡き父マリオ・マジャ(Mario Maya)へのオマージュとして、椅子に座って踊り始めるマルティネーテ(曲種名。伴奏がないのが特徴)を再現。そしてホセ・ガルバン(Jose Galvan)とパストーラ・ガルバン(Pastora Galvan)の父娘共演もありました。
IMG_1463.jpg この作品を監督したラファエラ・カラスコは、冒頭のシーンにマリオ・マジャへのトリビュートを持ってきました。彼女が最初にプロとして所属したのがマリオ・マジャの舞踊団。10代だった当時、踊ったマリオ・マジャの振付けを、今度は自らが他の若い踊り手達に振付け、自らもその一員として踊りました。複雑で今見ても斬新な振付けを迷いなく踊るラファエラ。曲調の変化と同時に表情や体の動きのニュアンスも変えていくその表現力は、まさにマエストロ、マリオ・マジャの指導の下に身体に叩き込まれているかのようでした。群舞8人の中で、マリオ直伝の彼女だけにしか出せないオーラがありました。決められた振付を定規に合わせたようにきっちりと踊っていくのも形式美という美しさと言えますが、フラメンコという踊りには、そこに人間の血、肉、感情が感じられるうごめく何かが秘められているように思えます。

フィナーレには、劇場に来ていたセビージャのアーティスト達が次々と舞台に上がってきました。IMG_2339.jpg
今回のオマージュの主役だったマティルデ・コラル(写真中央)、ホセ・ガルバン、マノロ・マリンに続いて、マヌエラ・カラスコ(Manuela Carrasco)、ハビエル・バロン(Javier Baron)、ぺパ・モンテス(Pepa Montes)、コンチャ・バルガス(Concha Vargas)、カルメン・レディスマ(Carmen Ledesma)、アナ・マリア・ブエノ(Ana Maria Bueno)など。それぞれが、ブレリアを一振りずつ終わり、まさにフィン・デ・フィエスタ!

70代、80代を迎えるフラメンコの根っこのアーティストに、幼少期から育てられ、踊りだけでなく生き方をも直接学んできた現在40代前後のアーティスト達。彼らにその根っこを次の時代に伝えてほしいと願うと同時に、この世代のアーティストの公演を今回のビエナルでも、もっと観たかったなと思いました。
 「根」を大切に守ってこそ、健やかな枝葉が伸びていきます。フラメンコ世界が原点を重んじ、これからも豊かになることを祈りつつ、2年後の次回ビエナルに期待しましょう。
                             

FOTOS 舞台写真:Antonio Acedo

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