新しい一年が始まりました。3月でこのフラメンコ・シティオも3年目に突入します。昨年後半はイベントが多く、海外行脚で仕入れた情報も載せきれていません。アーティストをピックアップしてご紹介する機会も減ってしまいましたが、今年も様々な切り口からフラメンコをより楽しむための情報をお届けしたいと思います。

スクリーンショット 2014-01-13 22.24.54.png2013年の暮れは、スペインのフラメンコ界からの残念なニュースが続きました。11月にカンタオーラのマリアナ・コルネホ(Mariana Cornejo)が亡くなりました。DVD「デ・タブラオ」の中でラップのように軽快にタンギージョを歌っていたあのカンタオーラです。4年前、彼女の住むカディスのサン・アントニオ広場で娘やお孫さんと一緒にいるところで会うことができました。出たばかりだったCD「Cadiz por cantinas」をプレゼントしてくれ、「日本に行きたいけど寒いのはイヤだわ?」と笑いながら話されていた姿が忘れられません。結婚、出産で一度は離れたカンテの世界に40歳で復帰し、本格にプロとして活動を開始。カディスのカンテの名手として活躍中の66歳での逝去となりました。(右上写真:マリアナ・コルネホ DVD『デ・タブラオ』より)
 クリスマスイブの前には、カンタオールでカンテの作詞家でもあったペルロ・デ・トリアナ(Perlo de Triana)が87歳で永眠されました。その名の通り、セビージャのトリアナ地区で育ちました。30歳にして読み書きを習得後は、マノロ・カラコル(Manolo Caracol)、ロラ・フローレス(Lola Flores)、セラニート(Serranito)、アントニオ・マイレーナ(Antonio Mairena)、パストーラ・インぺリオ(Pastora Imperio)、最近ではマヌエル・モリーナ(Manuel Molina)やアルカンヘル(Arcangel)らにも曲を書いておられました。フラメンコが大きく花開いた時代から現代まで、フラメンコの歴史を作った人物の一人です。
IMG_8718.jpg そしてクリスマスイブには、元バイラオールで、その後、エル・ボボテ(El Bobote)と共に最強のパルメーロ(=パルマ(手拍子)やハレオ(掛け声)などでフラメンコのリズムをバックでサポートするアーティスト)として大活躍をしたエル・エレクトリコ(El Electrico)、53歳。フラメンコの映像をよく見ている方なら、必ず姿を目にしているはず。それほど多くのフラメンコシーンに登場していました。セビージャのバイレの大御所、マティルデ・コラル(Matilde Coral)のご主人であるラファエル・エル・ネグロ(Rafael el Negro)の甥でトリアナに生まれ、その後、セビージャのヒターノ地区トレスミル(Tres Mil)に居を移しました。映画「ポリゴノ・スール(Poligono Sur」の舞台となった場所です。トリアナの男性バイレの粋を濃縮したようなその踊り。こちらをご覧下さい。踊りをやめた後は、コンパスを刻むパルメーロとして、名前を列挙できないほど多くの歌手、踊り手と共演してきました。近年ではイスラエル・ガルバンの舞台にも出演。好演をバックで支える協力なメンバーとして多くのアーティストの信頼を得ていました(左上写真:2012年9月セビージャ・ビエナル公演「De Triana a las Tres Mil Boboterias」で盟友エル・ボボテ(左)と踊るエレクトリコ(右の白いシャツ)?Antonio Acedo)
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そして大晦日。カンテ・フラメンコの世界はまたもや大きな衝撃を受けました。ヘレス・デ・ラ・フロンテーラのカンタオール、エル・トルタ(Juan Moneo " El Torta")の訃報です。フラメンコの歌手にはいろいろなタイプがいます。その中でも、 "ド"フラメンコを感じさせる貴重な歌手の一人が、エル・トルタでした。いつものことですが百聞は一見に如かずで、こちらをどうぞ。2012年ビエナル・デ・フラメンコでの公演時のものです。声質だけでなく、その出身や生活ぶりも歌に表れるフラメンコ。時代と共に生活スタイルも変わり、ボヘミア的な生活を送るアーティストも少なくなってきました。最後のボヘミア世代を代表する歌手の一人、エル・トルタの歌声には、真実の魂の叫びが込められていたように思います。壮絶な人生の時期を乗り越え、近年さらに深みが増したカンテ。今年3月のヘレスのフェスティバルでのコンサートを楽しみにしていたファンも多かったはず。こんなに早く旅だってしまうとは、本当に残念です。(右上写真:1月1日エル・トルタの訃報を伝えるセビージャABC紙の記事より)

 laBienal_cartel_2014.jpgさて、年が明けると早くも9月にセビージャで開催される世界最大のフラメンコフェスティバル、ビエナル・デ・セビージャの公演プログラムの一部が先行発表されました。ビエナルの新ディレクターは、長年エバ・ジェルバブエナのプロデューサーを務めてきたクリストバル・オルテガ氏。新体制の元、発表されたプログラムの内容はというと、まず一週目に出演予定されているのが、イスラエル・ガルバン(Israel Galvan)、ヘレスのカンテが集結する"V.O.R.S & Mujerez. Jerez al cante" 。同タイトルのCDアルバムに登場しているアーティスト達によるコンサートで、フェルナンド・デ・ラ・モレナ(Fernando de la Morena)やカプージョ・デ・ヘレス(Capullo de Jerez)、ルイス・エル・サンボ(Luis El Zambo)、マカニータ(La Macanita)、フアナ・ラ・デル・ピパ(Juana la del Pipa)らが出演しますそこには、エル・トルタの姿もあるはずでした。バイレでは、ファルキート(Farruquito)の新作。ラファエル&アデラ・カンパージョ(Rafael & Adela Campallo)兄妹による「サングレ」。そして久しぶりにマイテ・マルティン(Mayte Martin)のソロコンサートも予定されています。(上絵:2014年ビエナルのポスター)
 
 スクリーンショット 2014-01-14 21.26.25.png2週目も"聴く"公演が充実。ピアノのドランテス(Dorantes)、ヘスス・メンデス(Jesus Mendez)とアントニオ・レジェス(Antonio Reyes)という2人のカディス県(ヘレスとチクラナ)のカンタオールによるコンサート。そしてエストレージャ・モレンテ(Estrella Morente)が二部構成で、オーケストラとの共演とトラディショナルなフラメンコスタイルで聴かせるコンサート。そして前回のビエナルで感動を巻き起こしたカンテのエル・ペレ(El Pele)のコンサートも豪華ゲスト達を迎えて予定されています。バイレでは、今年国家から舞踊賞を受賞したイサベル・バジョン(Isabel Bayon)の他、カリメ・アマジャ(Karime Amaya)、ヘスス・カルモナ(Jesus Carmona)、パロマ・ファントバ(Paloma Fantova)らの若手による新作の発表があります。(上写真:マイテ・マルティン)
 3週目は、「"...Y Sevilla"」と名付けられる公演にセグンド・ファルコン(Segundo Falcon/歌)、パコ・ハラーナ(Paco Jarrana/ギター)、マノロ・フランコ(Manolo Franco/ギター)、アントニオ・カナーレス(Antonio Canales/バイレ)が出演します。
バイレの目玉は、4月に来日するロシオ・モリーナ(Rocio Molina)の公演。そして、ライブ録音が予定されているホセ・バレンシア(Jose Valencia)のコンサートやアルカンヘル(Arcangel)の新しいコンサートで中堅のカンテをじっくり聴くことができます。

 このフラメンコ・ウォーカーで取り上げたアーティストも多く登場し、既に観どころ満載のラインアップですが、ビエナルの期間は3週間毎日公演があります。この他にもたくさんの公演がプログラムされ、厳選されたアーティスト達のアルテ(芸術)を堪能できることでしょう。2年に一度の最大のフラメンコ・フェスティバル。いつか本場のフラメンコを思っている方は、この時期に合わせてセビージャを訪れるという手がありますね。ちょっと気が早いかも知れませんが、秋のスペイン旅行、今からじっくりプランしてみませんか?初めてスペインに行かれる方も、出発までにスペインのことだけでなく、フラメンコのこと、アーティストのことなど、このフラメンコ・シティオで予習する時間はたっぷりあります。

では、今年も「フラメンコ・シティオ」そして"フラメンコ・ウォーカー"をよろしくお願いいたします。

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