いよいよ明日から2年に一度のセビージャのフラメンコフェスティバル「ラ・ビエナル・デ・フラメンコ(La Bienal de Flamenco以降ビエナルと書きます)」が始まります。今年は24日間で76公演が予定され、21の新作公演と2つの国内初演作品が含まれています。公式プログラム以外にも、オフ・ビエナルのイベントが盛りだくさん。セビージャは、いつもよりもさらに濃くフラメンコ色に染まっていきます。

DSCN1250.JPG今回のビエナルのオープニング公演は、2010年12月に亡くなったカンタオール、エンリケ・モレンテ(Enrique Morene)に捧げる作品。マエストランサ劇場(Teatro Maestranza)で、エンリケの三人の子、エストレージャ(Estrella)、ソレア(Solea)、エンリケ(Enrique)も舞台に上がり、さらにエンリケ・モレンテと生前縁の深かったアーティスト達が華を添えます。今日の記者会見はセビージャ市役所の中で行われ、共演者の中から、前回のビエナルで素晴らしいソレアを歌ったエル・ペレ(El Pele)、カルメン・リナーレス(Carmen Linares)、アルカンヘル(Arcangel)、ダニ・デ・モロン(Dani de Moron)の姿がありました。
セビージャ市長の挨拶に続き、エストレージャ・モレンテのお言葉。フラメンコ・アーティストというより、映画大女優のような美しさと風格。真っ赤なドレスも鮮やかでした。会場はまるで裁判所のような作り。「フラメンコでも正当な裁決があるといいわ」と少し冗談も出たところで、早速"モレンテ結集"の明日の公演について。(左からセビージャ市長、エストレージャ・モレンテ(Estrella Morente)、ビエナルディレクター、クリストバル・オルテガ(Cristobal Ortega)氏)

DSCN1247.JPGこの公演は、父、エンリケ・モレンテをよく知る人たちによって作られた作品であること、そして素晴らしい共演者達が作品に重みを加えてくれることを、同席した出演者の紹介を絡めながら語りました。エル・ペレはエンリケの近くにいた盟友、ギタリストのダニ、そして会見には不在でしたがアルフレド・ラゴス(Alfredo Lagos)は、エンリケが晩年とても気に入っていた弾き手。エンリケ・モレンテよりずいぶん歳の若い二人ですが、彼らの紡ぎ出すハーモニー、そして気持ちの上でも彼らとの仕事をとても楽しんでいたそうです。カルメン・リナーレスは、妹ソレアのマドリーナ(madrina=英語で言うゴッド・マザー)という、家族同様の関係。彼女をして現代のカンテの女王と言い、その横にいた、アルカンヘルはカンテの申し子とおっしゃってました。アルカンヘルとは兄弟同様の仲のようです。
そして印象的だったのが、会見に出席していたカルメン・リナーレスの旦那様であり、テレビプロデューサーもされていたミゲル・エスピン(Miguel Espin)氏を「最高のアフィシーナード(=ファン、愛好家)」と讃え、「良きアフィシオナードとは」についての言及。それは何よりも「カンテに対するレスペクトをもっていること。」カンテを聴くのが好きで、邪魔になるようなことをするのは好まない。そういう接し方がアーティストにとっても嬉しいアフィシオナードのようです。DSCN1241.JPG

また、近年、問題になっている批評家の書く批評についても、遠まわしながら意見を述べていました。このビエナルに、自分たちアーティストは全てをかけて臨むし、共に楽しみたいと思っている。だから見たままのものを真摯に書いて欲しいと。(こちらは原告席?!左から、ダニ・デ・モロン、エル・ペレ、カルメン・リナーレス、アルカンヘル)

スペインでは「フラメンコ界」というものが確固として存在し、「フラメンコ」というカテゴリーは外部からも認知されています。フラメンコ界は、演者=アーティストだけで構成されているものではありません。資格や免許のないフラメンコの世界では、プロとアマの境界線は引きにくいながらも、フラメンコを興行として回していくためのプロが存在します。アーティストはもちろんマネージメントや広告、舞台作りに関しても、その道のプロがこの世界を牽引しています。公演評を書く批評家も、日々多くの公演を見ている専門の老若男女が各紙に書いています。褒めるだけではなく、時には厳しい意見も。このシビア感は、本場スペインならではのものでしょう。ただ、見たもの以外の部分があまりに個人的な意見であったり、アーティストの意図と大きく外れるものであるとペンの力はマイナスに働きます。今回のビエナルでは、両者がフラメンコのさらなる発展と広がりに向かって、共に歩めるようなものであって欲しいと願います。

写真(1).JPG午後になると早速テレビでは、今日の会見の様子が流れ、続いてビエナルの公演のプロモーション。そこには、5月まで日本のタブラオに来日していたギタリスト、マヌエル・デ・ラ・ルス(Manuel de la luz)の姿が。15日のソロコンサートに先駆けて一曲披露してくれました。日本でマヌエルをお聴きになった方は懐かしいのでは?

今年はフランスの「フィガロ」「ル・モンド」紙など、今までにはなかったところからも取材の申し込みが殺到し、入場券も売り切れ続出というビエナル。どんな好演が観られるか楽しみです。

写真:坂倉まきこ Foto:Makiko Sakakura

お詫び:パソコン環境の関係で、スペイン語表記のアクセント記号の向きが反対になっております。ご了承ください。

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