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第111回 ラ・ルピ&アルフォンソ・ロサ、ガルロチ来日出演中。緊急インタビュー/Entrevista con La Lupi y Alfonso Losa en Tokio

舞台の裏には必ず何かしらのストーリーがあります。たとえ発表会であっても、その数分のパフォーマンスを舞台上で成し遂げるまでには、一人一人にそこに至る経緯、裏話、こぼれ話。そして、なくてはならない人との出会い...。

18119837_1196179457174626_1043640910_o.jpgプロの世界となると、ただ自分が出て踊るというだけはなく、作品として興行しお客様を楽しませるという、アマチュアとは違った責任や厳しさがあります。絶えず研鑽してアーティストとしてのレベルも保っていかなければ、さらに良い作品作りもできません。表面的な"それっぽさ"だけでは、一時のブームだけで終わります。

前回(110回)レポートしたタブラオに出演中のアーティスト、ラ・ルピとアルフォンソ・ロサとのインタビューでも、彼らがアーティストであるだけではなく、フラメンコを心から愛するアフィシオナード(愛好家)であることがよく分かりました。フラメンコへの愛があるからこそ、深いリスペクトがあり、嘘や見せかけではないフラメンコを体現していこう。そして伝えていこうという気持ちが感じられました。

インタビューの中では、「アフィシオン:Afición」という言葉が何度も出てきます。アフィシオンとは、何かに対する強い愛情や愛着を表す言葉です。「アフィシオナード:Aficionado(女性形はアフィシオナーダ)」は、例えばスポーツや芸能の世界のプロを応援するサポーター、ファン、愛好家を意味します。

18176120_444573319222591_705496891_o.jpgQ:ルピは今回、初めての来日ですが、まずは日本の印象はどうですか?
ルピ「期待以上だったわ。街も人々もフラメンコへのアフィシオンも、予想していた以上。すっかりここが気に入ったわ。」

Q:アルフォンソは、17年前に来日し、15年前に半年間、現在の「ガルロチ」の前にあったタブラオ「エル・フラメンコ」に出演されていましたが、その時との違いなどありますか?(以下、敬称略にて)

アルフォンソ「違いはあるね。一番のポイントは、ガルロチは、より高いレベルのアーティストを招聘し、それに対して観客もそのアーティストの公演を観たいという気持ちで来てくれる。そして、何をやっているかをよく分かってくれている。観る側にとっても、舞台に立つアーティストにとっても光栄なこと。そういう場所は他にはないね。」

Q:以前はそうでなかった?

アルフォンソ「そうだね。前はもっと一般受けを狙っている感じかな。お客さんもフラメンコファンばかりではないし。もちろん、それもいいことなんだよ。でも、今回は雰囲気が違うんだ」

Q:以前のタブラオは6ヶ月契約でしたが、今回は2週間。6ヶ月は長すぎましたか?

アルフォンソ「うん。6ヶ月は長すぎで、2週間は短すぎだ。(笑)」

ルピ「私ももっと長く居たくなったわ。来る前はそう思ってなかったんだけど、来てみたら、すごく短く感じる。来てからもうすぐ1週間!あと同じくらいでおしまいなんて考えたくないわ。そうね、1ヶ月!次は1ヶ月居たいわ。アルフォンソがまた私と一緒に来たいなら。」

アルフォンソ「もちろん!僕ら二人で来なくちゃ。」

ルピ「二人はアーティストとしても相性バッチリだし。」

アルフォンソ「それに、お客さんもたくさん観に来てくれているし。タブラオも賑わって、双方にとっていい話だよ。(笑)」

Q:アルフォンソは既に経験済みですが、ルピは直接日本人だけの前での公演は初めてですよね?日本の観客の反応はどう感じましたか?

アルフォンソ「国によって観客の表現は違うね。日本人はスペイン人と比べて、内向的で派手に表に出さないけど、みんなのリスペクトとアフィシオンはちゃんと伝わってくるよ。途中で拍手して邪魔にならないようにという気遣いも、結構あるんじゃないかな。その分、曲が終わると、割れんばかりの拍手をして、感動を表してくれる。ただ表現方法が違うというだけだよ。」

ルピ「アフィシオンやリスペクトは、"オレ!"というかけ声やパルマにも勝るものよ。私もアルフォンソもどちらかという劇場での公演が多いから、レマテ(決め)をするたびに「オレ!」を待つようなことはないし、拍手をさせるためのバイレはしない。でも、タブラオだからそれがあるのは別にいいと思うし。でも、内に秘めたレスペクトや愛情は伝わってくるし、言葉を超えたエネルギーがあると思う。」

18120296_1196178807174691_818786361_o.jpgQ:では、今回のショーについて教えてください。日本向けに新しく構成したものですか?

アルフォンソ「そうだね。新しく作ったもので、かなり前から時間をかけてリハーサルしてきたよ。ルピと僕とで振り付けをしていったけど、かっちり全てを決めているのではなくて、常に自由に即興できる部分がある、つまり生きた振り付けなんだ。その部分があることで、また別のエネルギーが湧いてきて、僕ら自身も飽きることがないんだ。機械的に決まり切ったことをやるんじゃなくて、生きたもの。僕らは機械的なことはあまりしたくないたちなんだ。それに、たとえショーの構成は同じでも、その日によって違うものが見られるんだよ。」

ルピ「私もアルフォンソに完全に同感だわ。二人とも変化が大好きだし、退屈なものは嫌い。でも、飽きっぽいということではなくて、仕事の時は粘り強く取り組んでいるのよ。」

二人の直接的な出会いは4年前。もちろん、それ以前からお互いアーティストとしては知っていたそうですが、個人的に知り合ったのはメキシコのフェスティバルでのこと。その時は舞台での共演はありませんでしたが、いろんなことをざっくばらんに話せて、既に一緒に仕事をしているような気持ちになれたそうです。

ルピのアルフォンソへの第一印象は「怖かった!」。踊りも正確で、きっちりしているし、ちょっと気難しい人かと思っていたそうですが、話してみると、ユーモアたっぷりの頭のいい人だったのは驚きの発見だったようです。

アルフォンソは、本人曰く、相手の人となりを重視するタイプ。それが、芸術的な表現やフラメンコの感じ方、アーティストとしてのあり方にとても大切だからだと言います。踊りとは別に、どこからきたか、何をしているか、その人の目標は何か、などに興味があるし大切だそうです。そんな彼にとって、ルピとの出会いは最初からいい繋がりを感じられたとのこと。

アルフォンソはマドリード在住、ルピはマラガですが、仕事やレッスンでマドリードに来ることが多く、ルピは1990年から5年間はマドリードに住んでいたそうです。マドリードには、アルフォンソやポル・バケーロ、ダビ・パニアグア達がいて、それまで一人でいることが多かったルピは、どこまで受け入れてもらえるかわからなかったそうです。しかし、彼らが、最初から自分を兄弟のように温かく、愛情とリスペクトを持って迎えてくれたことで、自分の中の何かが変わったと言います。彼らの間では、とても自然に、"分かち合う"という姿勢が当たり前になっていたことが、想像とは違っていたそうです。

18159534_1196179080507997_125183696_o.jpgQ:今回のグループメンバーはどうやって決めたのですか?
ルピ「アルフォンソとは、以前に共演したことがあったけけど、二人だけでというのはなかったので、試してみたいと思っていたの。自分自身、学べることもあるから、いい機会だと思って。ゲストとして迎えるのではなくて、完全に50%ずつ。二人で作りたいと思ったのよ。」

カンテはそれぞれが一人ずつ選び、ルピはこの4年間一緒に仕事しているアルフレド、そして、アルフォンソはマヌエルを。
アルフォンソ「二人とも素晴らしいから、僕も相手が選んだ人を選んだと思うよ。僕らはバイレのスタイルは違っても、同じコンセプトを持っているんだ。」

そして、ギタリストには、ルピの旦那様のクーロ。ルピが「私が選べなかったから、アルフォンソが選んだのよ(笑)」と冗談を言うと、アルフォンソも「そうそう。僕が選んだんだよ。」と。

ショーの始まりは、グラナダのアーティスト、ラ・コネハのモノローグから。これはルピの作品「Retorno」からのもの。そして、それに続いてタンゴでスタートという展開はアルフォンソのアイデア。衣装などのビジュアルも考えて、観客がサクロモンテの洞窟にトリップしたかのように、別の世界が広がるようなプロローグにしたかったそうです。

アルフォンソ「最初にタンゴを選んだのは、観客と繋がりやすいノリの曲だからなんだ。リラックスした雰囲気が作れると思う。曲調が重すぎたり、冷たかったり、何かストーリー性のあるものよりも、理解しやすく、ダイレクトに僕らと一体感を持ってもらえるからね。」

ルピ「そうね。そしてそのあとに来るシリアスで荘厳なソレアとの対比も面白いわ。同じ人間が全く違うテーマを踊るわけだから。タンゴは、ちょっとおふざけで軽いものと勘違いしている人もいるけど、実際はそうじゃないの。逆に、そういう風(表面的なもの)にならずに踊ることが難しいのよ。」

Q:2部は内容を変えていくということですが、公演二日目に私が観た曲以外には何が出て来そうですか?

ルピ「アルフォンソのファルーカとか、私のカーニャ。シギリージャも。でも、同じ曲種を踊っても、毎日が違うものだから。」

5月6、7日に予定されているクラスについて。カンテもギターも入り、今回の出演者総出の豪華なクラスとなりそうです。情報はこちら

Q:私にはまだスペイン人のレッスンは早いかも、と躊躇している人もいるかも知れませんが、レベルはどうでしょう?

アルフォンソ「レベルは関係ないよ。僕らは長年の教授経験があるから、初心者を教えるのにも慣れているし、むしろ最初の大切な時期にしっかり教えてあげたいと思っている。それに、ひたすらパソ(ステップ)だけをやるわけではなくて、カンテとの関わりとかも教えて、知識も身につけて欲しいんだ。例えば、「タンゴ」と一口にいても、トリアナ地区のタンゴとグラナダのものでは全然違う。説明には通訳が来る予定だよ。」

ルピ「たとえ初心者でもスペイン人に習うのはいいことよ。英語だって、英語を習ったことのある人に習うのと、ネイティブに習うのとでは違うでしょう。だから初心者だからと言って諦めることはないのよ。レベルも2レベル設けたし。」

18175496_444715282541728_1471152955_o.jpg最後にお二人のマエストロについて伺いました。

ルピ「私のマエストロは、"アフィシオン"。」

アルフォンソ「今まで、たくさんの人や仲間たちから学んで来たけど、いつも助けてもらっていたのは、アモール・デ・ディオス(マドリードのフラメンコ学校)のマリア・マグダレーナ。そして僕のマエストロは、というなら"踊りの向上を目指す原動力"。それは自分自身の中のことで、人より目立つことをしようというのではなく、自分自身がこの芸術を楽しみながら進んでいくことが自分の人生の中では一番素晴らしいと思っているよ。ただ漠然と踊るのではなく、学んできたことを楽しみながら、長いフラメンコ人生を楽しみながら歩んでいきたい。」

エネルギッシュで、フラメンコへのアフィシオン溢れる二人。今回の公演は残すところ1週間となりましたが、また是非、来日して、たくさんの人にフラメンコの持つパワーを知っていただきたいですね。前回の二人の公演レポートにも是非、お立ち寄りください。記事はこちらから。

写真/FOTO : クレジットのないものは、ガルロチ、Curro de María その他はクレジットに準ずる。Sin crédito Copyright to Garlochí y Curro de María
記載内容及び写真の無断での、転載、出典元なしの引用はご遠慮願います。
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坂倉まきこ(Makiko Sakakura) プロフィール

1994年から10年間ラテンアメリカで過ごす。そこでフラメンコと出会い、本場スペインに通い始める。数多くのアーティストの舞踊クラスに参加する一方、カンテ、ギター公演も見逃すことなく各地で鑑賞。日本へ帰国後、スペインでの経験を活かし、コーディネーターとしてスペイン人アーティスト招聘企画やフラメンコ通訳、翻訳、執筆などに携わる。現在も日本〜スペインの往復を続けながら、フラメンコの広報活動に従事。主な仕事にアルカンヘル来日公演の企画制作、NHK「黒木メイサ スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」コ―ディネイタ―、DVD「アントニオ・ガデスその人生と舞踊の倫理」字幕作成等。スペインのフラメンコ誌Guia FLAMA 日本担当(www.guiaflama.com)、2012年ビエナル・デ・セビージャ:ヒラルディージョ賞審査員。

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    普段はスペインや海外でのフェスティバルを取材して、スペイン人アーティストのご紹介...