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第117回 「フラメンコ・オン・ファイヤー」vol.2 コンサート紹介/ Flamenco On Fire 2017 vol.2

スペイン北部のバスク地方、ナバラ県パンプローナで6日間にわたって開催されたフラメンコフェスティバル「フラメンコ・オン・ファイヤー」。閉幕と同時に、パンプローナの街は秋の気配となり、炎が静まったかのように涼しい風が吹いています。

IMG_6081.jpgフェスティバル期間中は夜の公演の他に、午前中に記者会見、お昼12時から45分おきに場所を変えて3回行われる「バルコニーからのフラメンコ(Flamenco en los balcones)」、17時から講演会やビデオ上映、さらに1日型のワークショップが開催されています。

今年は、カンタオールのカマロン・デ・ラ・イスラ(Camarón de la Isla)が42歳の若さで亡くなってから25年ということもあり、講演会もカマロン関連のものが多くありました。ラジオ番組でも有名なホセ・マリア・ベラスケス・ガステル氏や音楽プロデューサーのリカルド・パチョン氏、ギタリストのペペ・アビチュエラ、カンタオールのグアディアーナ、そして進行役のホアキン・アルバイシンら、生前のカマロンと深く関わった人による逸話、秘蔵映像などが披露されました。

JFE_5035.jpgフェスティバル二日目の夜のバルアルテ劇場では「マエストロ。カマロンへオマージュ("MAESTRO" Homenaje a Camarón)」と題されたコンサートもありました。出演は以前このウォーカーでも詳しくご紹介したペドロ・エル・グラナイーノ(Pedro el Granaino)、ドュケンデ(Duquende)、ゲストにグアディアーナ(Guadiana)の3人のカンタオールが揃いました。(過去記事はこちら
カマロンの信奉者を「カマロネーロ」と言いますが、単に声が似てるとか、真似をして歌うのではなく、カマロンを尊敬し、そのアルテを学び続けてこそ真のカマロネーロ。ペドロは子供の頃からカマロンを聴いて育ち「自分の中ではナンバーワンのアーティスト。今でも心の中で生き続けている」と言います。そして、カマロンの録音を聞くたびに、今もって新しい発見や感動があるそうです。ここ数年はカマロンの息子もギタリストとして参加する「Eterno Camarón(永遠のカマロン)」というコンサートも行っています。コンサートでは、最後まで余裕のある声量でたっぷりと歌い上げました。

JFE_5093.jpgドュケンデは声が驚くほどカマロン似。痩せた身体、顔を覆う髭、深くかぶった帽子でどこかカリスマティックな姿で登場。会場には熱狂的なファンもいて、ドュケンデが一節歌うごとに声援を送っていました。

生前、カマロンが歌ったレパートリー、そして、一部には7年前に亡くなった同じく現代フラメンコ界を代表する歌手エンリケ・モレンテ(Enrique Morente)の代表的な曲もオマージュ的に組み込まれていました。カマロン、モレンテの二大アーティストは、現代のカンタオール達にとって絶対的な存在。翌日の「バルコニーからのフラメンコ」シリーズでパンプローナ市庁舎のバルコニーから歌ったペドロは、モレンテの名前の書かれたベストを着ていました。

コンサートでひときわ喝采を浴びていたのは、ペドロのギター伴奏をしたアントニオ・パトロシニオ(Antonio Patrocinio)。アンダルシア州のコルドバ出身で、カンタオールの父と同名で活動しています。カンテのコンサートでもギター演奏の部分もしっかり楽しめる、さすが本場の層の厚さを感じます。

JFE_5497.jpg今回のフェスティバルは、バイレ(踊り)の公演が少なく、ギターとカンテがメインでしたが、バイラオーラのアナ・モラーレス(Ana Morales)が二つのコンサートに華を添えていました。その一つが、ミゲル・アンヘル・コルテス(Miguel Angel Cortés)のギターコンサート。前述したモレンテと同じ、グラナダ出身。久しぶりに会うと、なんと白髪の髪の一部が赤や青で染めてあり、本人も「カラフルだろ?」

JFE_5543.jpgコンサートはギターソロで重めの曲「タラント」からスタート。フラメンコだけでなく、デュオコンサートをしているホセ・マリア・ガジャルド作曲のソナタやバロック音楽の影響を受けたハカラ、セマナ・サンタ(キリスト教の聖週間)にセビージャの聖母マカレナに捧げる曲など、演奏曲もバラエティに富んで"カラフル"な内容。ファルーカ(曲名)とタンゴの演奏では、アナ・モラーレスのバイレが入りました。小柄なアナですが、体の軸の安定感が抜群で、不安定な体制や動きを正確にしなやかにこなし、回転も曲調の変化に合わせてスピードを見事にコントロールしていました。

JFE_6302.jpgアナ・モラーレスが華を添えたもう一つのコンサートは、翌日のバルアルテ劇場での「テンポ・デ・ルス(Tempo de Luz)」。カルメン・リナーレス(Carmen Linares)、アルカンヘル(Arcángel)、マリナ・エレディア(Marina Heredia)が一堂に会し、主役が3人いるようなコンサートで、6月にコルドバで初演したものです。記者会見でも和気あいあいで仲の良さをアピール。出身地も育ったフラメンコ環境もまったく違う3人ですが、お互い学び合って自分のアルテをより豊かにしていけると言っていました。舞台上にはそれぞれのテーブルと椅子が並べてあり、最初はアルカンヘルを中央にして3人が並んで机を指で叩いてリズムをとるヌディージョだけで順番にブレリア(曲種名)を歌っていきます。伴奏なしでズバリと狙ったところに声を出していけるアルカンヘルの音感の鋭さに、毎度ながら驚かされます。

JFE_6488.jpg3人がそれぞれ十八番(おはこ)を歌い、観客の期待に応えるレパートリーで、アルカンヘルは、ファンダンゴ・デ・ウエルバ、アカペラでのアナのバイレとの掛け合い。マリナはタンゴ・デ・グラナダ、グラナイーナ。そしてカルメンはタランタとアルベルティの詩「Se equivocó la paloma」をソロで。ギター伴奏には、前夜のコンサートのミゲル・アンヘル・コルテスとホセ・ケベド・ボリータ(José Quevedo Bolita)が入りました。ミゲル・アンヘルは、長年カルメンとアルカンヘルの伴奏をしていて、カルメンとは2005年、アルカンヘルとは2007年に来日しています。このコンサートは、今後アメリカツアーの予定があるとのこと。有名歌手を一度に3人聴けるので、輸出向けと言えるかもしれません。

JFE_6574.jpgそれに続いて、ホテルのバンケットルームに作られた"タブラオ(フラメンコを見ながら飲食できる施設)"では、歌手のダビ・ハコバ(David Jacoba)、ギターのカルロス・ハコバ(Carlos Jacoba)のコンサート「ハコバ・カルテット(Jacoba Quarteto)」。二人は名前からも、見た目からも(目がそっくりです)分かるように兄弟です。ダビの歌は、とにかく自然。歌い出しも気張りなくすっと始まっていきます。ダビはギタリスト、パコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)の生前最後のグループのメンバー。その実力は、パコのお墨付きということです。JFE_6563.jpg
選曲もオーソドックスに、ソレア・ポル・ブレリア、ミネーラ、ティエントス-タンゴ、ファンダンゴ、ブレリア、シギリージャ(全て曲種名)。カルロスのギターは時に現代的なアレンジを入れながらもフラメンコ通をうならせる実力。ヒターノの二人がカンテ・フラメンコの世界をじっくり聴かせてくれました。

写真/FOTO C)Flamenco On Fire / Javier Fergó
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坂倉まきこ(Makiko Sakakura) プロフィール

1994年から10年間ラテンアメリカで過ごす。そこでフラメンコと出会い、本場スペインに通い始める。数多くのアーティストの舞踊クラスに参加する一方、カンテ、ギター公演も見逃すことなく各地で鑑賞。日本へ帰国後、スペインでの経験を活かし、コーディネーターとしてスペイン人アーティスト招聘企画やフラメンコ通訳、翻訳、執筆などに携わる。現在も日本〜スペインの往復を続けながら、フラメンコの広報活動に従事。主な仕事にアルカンヘル来日公演の企画制作、NHK「黒木メイサ スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」コ―ディネイタ―、DVD「アントニオ・ガデスその人生と舞踊の倫理」字幕作成等。スペインのフラメンコ誌Guia FLAMA 日本担当(www.guiaflama.com)、2012年ビエナル・デ・セビージャ:ヒラルディージョ賞審査員。

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