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第127回 フェスティバル・デ・ヘレス 2018 アルフォンソ・ロサ、各賞の発表/ Festival de Jerez 2018 Alfonso Losa, los premiados del Festival

f8d7988a-8bb2-43e4-afd7-a3f099b1a639.jpgアンダルシア州のヘレス・デ・ラ・フロンテーラで開催された第22回フェスティバル・デ・ヘレスは、悪天候に見舞われながらも無事終了。最終公演が行われたビジャマルタ劇場では、当日の午前中の大雨で劇場内の一部が水浸しになるというハプニングも。そのため、雨漏れ場所に近い一階席の一部のお客さんは別の場所に移動させるという処置も取られたようです。ヘレス滞在中には、超多忙のヘレス市長のマメン・サンチェス氏を市庁舎に訪問して、フラメンコを通じて日本とヘレスの繋がりがさらに深まるよう、お話をする機会も作っていただきました。(写真:ヘレス市長と筆者)

IMG_8479.JPGフェスティバル期間中には、フラメンコ・アーティストによるレッスンも行われていました。フェスティバルが主催のクラスに申し込むと、ビジャマルタ劇場への入場券がセットになっています。それ以外にも、地元のフラメンコスタジオが独自にアーティストを招いて、市内のあちこちでクラスが行われていました。フラメンコのメッカの一つであるへレスで、昼間にレッスンを受け、夜は生で公演が観られる。しかも、自分が習っている先生が舞台に立つこともあります。たとえ短期間でも、日常から切り離されてフラメンコを集中して学ぶには最高の環境です。(写真:マドリードの舞踊学校、アモール・デ・ディオスの練習スタジオ)

フェスティバル事務局が主催したクラスのデータでは、世界42カ国からの参加申し込みがあり、一番多かったのが日本。次いで、アメリカ、フランス、ドイツ。スペインは9位です。今年は中国からの参加者が急増したようで5位。2001年辺りには、当時ブラジルに住んでいた私が、ブラジルからの唯一の参加者と言われましたが、今では13位。年々、国の数も増え、トルコ、キプロス、韓国、シンガポールというニューフェースの登場もあったようです。面白いデータとしては、フェスティバルの動画の中で、2分以上再生された回数が最も多かったのは、ロシオ・モリーナの公演「Caída del cielo」。動画サイトへのアクセスが最も多かった国は、日本。このフラメンコ・ウォーカーでも動画をリンクさせているので、読者の皆さんの「一票」も加算されています。

IMG_8505.JPG本場スペインでフラメンコを学ぶ場所の一つとして、マドリードの「アモール・デ・ディオス(Amor de Dios)」があります。カルロス・サウラの映画「カルメン」でも登場している、1953年に設立されたフラメンコとスペイン舞踊の学校です。初心者から上級者まで幅広く受け入れており、有名アーティストのクラスが受けられるチャンスもあります。日本語版のGoogle Mapで検索すると"God's Love"と表示されてしまいますが、4回の移転を経て、15年前からは現在のサンタ・イサベル通りにあります。(写真はアモール・デ・ディオスが入っている建物の外観)

image__Alfonso_Losa_Jerez_AnaPalma_3592_1553430627838275250.jpgそこで育って、現在ではクラスを行っているアルフォンソ・ロサの公演「Con-secuenciA」。タイトルは、結果を表すconsecuenciaと、シーケンスという意味のsecuenciaに英語のwithを意味するconを合わせた、言葉遊び。今の自分は、自分というものが始まった時から今まで過ごしてきた時間の結果。舞台に立ったり、プライベートだったり、学んだり、話したり、、、全て自分がしてきたことの結果としてある。その過程を一連の(=シーケンス)各場面の中にいろんな形で取り入れているものですが、深く考えながら観る必要はないのです。アルフォンソ自身、公演前の会見で「ストーリーを語るつもりはない」とのこと。8つの場面それぞれに、その時のアルフォンソに湧き上がる気持ちが込められて踊られるということでしょう。公演では、スペシャルコラボレーションとして、ロシオ・モリーナの名前が。どのように絡んでくるのかと思ったら、舞台上に置かれた箱がスクリーン代わりに使われ、そこに等身大のロシオが映し出されました。まるで、そこにいるかのような臨場感です。絶妙のタイミングで、まるでそこにいるかのように繰り広げられるパレハ(ペア)の踊り。これも彼らの中にある、フラメンコのコード(暗黙の了解)が成せる技。

image__Alfonso_Losa_Jerez_AnaPalma_3948_2349245301443217976.jpg「スタジオは自分の居場所...」とナレーションが入り、練習スタジオに模した舞台上に一人座るアルフォンソ。ヘッドフォンをつけると音楽が始まります。次第に激しくなるサパテアード。しかしどんなに腕や身体の動きをつけても左右にバタバタ動くことなく、一枚の石畳程度のスペースで踊ります。身体の軸がぶれていない証拠です。
以前、インタビューでも伺いましたが、アルフォンソのバイレは、セビージャのバイラオール、ファルーコを彷彿させますが、その一門というわけではありません。学びの中で出来上がってきたスタイル、男性的な正統派バイレが同じような結果になったようです。勢い、スピードはあっても、無駄な動きのないバイレ。会場にはファルーコ・ファミリーのファルキート(Farruquito)、ファルー(El Farru)も観に来ており、盛んにアルフォンソを讃えるハレオ(掛け声)を送っていました。

image__Alfonso_Losa_Jerez_AnaPalma_3707_7924800139501298827.jpgゲストにカンタオーラのラ・タナ(La Tana)を迎えたことで、タンゴの場面はより盛り上がりました。ラ・タナは、ホアキン・コルテス(Joaquín Cortés)のグループでツアーをしていたこともあり、ファーストアルバムは、パコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)のプロデュース。パコのツアーにも参加していました。そして、最後はまた始まりと同じスタジオのシーン。今の自分、そして自分の居場所に戻りました。そして、これからまた新たなシーケンスの積み重ねで、これからの彼の人生、そしてバイレがその結果として創り出されていく事を予感させて終わりました。

一場面の長さも長過ぎず、たった一人(ロシオの映像出演はありましたが)での踊りの作品でも、メリハリのある内容でした。近年は、バイレ(ダンサー)は一人だけというビジャマルタ劇場での公演が増え、それに伴って、舞台セットや照明も進化しています。いわゆる「舞踊団」「フラメンコ」というイメージにとらわれず、作品のコンセプトや規模に合わせたものが考えられています。

まだご紹介していない作品は今後追ってふれていきながら、フラメンコやスペインについてご紹介していきますが、ここでヘレスのフェスティバル中の公演に出演したアーティストたちに送られた賞をおしらせします。

image__Rafaela_Carrasco_Nacida_Sombra_9188_6444808705819979304.jpg● 批評家賞 (Premio de la Crítica)
 ラファエラ・カラスコ (Rafaela Carrasco) アンダルシア舞踊団の監督を退任後の作品、『Nacida Sombra』では、4人の女性を描きました。
● 活躍した新人賞 ( Premio Artista Revelación)
 ヘマ・モネオ (Gema Moneo) ヘレスの名門の血統を引き継ぐアーティストとして、地元の期待も大きいアーティストです。
● ペジスコ・フラメンコ賞 (Premio Pellizco Flamenco)
 フアン・オガジャ (Juan Ogalla) 久しぶりの登場でしたが、そのフラメンコぶりは健在だったようです。
● 魂のギター賞 (Premio Guitarra con Alma)
  マヌエル・バレンシア (Manuela Valencia) 今回ソロコンサートはありませんでしたが、マヌエル・リニャン(Manuel Liñan)の公演での演奏が高く評価されました。

image__Ballet_Nacional_AnaPalma_Jerez_7466_3691356193924324994.jpgそして、会場での観客の投票による大衆賞(Premio del Público)は、フェスティバルのオープニングを飾ったスペイン国立バレエ団の公演が選ばれました。

その他、ヘレスのフラメンコの愛好会で作られている団体からは、歌手に対して公演での最優秀伴唱賞が、マヌエル・タニェ(Manuel Tañe)とホセ・アンヘル・カルモナ(José Angel Carmona)に贈られました。マヌエルは、今回のフェスティバルでは、かなりたくさんの公演に出演していました。ラ・ルピの作品を皮切りに、上記のアルフォンソ・ロサの公演などの劇場だけでなく、オフ・フェスティバルのタブラオなどにも出演しています。ホセ・アンヘルは、ロシオ・モリーナ(Rocío Molina)の「Caída del cielo」で、様々な曲を歌い分け、さらには楽器の演奏もして、その多才ぶりを発揮しました。この団体からの新人賞は、ペーニャ「ブエナ・ヘンテ」で踊った、地元ヘレスのバイラオーラ、ジェシカ・ブレア(Yéssica Brea)に。今後の活躍が期待されます。

写真/FOTO : Copyright to ANA PALMA/ deflamenco.com(https://www.deflamenco.com/)
記載内容及び写真の無断転載はご遠慮願います。Copyright Makiko Sakakura All Rights Reserved.


一時的なものと思われますが、オフィシャルサイトからのプレス用の写真のダウンロードができない状態が続いており、更新がこれ以上遅れてしまわないよう、フラメンコサイト DeFlamencoさんから事前に承諾をいただいておりましたので、そちらの写真をメインに使用しております。
Debido al problema de descarga, no he podido utilizar las fotos oficiales del festival, esta vez publicada con las fotos de DeFlamenco por Ana Palma.

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坂倉まきこ(Makiko Sakakura) プロフィール

1994年から10年間ラテンアメリカで過ごす。そこでフラメンコと出会い、本場スペインに通い始める。数多くのアーティストの舞踊クラスに参加する一方、カンテ、ギター公演も見逃すことなく各地で鑑賞。日本へ帰国後、スペインでの経験を活かし、コーディネーターとしてスペイン人アーティスト招聘企画やフラメンコ通訳、翻訳、執筆などに携わる。現在も日本〜スペインの往復を続けながら、フラメンコの広報活動に従事。主な仕事にアルカンヘル来日公演の企画制作、NHK「黒木メイサ スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」コ―ディネイタ―、DVD「アントニオ・ガデスその人生と舞踊の倫理」字幕作成等。スペインのフラメンコ誌Guia FLAMA 日本担当(www.guiaflama.com)、2012年ビエナル・デ・セビージャ:ヒラルディージョ賞審査員。

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