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第134回 Flamenco On Fire 特集 Vol.5 ロサリオ・ラ・トレメンディータ/Flamenco On Fire Vol.5 Rosario La Tremendita

_FE_6449.jpg前回、スペインのコンクールにも色々あることを少し書きましたが、フェスティバルにもそれぞれ個性があります。現在、アンダルシア地方のセビージャで開催されている、2年に一度のフラメンコフェスティバルであるビエナル・デ ・セビージャは、規模、期間ともに一番大きいものと言えるでしょう。スペインの中でも屈指の観光地であるセビージャ。そして、フラメンコのメッカでもあるだけに、踊り、歌、ギターのレッスンを受けに、世界各国からフラメンコを勉強している人が集まります。(写真右:パンプローナ市庁舎の前でのアルバ・エレディアのパフォーマンス)

期間も約一ヶ月と長い為、たまたまフェスティバル期間と観光の滞在が重なる可能性も高くなります。そして、各国の興行関係者に対するショーケース的な役割も果たしています。

セビージャから電車やバスで1時間半前後の場所にある、同じアンダルシア地方のヘレス・デ ・ラ・フロンテーラで毎年2月に開催されるフェスティバルの期間は2週間。フェスティバル事務局主催のアーティストによるレッスンと劇場入場券をセットにしたレッスン生割引やオフ・フェスティバルでのレッスンもあるので、フラメンコを習っている人がたくさん集まる傾向があります。(今年のクラスのラインナップはこちらです。)短いながらイベントが多く、ヘレスはシェリー酒の産地ということもあり、観光を兼ねても集中してフラメンコを楽しむことができます。

_FE_5105.jpgさて、特集しておりますパンプローナのフェスティバル、FLAMENCO ON FIREはと言うと、大きな特徴は、アンダルシア地方での開催にあらずして、とても豪華な出演者のラインナップ。そして、バスク地方ならではのガストロノミーが楽しめるよう、フェスティバル期間は特別なピンチョスが市内各所のバルで楽しめる企画もあります。場所柄、観客は地元の人率が高く、普段あまりフラメンコの公演がない北の地方だけに、近隣のサンセバスチャンなどからも、このフェスティバルを楽しみにパンプローナまで足を運ぶ人も結構いるようです。ギターの大御所、サビーカスが生まれた地ということもあり、フラメンコギターのコンサートが多く、どちらかと言うと音楽メイン。しかし踊りももちろんあり、そのアーティストのセレクションの贅沢さとセンスの良さが光るフェスティバルです。(写真はレストランの前庭でのジャムセッション。出演者以外にも聴きにきているアーティストの飛び入りもあり、毎日賑わっていました。)

ちなみに、今年のメイン会場であるバルアルテで毎日21時からの公演「GRANDES CONCIERTO」シリーズでは、バイレ(踊り)の公演は6公演中1公演のみ。とは言え、それ以外に2つのコンサートでは招待アーティストとして、ベレン・マジャ(Belen Maya)、パストーラ・ガルバン(Pastora Galván)という二人の人気バイラオーラが華を添えました。そして、劇場公演に続いて、毎晩23時半からのホテル内でのタブラオ公演「CICLO NOCTURNO」では、初日と最終日がバイレ公演。こちらも6公演中2公演という割合ですが、バイレのないコンサートの日も満席。フラメンコは聴いて楽しむものでもあるということを、地元のお客さんはよく分かっています。

_FE_5968.jpgフェスティバル4日目、劇場でのトマティート(Tomatito)のコンサートの後は、ロサリオ・ラ・トレメンディータ(Rosario La Tremendita)のコンサート。今年のヘレスのフェスティバルでも公演した「Delirium Tremens」。ロサリオと二人のパブロ、コントラバスのパブロ・マルティン・カミネーロ(Pablo Martín Caminero)とパーカッションのパブロ・ジョーンズ(Pablo Jones)の3人の出演です。

以前の記事でもメンバーを紹介していますが、二人のパブロは一見フラメンコのアーティストっぽく見えませんが、生まれた時からフラメンコなロサリオが二人をファミリアと呼ぶだけあって、マルティン・カミネーロはバイラオーラのロシオ・モリーナの作品でどっぷりフラメンコの洗礼を受け、ジョーンズに至っては、マドリード生まれで父はフラメンコギタリスト、母はバイラオーラ。一見ロックなこのコンサートの中に、常にフラメンコの曲種の数々がちゃんと流れているのが感じられるのは、彼ら3人だからこそできること。確固たるフラメンコのベースのない人がやってしまうと、ただのフラメンコ風、いや、フラメンコすら感じられなくなる危険なものでしょう。本来フラメンコでは使わない楽器やシンセサイザーを取り入れるアーティストは他にもいますが、そこの真のフラメンコがあるかどうか、それを聞き分けられるにはそれなりの耳経験と知識が必要ですが、一観客としてコンサートを楽しんでいいのであれば、そんなことは考える必要もないでしょう。ロサリオの歌唱力、そして高度なフラメンコなリズム感を存分に楽しめるコンサートです。

_FE_5950.jpgロサリオについては2015年の来日前に単独インタビューをしております。彼女の生い立ちなどが語られておりますので、こちら(クリック!)をご覧ください。

コンサートのタイトルである"Delirium Tremens"とは、日本語では「振戦譫(せん)妄」。ロサリオ曰く「危ないタイトルなのよ」。医学関係者でもなければ「?」な言葉でしょう。英語でも同じ表現なので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、重度のアルコール中毒からの離脱後に起きる発作で、禁断症状の中でも、死に至る危険のある非常に危ない症状のことです。コンサートは4つのテーマを含んでおり、それは禁断症状が進む中で現れてくる症状、混沌、逃避、熱望に加え、最後に感謝。自作の曲、自分の言葉で歌っていきます。

_FE_5965.jpg「朝から歌いたくてウズウズしていたのよ。」と。そして会場には前のコンサートを終えたトマティートも来ているのに気づき「マエストロが来ていてるから緊張するわ。そっち(=マエストロのいる方)は見たくないわ。(笑)」と言いながらも、ギター、ベース、シンセを使いこなして男前なパフォーマンス。3分の1スキンヘッド、残りはロングヘアーという個性的なスタイルもマッチしていました。
最後は、子供の頃に近所に住んでいたエル・ポティート(El Potito)らのアーティスト達と一緒に遊びながら歌った早口言葉のブレリア。ロサリオの滑舌の良さは、こんな遊びからも鍛えられてきたのでしょう。コンサートの様子はこちらから。


写真/FOTO : Copyright to JAVIER FERGO/ FLAMENCO ON FIRE
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坂倉まきこ(Makiko Sakakura) プロフィール

1994年から10年間ラテンアメリカで過ごす。そこでフラメンコと出会い、本場スペインに通い始める。数多くのアーティストの舞踊クラスに参加する一方、カンテ、ギター公演も見逃すことなく各地で鑑賞。日本へ帰国後、スペインでの経験を活かし、コーディネーターとしてスペイン人アーティスト招聘企画やフラメンコ通訳、翻訳、執筆などに携わる。現在も日本〜スペインの往復を続けながら、フラメンコの広報活動に従事。主な仕事にアルカンヘル来日公演の企画制作、NHK「黒木メイサ スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」コ―ディネイタ―、DVD「アントニオ・ガデスその人生と舞踊の倫理」字幕作成等。スペインのフラメンコ誌Guia FLAMA 日本担当(www.guiaflama.com)、2012年ビエナル・デ・セビージャ:ヒラルディージョ賞審査員。

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