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第150回 フェスティバル・デ・ヘレス 2020 vol.1 ラファエラ・カラスコ "アリアドネ" / Festival de Jerez 2020 vol.1 Rafaela Carrasco "ARIADNA"

第24回ヘレスのフラメンコフェスティバルがスタートしました。このフェスティバルに参加し始めて20回目ですが、ここ、アンダルシア州のヘレス・デ・ラ・フロンテーラの中心部の街並みは、初めて来た時からほとんど変わっていません。多少の小売店の入れ替わりはあるものの、道や建物、風景には変化がなく、毎回が初めて来た時から繋がっているような気分になる不思議な場所です。

今年はコロナウィルスの影響で、ここ数年、だんだんと増えてきた中国からのレッスン生は、キャンセルすることになったようです。巷では、その数は200人という噂もありましたが、実際には50人くらいだったようです。

また、28日のイサベル・バジョンの公演は中止という残念なニュースもありましたが、代わりに毎回フェスティバルで公演していて、今年はないのかと思っていたファルーコ・ファミリーから、ファルーが母のファルーカを招待アーティストに据えて公演することが決まり、新たな楽しみも加わりました。

200220RRPP_02-scaled.jpg今年のオープニングを飾ったのは、バイラオーラのラファエラ・カラスコ。故マリオ・マジャの舞踊団で鍛えられた感性でソリストとしても、また振付家としてもハイレベルなラファエラ。アンダルシア舞踊団の監督時代にもその力を大いに発揮し、今活躍中のダビ・コリアやアナ・モラーレスらを起用して、超絶難度の高い、スリリングな振付のある作品で楽しませてくれました。(写真中央がラファエラ・カラスコ)

今回の作品は、「アリアドネ(ARIADNA)」。絵画にも数多く描かれているギリシャ神話の登場人物でクレタ島の王女様。ミノタウルスへの生け贄の儀式を終わらせるために、自ら生け贄役を志願してクレタ島に来たテセウスに恋をしたアリアドネが、テセウスがミノタウルスを退治して迷宮から戻ってこれるように、糸玉を渡して脱出を手伝ったと言うエピソードで有名です。支配的な父から逃れ、愛する人と島を出るも、その愛は報われなかったアドリアネの悲しみ、怒り、孤独、そして一人の女性が欲しいものを手に入れるための冒険を語る作品です。

21022020ARIADNA_03.jpgラファエラ・カラスコ以外のダンサーは全員男性。4人のうち、一人はブラジル、もう一人はチリ、残る二人はスペイン出身。彼女の厳しい(!)教えに合格点がもらえるレベルの高い人材が揃えられるあたり、本場スペインの層の厚さを感じます。群舞と言っても皆が同じ振りをするのではなく、微妙にシンクロしているだけだったり、または全く違う振りを踊りながらも、一つのソンブレロを4人の間で受け渡しながらだったり。サパテアードも細かいところまで打ち込んで、音楽を奏でるパーカッションとして多彩なメロディーを繰り出していました。

21022020ARIADNA_01.jpg作品冒頭、波音と汽笛のような音だけをバックに、テセウスに島に置き去りにされたアリアドネとなって、ソロを踊るラファエラ・カラスコ。続いて、その悲しみと孤独を、ペテネーラ(女性の悲劇的な運命を歌う曲)で表現。すべての動きが途切れることなく美しく繋がり、サパテアードもクリアに響き、早くも観客の心を掴んだようでした。現代的な演出ではあっても、往年のフラメンコファンにも大満足のフェスティバルの幕開けとなったことでしょう。

舞台を彩る照明、色使いもシンプルながら印象的。客席をブルーのライトで照らし、物語の舞台、ギリシャの島の浮かぶ海に観客を誘う効果を狙ったものでしょう。衣装の色も、アリアドネを演じるラファエラがソロの時、そして男性ダンサーと絡むときとのコントラストが効果的。クオリティの高い舞台というのは、一つ一つのエレメントを丁寧に作り上げていくことが大切なのでしょう。

21022020ARIADNA_06.jpg
音楽は、ギタリストのヘスス・トーレスが担当。オリジナル曲も含め、舞台作品では、マリオ・マジャの舞台からのベテラン、サルバドール・グティエレスとの二人での演奏。歌では、前作の「Nacida sombra」に続いて、ミゲル・オルテガとアントニオ・カンポス。ラファエラ作品には欠かせないカンタオールです。彼ら出演者、そしてスタッフとのこの新作の製作は「苦しかったけど、楽しんでやった」と記者会見で述べていたラファエラ・カラスコ。1972年生まれの48歳。ますます円熟味を増して、クオリティの高いフラメンコ作品を見せてくれることでしょう。
映像はこちらです。

余談ですが、ミュージシャンの名前を見ると、パルマの二人の名前が、ヘスス。ギターのヘスス・トーレスを入れると3人のヘスス(=イエス)。そして、サルバドールは「救世主」という意味なので、なんと4人もの救世主に守られた公演だったようです。


続いて、夜中の0時スタートのエル・カブレロのコンサート。今年は回数の減ったシェリー酒の酒蔵の建物を使っての公演でした。残念ながらこちらには行けなかったので、下記に映像のみご紹介します。


さて、ここヘレスはフラメンコのゆりかごとも言われているだけあって、ペーニャと呼ばれる愛好家で運営するフラメンコの場が数多くあり、このフェスティバル期間中は8つのペーニャで公演が企画されています。この期間中は、入場料はなく誰でも入ることはできます。ペーニャの中にはバルがあるので、無料での催しの時は、なるべくuna copita(グラス1杯)くらいは注文してあげると良いでしょう。その収益はきっと、ペーニャの今後の運営資金の足しになる...はずです。


写真/FOTO : Copyright to JAVIER FERGO/ FESTIVAL DE JEREZ
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坂倉まきこ(Makiko Sakakura) プロフィール

1994年から10年間ラテンアメリカで過ごす。そこでフラメンコと出会い、本場スペインに通い始める。数多くのアーティストの舞踊クラスに参加する一方、カンテ、ギター公演も見逃すことなく各地で鑑賞。日本へ帰国後、スペインでの経験を活かし、コーディネーターとしてスペイン人アーティスト招聘企画やフラメンコ通訳、翻訳、執筆などに携わる。現在も日本〜スペインの往復を続けながら、フラメンコの広報活動に従事。主な仕事にアルカンヘル来日公演の企画制作、NHK「黒木メイサ スペイン フラメンコ 魂の踊りと出会う旅」コ―ディネイタ―、DVD「アントニオ・ガデスその人生と舞踊の倫理」字幕作成等。スペインのフラメンコ誌Guia FLAMA 日本担当(www.guiaflama.com)、2012年ビエナル・デ・セビージャ:ヒラルディージョ賞審査員。

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