バイレ・ソロ部門第2日

菊地裕子 全体のレベルが高いのはいつものことながら、今年は強烈な印象を残す踊りが少なかった。協会の奨励賞選考会では8名を推したが、私自身のメモに「特A」は4名しかいない。 いわゆる「上手に踊れる」という人は沢山いるのだけど、際立った個性を感じさせたり、心に刺さる感動を与えるところまではなかなかいかないことがほとんどだった。準備を進めてきた人の中には、今年3月11日の大震災で被害を受けた人も少なからずいるだろう。それがステージの出来に影響しているのかもしれないとも思う。けれども、こんな時だからこそ、フラメンコをフラメンコたらしめているものが大きな力を発揮すると私は信じている。いつもより、多少書き方が厳しいかもしれないが、伝えたいのは、あなたが思っているよりも「フラメンコは素晴らしい」、あなたが考えているよりも「アルテは心を動かす」ということだけだ。フラメンコの力をもっと信じて欲しい。あなたの中にある力をもっと信じて欲しい。見果てぬ夢に向かって進む人々を、これからも私は私なりに応援していく所存です。

堀越千秋 カンテはあなた、私は踊り、というのは正に日本的お稽古ごとの延長上にある悪弊である。 フラメンコとはそういうものではない。 カンテを唄えなかったら、ギター(本年のギターの諸君も、唄うよりつぶやきという感じであった)も踊りも存在しないのだ。よくぞ本質をするりとトバして、避けて、もっともらしく動きだけをマネして、日本フラメンコは今日までやってこれたものだ!もはやこの原発事件(すでにして原発は事故ではない。事件=国家的犯罪である)による放射能で、われわれ日本人に呑気に長い未来はないのだから、僕も正直に言っておくことにしたい。 「唄なき踊りはニセモノである!」。 また来年! もし出演者の方で御質問のおありになる方は、どうぞ往復ハガキにてアクースティカあて(〒141-0021 東京都品川区上大崎2-15-5長者丸ビル3F)にお送りください。必ずお答えします。ランクはA、a上、a中、a下、B上、B中、B下、b上としました。

西脇美絵子 震災の影響なのか、世代交代の時期だったのか、常連の出場者が少なく新しい顔が目立った。そのせいか、突出した人は少なかった。例年同様全体のレベルは高い。特に下の方は、今年また一段レベルが上がった印象を受けた。個人的に絶対奨励賞!と評価した人が2人、奨励賞と評価した人が4人。奨励賞のボーダー上にいた人が13人、あと一息でボーダー上と感じた人が21人。ここまでで40人になる。全体の6割以上である。残り4割の人たちだって、すぐその後ろに控えている。僅かの違いの中で大勢がひしめきあっていた。この数字から何を読み取るべきか? 誤解を恐れずに言うなら、奨励賞なんて時の運だと腹をくくることだ。 新人公演の傾向と対策なんて笑い飛ばしてしてしまうことだ。 皆うまいのである。皆美しいのである。フラメンコ舞踊独特のテクニックも、かなりの人が器用に身に付けている。そういうものを突き破ってその人の内から溢れ出る、命のマグマと私は出会いたい。私が高い評価をつけた前述の40人には、各講評の最後に、◎スペシャル、◎、〇、〇小の印を付した。


10 小田あかね

(ソレア)

小田あかね

●ゆっくりとした登場の仕方が秀逸。その後も一つひとつの動きが丁寧で、よく引き付けたものの、途中から中だるみになり、持てる力を全部出し切らずに終わった感じ。漫然とした印象を与えるのは、振付・構成の意図が自身に十分に浸透していないからでは?その踊りをもっと好きになり、もっと自由になるべし![A評価](菊地裕子)

●足強い。リズムのシンプルなかんじは良い。ソレアの持つ重さのようなものを表現したいと思う趣味は良い。そのゆえの動きのゆっくりさなのだろう。しかし中身がない。内臓感覚なしに筋肉だけゆっくりしても意味はない。両腕を上に伸ばし切るな。なるほどマヌエラ・カラスコが昔そうしたように見えるが、ひじは2センチ内側に曲がっている。ピンと伸ばし切ると、気が蒸発してしまう。そういう観察が大雑把である。スカートがパーティ風で変。 [B上](堀越)

●詰めこまない振付を、たっぷりタメを効かせて踊った。腰の位置が安定していて、ずっしりと重く響いたマルカールが印象的。切れ味、スピード感がややものたりない。緩急をしっかりつければさらにドラマチックなバイレになる。〇(西脇美絵子)

11 佐藤幸子

(ソレア)

佐藤幸子


●振付を形で取ってしまっている感じが否めない。見ていると、点と点を直線で結んだような印象を受ける。マルカールをもっと研究して、踊りを生き生きしたものにして欲しい。その上で、すべての動きに動機を探ってください。自発的な踊りこそ、人の心を動かすものだと思います。(菊地)

●底に力のようなものがあるが、未熟ゆえの固さと力みがある。踊りというものは、一見力んだように見えて実は完全に脱力していなくてはならない。流れが止まりがち。リズムに遅れる。 [B下](堀越)

●気をグッと落として肝の据わったソレア。気迫は十分伝わってくる。ただ力が入りすぎて動きが全体に固い。脱力を覚え、緩急を操れるようになれば、表現の奥行きがぐんとでてくるだろう。サパテアードが時々は走るので注意されたし。〇小(西脇)

12 漆畑志乃ぶ

漆畑志乃ぶ

●濃い内容の、充実した踊り。本人の真摯なベクトルを感じるが、エネルギーを支える身体に時々揺らぎが見える。揺らぎそのものは悪いことではないけれど、漆畑さんの場合は、揺らいではいけないところで揺らいでしまう。体幹を鍛えて、思いを十分に伝えられる踊りを![A評価] (菊地)

●カンテの力唱に応えるべく、力演であった。重い曲シギリージャを踊りたい、という志が見える。足に力あり。但し、体に力を入れると力があるように見えると信じているのか、肩に力が入っていた。 [a下](堀越)

●たっぷりためを効かせて落ち着いて踊っている。力をぐっとためこんで下に落とした重みのあるンシギリージャ。気合も充実。なのに時どき腰がふっと抜けることがある。集中力が途切れるのか。こちらの気持ちもふっとはぐらかされる。惜しい。〇小(西脇)

13 河野睦

(ソレア)

河野睦

●華やかで女性らしく、気品のある踊り。大きなステージがよく似合う。見とれるほどに美しいが、その踊りが心に深く食い込まないのは、河野さんが「踊りを見せよう」としているからだと思う。踊れることはよく分かる。しかし、私がソレアに求めるのは、踊れなくなるほどの深い慟哭だったりする。危険な感動が欲しい。[A評価] (菊地)

●大柄で美しい。とてもソレアらしいソレアであった。カンテの「クアトロ・プンタリート!」の部分で、ああ!もっと力をぬけたら!と思ってしまったが、あのところで力がぬけないということは、カンテを知らないと言うことだな、と判明した。同じ理由で、逆にもっとすばやくこなすべきところがもったりしたりするのである。フラメンコの筆法とは、カンテの筆法なのに、カンテを知らないから、あと一歩のところで「ソレア」にならず「ソレア風バレエ」になってしまう。万事が美しいだけに残念。 [a上](堀越)

●良く踊りこまれ、振りを自分のものにしている。メンタルな部分の充実と身体的な表現力が拮抗しよい緊張感を醸し出した。抑制の効いた大人のソレアだ。サパテアードがとても力強いのもいい。ただ、一曲全体のダイナミズムはまだ乏しい。内側から突き破って自分を出してほしい。 〇(西脇)

14 伊部康子

(ソレア)

伊部康子

●大変に抑制の効いた踊り。しかもメリハリがあって、内側から湧いてくるものを感じる。ソレアらしさがにじみ出て、非常に感じ入るものがあった。愛すべき踊り手だ。方向性は間違っていないと思う。あとはどう膨らますか。まだまだ感動が小さい。たくさん傷ついて、泣いて、怒って、笑って、踊るのだ。そこを超えて行けー![A評価] (菊地)

●大柄で美しく力強い。前の人と同様、筋肉はソレアをなぞっているが、内臓にはマクドナルドがつまっている。カンテを知らないということ。カンテを愛してないということ。つまり、フラメンコが薄いということ。でもやはりフラメンコが好きなのだろうから、カンテを心から好きになりなさい。 [a下](堀越)

●緊張のせいだろうか、上手く踊れてはいるのだが、背中がつっぱっていて動きがどこかぎこちない。だから力を込めているのに、下におりてこない。1曲を通して同じようなテンションで踊っているのも気になる。もっと自分の内側から吠えよう。感情のうねりを表現してほしい。〇小(西脇)

15 有香セルバンテス

(ファルーカ)

有香セルバンテス

●ベストとスカートの組み合わせではあったが、振付はカチッとした男振り。これがうまくはまれば良かったが、決まるべきところでピタッとこない。男振りを踊るには、おそらく筋肉が柔らかすぎる。短距離選手ではなくて長距離選手の筋肉に近いのでは?もっと優雅な振付を選んだほうがしっくり踊れるのではないかな。(菊地)

●カチカチ音がするくらい固い。もっと練習していけば、自然に解凍されるはず。 [B下](堀越)

●ドラマチックな振付をたっぷりとした間合いで踊った。気持ちを一度内に向かわせているので、出てくるオーラが落ち着いている。色っぽい。ただ、身体を大きく使おうとしすぎて、軸が振り回されてしまうのが残念。(西脇)


16 瀬戸口琴葉

(アレグリアス)

瀬戸口琴葉

●けれんのない、フレッシュな印象。若い方だろうか。可愛らしいが、途中から集中力を欠いた。6割ぐらいの力で踊っているように見える。それはアレグリアスの軽みとは全然違う。目一杯以上やっても、(粋がって)軽々とやっているように見せる、その面白みを目指してください。(菊地)

●明るい。きれい。可愛らしい。うれしい。たのしい。動きはスムースで軽やかでしなやかである。シレンシオの足音が美しい。ただしアレグリアスは、リズムよりどんどん先に出ていかねばなりません。それでやっと普通に見えるのだ。フラメンコというのは、そういう音楽なのです。 [B上](堀越)

●独特のたたずまいというか、空気感を持っている。身体の使い方に少し癖があるのだけれど、それも個性にしてしまう強さ。脱力した時の、ちょっと投げやりな感じで肩を揺らす動きが、色っぽい。基礎ももう一度捕まえて見て。グッと踊りにに説得力が出てくると思う。〇小(西脇))

17 小林成江

(ソレア)

小林成江

●モダンな振付で、身体能力高し。けれども、いかんせん感動が伴わない。何に感じてそう動くのかを、もっと自身で鮮明にして欲しかった。その「何」かに人は共感する。そうでなければ、「お上手ね」で終わってしまう。踊りとは、心に何かを刻み付ける作業ではないかと思います。あと、そのイヤリングは長さが余計だったかな。(菊地)

●踊りばかり、つまり身体ばかりで、カンテがない。身体はうまく動いて振りをこなしているが。とはいえ、動きに快あり。首が少し前に出て重心を乱している。カンテに興味がないと見えている。 [a下](堀越)

●膝に遊びがないのか上体が硬くつっ立ってしまい、動きに勢いが出てこない。ブラソの使い方もやや無頓着な感じで、せっかくの長身が生かしきれていない。ただ、ところどころものすごくいい瞬間がある。リズムが立ち、踊りにノリが出てくるのだ。まずは基本をしっかり。(西脇)

18 朱雀はるな

(ソレア・イ・ソレア・ポル・ブレリア)

朱雀はるな

●うーん、この構成はどうなんだろう。私としては、ソレアの最初の部分が、等身大の真実味があっていい感じだっただけに、まだ十分に力を出し切らないまま、次の展開に移ったのが不満だった。あれこれ欲張らずに、普通にソレアで勝負したほうが良かったと思う。勇気を持って。(菊地)

●緊張のせいか肩に力が入り、首が前に出る。すると自動的におばさん臭くみえる。両腕を上に万才すべからず。 [a下](堀越)

●強い気持ちを身体の動きで表現できている。マルカール重く、サパテアードの音も強い。ストレートにパワーがこちらにぶつかってくる感じが心地よい。ただ、いまひとつパンチがほしいのと表現がやや単調になってしまったったことが残念。〇小(西脇)

19 永田健

(ソレア・ポル・ブレリア)

永田健

●奇をてらわないオーソドックスな振付。これを振付ありきで踊ってしまうと、まったく説得力に欠ける。男っぽいのはとても良し。もっと踊り込んで、自分のものにした挙句に、その振付をいったん忘れて、もう一度、この踊りと出会う。そのぐらい面倒くさいことして、自発的な踊りを探ってください。(菊地)

●背が高く、動かないとすごくかっこ好くみえる。が、リズムに遅れる。上体が不安定なのは重心が悪いせいか。 [B上](堀越)

●バンバンに力んでしまう人が多い中、力の抜け具合がよくて、粋で味のあるフラメンコ。楽しかった。アンダルシアの田舎のおっちゃんたちが踊る、泥臭い、飾りのないフラメンコが好きなんだろう。彼がどこを向いて踊っているのかがよくわかる。ただ、せっかくそういうフラメンコを求めているのに、まだそれを表面的な形でとらえようとしている感じ。そういうフラメンコこそ、複雑な振りやフォルムではごまかせない。身体の中の内実が問われます。精進を続けてください。〇小(西脇)

20 秋山泰廣

(アレグリアス)

秋山泰廣


●誰が見てもイスラエル・ガルバンが大好きだと分かる踊り。物真似に眉をひそめる人もいるだろうが、ここまで徹底的にやられると、見事というほかない。今回、素晴らしいと思ったのは、ほとんどセンターでしか踊らなかったにも関わらず、まったく飽きさせなかったこと。プロでもなかなか出来ないことだ。これは、彼が形を真似ているに留まらず、その動機までも掘り下げて、自分のものとして喜びをもって踊っているからに相違ない。誰でも物真似から始まる。動機にまで行き着けたら、そこから先は独自の世界を自由に創っていけるはず。頑張れ![特A評価] (菊地)

●大変面白く見た。楽しめた。ユーモラスな動きは生来なのか、わざとなのか。わざとなら、もっと意識的に面白くてもよかろう。力みがあるのか、カタカタして、首が前後に揺れる。もっとアレグリアスのリズムを心身に呑み込んで、自在に出し入れして欲しい。お神楽みたいな、たくまざるユーモアは貴重である。 [a下](堀越)

●2,3年前に初めて秋山君をみた時は、イスラエルを模した踊りがとってつけたようで、そのチャレンジ精神はほほえましかったが、踊りは空虚に見えた。最初はかなり賛否両論あったに違いない。が、彼はひたすら自分の好きな、自分の信じるフラメンコにこだわり続けた。てらうことなくイスラエルのスタイルを踊り続け、いつしかそれは、彼自身の風合いを帯び始めた。イスラエル風の独特の動きに飄々とした味やユーモラスなニュアンスがまざり、彼ならではの空気を醸し出すようになったのだ。「フラメンコ大好き」が身体からにじみ出ている。だから踊り手としての身体やフォルムは甘いのだが、コンパスのつかみ方は絶妙だ。そしてフラメンコな観客はそこにこそ反応する。この日も会場は彼の踊りに大いに沸いた。もちろん私もその一人。その感触を失わずに、でも踊り手としての身体の基礎も積み上げてほしいと、私なんぞは願ってしまう。〇(西脇)

21 田倉京

(アレグリアス)

田倉京

●ありゃりゃ、どうしたことか。実力ある踊り手だと高く評価していただけに、今回はちと落胆。上手いのは分かっているけど、全体に動きが粘っている感じでキレがよくない。メリハリがつけられる人なのに、漫然とした印象で終わってしまった。どうしたあ!何を迷っておるー!もう、来年もまた挑戦してくれないと怒ります。[A評価] (菊地)

●おちついて、貫録さえもみえた。スピード感に充ちたスリリングなアレグリアス。足強く美しい。ラストも美しかった。 [a上](堀越)

●コンパスが身体の中でうねっているような、しなやかな動き。軸が安定しているので、すべての動きがスムーズだ。スムーズ過ぎてフラメンコ独特のひっかかりにやや欠けるのが難点か。というより、この日の演技には、少し不満が残った。フラメンコ舞踊のテクニックはしっかりに身につけているし、アレグリアスのニュアンスもよくとらえている。実力を余すところなく発揮してほしい。来年待っています。◎(西脇)

22 浅野直子

(ソレア・ポル・ブレリア)

浅野直子


●全体に動きがちまちました印象で、自信がなく踊っているように見える。振付やリズムが身体に浸透していないのかも。もっと踊り込むのが必要なのはもちろんだけど、たっぷりした動きでも支えられるように、フラメンコの身体を作ることも忘れないで。(菊地)

●カンテを踊るのがフラメンコである。むりに色々振りをしないで、難度のない踊りを見せて欲しい。スポーツじゃないのだ。リズムに遅れるところあり。後半つらそうにみえた。 [B下](堀越)

●フォルムはきれいだし、ノリもいいのだが、全体にバタバタした印象がある。力が入りすぎてしまった。仙骨をしっかり立てて、腰をぐっといれれば、立ち姿から変わってくる。あまり先を急がず、まずは基本を大事にしてほしい。きめ細かく情感を盛り込んで踊っているのは好感が持てる。思いがこちらに伝わってきた。〇小(西脇)

23 大場清乃

(グアヒーラ)

大場清乃

●以前よりはずっと良く踊れるようになった。いいところが散見される。大づかみな曲の捉え方は間違っていない。ただし、まだ詰めが甘いというか、ぐっと心に迫る瞬間がない。そのまま、とにかく踊り込んで、その曲を自分にしか踊れないものに育ててください。(菊地)

●オレンジの楽しげなバタ・デ・コラが自然に見えた。足すこしもつれる。節々に遅れるところあり。 [B上](堀越)

●バタ・デ・コーラで華やかに舞ったグアヒーラ。力強さもエレガンシアもある。ただ、コーラさばきはまだつたない。後半、盛りだくさんすぎたのかバテてたのか、せわしない印象になってしまった。(西脇)

24 梅本千枝

(ソレア)

梅本千枝

●粗さが目立つし、まだそんなに上手とは言えないけれど、非常に好ましい踊り。ちゃんとソレアを踊ろうとしている気概が伝わる。方向性はそれで良し。沢山踊ることで、自分の中にあるものを踊ることがきっと出来るようになる。豊かな表現が出来るようになる。そう信じて、頑張る!(菊地)

●未熟。リズムに遅れている。練習でしのぐしかない。 [B下](堀越)

●気合十分なのはわかるのだが、力が入りすぎて動きがギクシャクしてしまった。気持に身体がついていかない。ワンテンポ遅れてしまったり、急いてしまったりで、リズムに乗れていない。身体と心の軸をしっかりもとう。そして音楽に身を委ねて。(西脇)

25 小林浩子

(ティエント)

小林浩子


●師匠(岡野裕子)の振付を、感動するぐらいに自分のものとして踊っていた。これはとても素敵なことだし、大事なことだと思う。ただ、タンゴになってから疲れが出たのか、ややバタついた印象だった。最後まで息切れせずに踊りきれたら、もっと良かった。[A評価] (菊地)

●舞台照明のブルーと合って、新緑の衣裳が美しく、空間が感じられてトクをした。まだ振りにふりまわされているところがある。長く感じられた。 [B中](堀越)

●大地に根を張ったどっしりとしたティエント。詰めすぎない振りをゆったりとかつ密度濃く踊った。派手さはないが、グッとこちらに迫ってくるものがある。ブエルタの切れ味よく、軸がしっかりしている。緩急があるので身体に表情もある。あと欲しいのは、最後のひと押し。上手の手からこぼれる一撃を待っています。◎(西脇)

26 西村真由美

(アレグリアス)

西村真由美

●素直に踊っている印象。嫌味はないが、どこか優等生的で特徴に乏しい。何を踊りたいのか、どう踊りたいのか、なぜ踊りたいのか、自分で探った上で、足りないものを見つけて。まずはあなたの好きなフラメンコに出会ってください。(菊地)

●動きは美しい。しかしどことなく可もなく不可もない。惜しい。パッと決めたあとはすぐにまた動き出さねばならないのに、決めたことに安心して一瞬休む。これは非常に日本的な癖であるが、当人はこれで「正しい」と思っている。リズムに合っているから「正しい」と思うのであろうが、特にアレグリアスで「リズムに合っている」というのは犯罪的な遅れで、何故犯罪的かというと、当人は至極満足なのだが、見ている方は苛立つからである。といって、日本人でこの癖を克服した人を見たことがないのだから仕方がない。スペイン人だって名手だけがそれをよくしのぐのだ。 [B上](堀越)

●落ち着いて丁寧に踊っている。アレグリアスのグラシアも表現されている。だが、全体にそつなく、小さくまとまってしまった感じだ。もっと自分の周囲の空気を取り込み、動かして踊れる体幹を作ろう。内からこみあげるものが、もっとほしい。(西脇)

27 平野絵美

(ソレア)

平野絵美

●うーむ、これは何がしたいのか、とても疑問。全体に溜めがないから、歩くところはただ歩いているし、手を出すところはただ手を出している。カンテを受け止める以前に、振付を自分のものにする感覚が混線しているように見受けられる。あなたが大事にしているものを、本当に大事にしながら踊ってください。(菊地)

●固い。遅れる。未熟さゆえだろう。 [b上](堀越)

●落ち着いた重いソレアなのだが、終始同じトーンで踊られていたのが残念。一曲の中で、凝縮してゆくドラマ、うねりがほしい。もっと音楽に、歌に耳と心を寄せて。ところどころユニークな振りが織り込まれており、興味深かった。(西脇)

28 土合幸江

(ソレア)

土合幸江

●美しく、過不足のない踊り。女性らしく、大きく、深い。私のメモはそれしかなく、あとは見入っていた。だが、「特A」にしていないのは、もっと強烈に心を揺るがすものが欲しかったから。奨励賞には1票を投じた。あともう少し、腸(はらわた)をさらけ出す勇気を![A評価] (菊地)

●美しい美しい。ソレアである。それを充分に認めた上で言うのだが、何故これほどの踊り手にしてからが、腕を時にピンと伸ばし切って無頓着なのか?至極良い気持で見ていて、時折ハッとするほどの幼稚さと鈍重さを感じるのでその理由を探すと、この腕の伸び切りなのである。古来の名手のビデオなどをもっとよく見てごらん。一体誰の腕がこうしていちいち小学生の体操みたいに伸び切るか!踊りとは自分の筋肉の満足のためのものか?自らの気を感じながら空間を讃美するものではなかったのか? [a上](堀越)

●重厚なソレア。ゆったりとした間合いを心身ともに密度の濃い内実で踊りきった。気合のこもったマルカール、力強いサパテアード、自在な緩急等々、技術面の高さは際立っており、曲全体をドラマチックに表現していた。バックのミュージシャンたちへの信頼感のあらわれだろうか、歌に、ギターに身を委ね自身の内部のエネルギーを増幅させて、踊りあげていったように感じられた。拍手! 私の今年の一押し二人のうちの一人です。◎スペシャル(西脇)

29 小久保純子

(ソレア)

小久保純子

●張り詰めた緊張感が続く。内側から感情があふれだす。それを支えられる身体に舌を巻く。何しろエネルギーが凄い。ステージの上をぐるぐると渦を巻いて流れてゆく感じ。しかし問題は、独特の舞踊スタイルが枷になったことかもしれない。スタイルを持つことはいいことだが、そこで安心してしまうと、観ているほうに驚きがない。スタイルを逸脱しても出てきてしまう何かが欲しいのだ。スタイルを持つことの意義は、そんなところにあるのかと思う。[A評価] (菊地)

●この佐藤祐子直伝の振りは、よほどの気力のほとばしりがないと、キッキッとあちこちで止まってしまうようで良くない。足は強いし、よろしい。踊る力は充分にある。力を抜いて流れるように踊って欲しい。 [a下](堀越)

●生々しくギラっとした魂を感じられたバイレ。フラメンコでしか表現できないような鬼気迫る思いのかたまりが、彼女の身体からほとばしっていた。美しくサラッとしたバイレが多い中、今もとても印象に残っている。フラメンコを踊らずにはいられないなにかが、彼女を突き動かしているに違いない。そういうものは何よりも見る者の胸に響く。一歩も引かない気合は脱帽ものだったが、もう一つそこを突く抜けると、必ずやさらにリアルなそしてスケールの大きいバイレになるだろう。そのために、もう一度身体に戻って、踊る身体に磨きをかけてほしい。次回を楽しみにしています。〇(西脇)

30 久保美也子

(タラント)

久保美也子

●今までの久保さんからすると、踊りが一皮むけたような感じで、人間臭さが出てきた。こうなると欲が出る。もっとコンパスの楽しさを追求して欲しい。もっとフラメンコの中で自分というものを追求して欲しい。もっともっと!です。[A評価] (菊地)

●全体にメリハリがない感じ。しかし、カンテが止んでエスコビージャになると、とたんにスポーティーな練習ぶりを発揮して、良くなる。そしてまたカンテが始まるとちぐはぐに遅れる。カンテが頭と心に入っていないのである。 [a下](堀越)

●気合十分なバイレ。その気合を内へ内へと向かわせ凝縮させているのは好感が持てるのだが、内側にため込んだエネルギーが外に出しきれていない。みていて、とてももどかしく、もったいなく感じた。身体的な面もかなりクリアしているように見受けるのだが、最後の一皮がむけない。きっと自身のうちにつき抜けなくてはならないなにかがあるのだと思う。そろそろ、ちょっと力の抜きどころを覚えた方がよいかもしれない。〇小(西脇)

31 山崎愛

(アレグリアス)

山崎愛

●沢山、技を入れて楽しげな振付。それなのに、肝心の足音がパルマで聞こえない!これは聞かせたくないのか、単に効果に配慮しなかったミスか。いずれにしても、これで楽しさが半減したと私は思う。要注意。あと、これだけの踊りに挑戦するなら、もう少し身体を作るべし。ともあれ、いい方向性です。頑張れ![A評価] (菊地)

●アレグリアスらしく、リズムより早く出る方法を知っていると見た。しかしそれを徹底して、決して止まらないで欲しい。楽しいノリのままに首がつい御都合でウロウロ不定となる。後半よろし。が、ラストでハァハァ息があがった。 [a下](堀越)

●アレグリアスの明るい生命力を感じさせてくれたバイレ。ブラソもきれいだし、パワーもある。だが、肝心の軸が定まっていないので、ひょこひょこ動きが揺れてしまう。体でリズムをとらえようとする心意気はいいのだが、ハネて微妙にずれる。肩や顎でリズムを取るのはやめた方がよい。(西脇)

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