大沼由紀のバラよ、荒野に咲け!

杢 から FABULAE へ

昨年11月に、渋谷のアップリンクファクトリーという小さな箱で、「杢」と名付けたライブをした。ジャズフルート、サックス、ピアノの即興演奏、ホルンやアナログシンセのシーンなど、フラメンコのスタイルを借りずに、ただただ聞こえたものを踊り、踊りが音を誘う、ということをした。

私の公演、ライブに足を運んでくださる方は、フラメンコが見たい方がほとんどのため、「今回はフラメンコじゃないです」とお断りを入れて案内をした。

終わってから、
・「フラメンコじゃないって言ってたけど、フラメンコにしか見えなかった」
・「ミュージシャンがたくさんいるんだから、音楽がもっと聞きたかった」
真逆の意見も。
・「音楽隊が多すぎる。もっと踊りだけが見たかった」
・「フラメンコのシーン(私のとってのフラメンコはなかったのだが、サパテアードを使ったシーンのことと思われる)はすごいけど、他はよく分からない」

・・・まるでパンドラの箱を開けたみたいに、ありとあらゆる意見が飛び交った。

学生時代の友人達は一様に、フラメンコ踊っている由紀より由紀らしい、と言った。面白かったのは、「何故か子供の頃の風景を思い出した」という感想が、友人関係ではない、お互い関わりのない何名かから届いたことだった。

かなり騒がしいことになった。

何故こんなことがしたかったのだろう。

フラメンコ。
喉から手を入れて、内臓を鷲づかみにされるあの感じ。
嘘が紛れる隙間のない圧力。
フラメンコという名称より、アグヘータに倣って、カンテヒターノ、と言った方がいいのかもしれない。あれに惹かれて走って来た。でも、それは彼らのものであることは間違いない。だから私は1ファン。1アフィシオナーダ。それでいい。

しかし杢では、フラメンコは自分から生まれるものじゃないという当たり前の事実に対して、自分から生まれるものを表に出してみたかった。

フラメンコは、100%プーロがいい。そうでないと、私にとってのフラメンコじゃない。頑固なプーロフラメンコ愛好家。だから、フラメンコにしか見えなかった、と言われても、杢は私にとってフラメンコじゃない。フラメンコはまじりっけのないプーロしか好きじゃない。


しかし最近。
ハタと気が付いた。

自分自身の中身、色んなものが混じってる。

なんだ、なんだ。こんなバカみたいな当たり前、ちゃんと見てみよう。

日本人として生まれた。会津の田舎から東京へ出て来て、クラシック音楽を勉強。オリジナル曲でバンド活動をし、その後アングラの世界に飛び込んだ。テント芝居で揉まれ、気が付いたら舞踏創始者、土方巽という怪物の稽古場に通っていた。27歳でフラメンコ舞踊を習い始め、スタジオカスコーロに通った4年間は、ジャズの学校に通いながら、ピアノ弾きの仕事をしていた。

プーロフラメンコ好きの私の中身は、ものすごいメスクラです。
でも、それらはバラバラにならないで、
私という人間の中で、共存しているようです。



FABULAE-A4_F.jpg

FABULAE チラシ裏
6月15日(日)、
舞踊詩「FABULAE」-フラメンコへのオマージュ-
とタイトルの公演をします。
フラメンコじゃありません、という頑ななものではなく、1アフィシオナーダとしての、プーロフラメンコへの挑戦でもなく、
私自身の中に染み付いたフラメンコ的感覚、動き、またはフラメンコに出会う前に私の中に入り込んだもの、それらを総動員して、
この入り混じった感覚を具現化したいと思っています。


そんなことが果たして形に出来るのか、全く分かりません。
初めての挑戦。すでにウロウロしています。

杢が終わって、訳わからなくなって、過去3回のリサイタル同様、敬愛するヘレスのアルティスタを招聘し、ガツンとフラメンコをやるか、と思ったのも事実。しかし今年初めに、再びエネルギーが湧いて来て復活し、舞台を、作品を作りたいと思いました。いきなりの無謀なチャレンジですが、とにかく先に進んでみます。

今回、地球交響曲という大好きな映画で知ったミュージシャン、長屋和哉さんが参加してくれます。http://gaiasymphony.com/bu/6_cast_2.html#nagaya
日本人がフラメンコを踊り、スペイン人が舞踏を踊るシーンもあります。

そこからどこに行けるのか、どこに向かえるのか。

6月15日、劇場まで足を運んでいただけましたら嬉しいです。
どうぞよろしくお願い致します。

●舞踊詩「FABULAE」-フラメンコへのオマージュ-
日時 6月15日(日) 開場18時半 開演19時
場所 あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)
料金 6000円(全席指定)
出演 踊り  大沼由紀
カンテ 瀧本正信 西容子
ギター 西井つよし 山内裕之
パルマ 伊集院史朗
ミュージシャン 長屋和哉
舞踏  David
フラメンコ舞踊 大沼由紀フラメンコ舞踊団
チケット問い合わせ・お申し込み fabulae@willcom.com
070-5464-1971 (制作事務局 杢)
★4月1日よりチケット取扱い開始始

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大沼由紀 プロフィール

フラメンコ舞踊家。日本大学芸術学部卒業後、フラメンコに出会い佐藤佑子に師事。1992年渡西。 ラ・トナ、アナ・マリア・ロペス、アンヘリータ・ゴメス等に師事。約3年のスペイン生活の中、特にヘレスのフラメンコに強く惹かれ、現在の自身の舞踊スタイル、教授スタイルへと結びついている。99年、中野にエストゥディオ・ブレーニャを開設。カンテを愛し、フラメンコの真髄へと突き進むその真摯な姿勢と深いアルテでカリスマ的な人気を誇る。
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