フラメンコあれこれ |フラメンコ・シティオ

フラメンコあれこれ

フラメンコって何?

flamenco11.jpgフラメンコ、フラメンコと言うけれど、フラメンコって一体なんでしょう?
 この20年の間に日本のフラメンコ人口は急増しました。
現在は落ち着いていますが、とりわけ90年代後半から今世紀初頭までは、カルチャーセンターの一番人気メニューといわれるほどの人気でした。ややオーバーに言えば、都内JRの各駅のカルチャーにはフラメンコがまずある、という"駅弁フラメンコ"状態といっっていいでしょう。これは、20年前には考えられなかったことです。
今や日本は、本場スペインに次いでフラメンコが盛んな国といわれるほど、盛んなアートとなっています。

ところでこの「フラメンコ」、実はたいへん様々な受け止められ方をしているのです。
まずこの日本で「フラメンコって何?」って聞いたら、「踊りでしょう。」と答えが返ってきます。なんせ踊りブームですから。
ところがフラメンコの本場、南スペインのアンダルシアで「フラメンコって何?」って聞いたら、「それはカンテ(歌)だよ。」と言われるでしょう。なんせカンテはフラメンコの原点ですから。そしてもう一つ、クラシックやジャズを聴いてきた"音楽インテリ"たちに「フラメンコって何?」って聞いたら、「それはギターソロだ。」と答えるでしょう。
フラメンコはこれほど多様な姿と魅力をもった舞踊・音楽です。もちろん踊り・歌・ギターの三位一体も素晴らしい。さあ、あなたは何から入りますか?

フラメンコのリズムをコンパスという

フラメンコには約20前後の主要な曲形式がありますが、これらの曲形式のリズムパターンをコンパスといいます。このコンパスが、フラメンコの最大の魅力であると同時に難しさでもあります。一般音楽と同じような4拍子や2拍子の曲もありますが、中核をなす曲種は12拍を1単位(1コンパス)にしたものや、そのバリエーションです。丁度時計の針が12で一回りするように、フラメンコのリズム(コンパス)は回りながら進んで行くと考えたら分かりやすいかも。
いま分かりやすいと言いましたが、このコンパス感を身につけるのは大変です。12拍といっても、ほとんどが変拍子で、3拍子と2拍子つまり奇数と偶数が交互に来るというものです。スペインのジプシーのファミリーでは、母親の胎内にいる時からこのコンパスを耳にしているわけで、踊りやギターを始める前からリズム感は出来上がっていると考えていいでしょう。
ですからフラメンコを見て聴いて楽しむ場合でも、コンパスが分かっていることが理想です。本場のアーティストたちは、コンパスを無言の約束にして曲芸的なリズムの綱渡りをしたり、コミカルにおどけたり、人間の深淵を表現したりできるのです。このリズム遊びの中に、人生の至福を感じているのです。

フラメンコの音階について

flamenco21.jpgイメージフラメンコでは曲の形式ごとにいろいろな音階が使い分けられていますが、あの独特の寂びれた、メランコリックな響きは一体どこから来ているのでしょうか? その秘密は長調でも短調でもないフラメンコ独特の音階?ミの旋法?にある、と言って良いでしょう。
ミを主音とする音階、ミ・ファ・ソ#(下降するときはナチュラル戻ることが多い)・ラ・シ・ド・レ・ミです。一部の曲形式では長調(アレグリアス、グアヒーラス、ガロティン等)や短調(ファルーカ、カンパニジェーロス等)も使われますが、ソレア、シギリージャ、ブレリアその他大半の曲形式はミの旋法で成り立っています。この音階によるコード進行は常にラ→ソ→ファ→ミと下降していくのが特徴です。
特にファ→ミと半音下がって主音ミに終始するところがミソで、聴く者になんとも不自然で憂鬱な感覚を与えるものです。これは安定感や調和美を重視する西洋音楽の感覚では理解できない、いわば禁則的な進行で、これこそがフラメンコ・フィーリングを生み出す要因となっているのです。因みに黒人音楽のブルースも音階は違っていますが、やはり禁則的進行を伴うもので、あの投げやりで捨て鉢な雰囲気とか、達成感を得られないまま延々とフレーズが流れていくような感覚はフラメンコにちょっと似ていますね。
皆さんも楽器をお持ちでしたら、ギターでもハーモニカでもオルガンでも何でも結構です、ミの旋法を実際になぞってみてください。きっとフラメンコ・フィーリングを理屈抜きに実感していただけることと思います。

日本でフラメンコが盛んな理由とは?

今や日本は、本国スペインに次いでフラメンコが盛んな国といわれています。フラメンコの人気を支えている中軸は、日本では踊りの練習生たち。その多くが女性です。フラメンコが表現する女性美は、旧来のおとなしい、しとやかなだけの女性像とはかなり違います。フラメンコ舞踊は基本的にはソロで踊られるものですが、まさに大地にひとり立ち大地をしっいかりと踏みしめて生きる能動的、自律的な女性像です。フラメンコ舞踊では、お人形さんのようなかわいらしさは求められません。もっと生身の、人間としての強さやたくましさ、野性美こそが、フラメンコが提示する女性像です。そこでは、体形やフォルムの美しさよりも、その人がその人らしくあること、自身の感情を率直に表現することが何よりも求められます。自分らしい生き方や、自己実現を求めるようになった女性たちの心に、そんなフラメンコはマッチしたのではないでしょうか。フラメンコはひとたび好きになると、とても熱くのめり込む人が多いのも特徴です。知り合いの踊りの先生によれば、生徒は仕事帰りのレッスンの場合がほとんどで、仕事のストレスをためてキツイ表情でスタジオ入りするOLの生徒が、レッスンが終わると非常に穏やかな、いい顔になって帰っていくといいます。フラメンコがストレス解消に向いているとはよく言われることですが、激しいリズムのギターもさることながら、強く地面を踏みならす踊りで相当ストレスの発散ができるのでしょう。フラメンコに取り組む女性たちは、皆元気です。近頃疲れ気味の男性諸氏! あなたもフラメンコで、元気をとりもどしてはいかがでしょう?。

ギタリストはつらいよ

最近はフラメンコのショウなどを生で見られる機会も増えているので、一度はフラメンコの踊りを見たことがあるかと思います。メンバー構成の基本は、まず主役である踊り手、そしてバックにギタリストが1人か2人、歌い手、ときにパルメーロ(手拍子の係)です。歌い手やパルメーロはハレオという掛け声もかけます。
フラメンコは楽譜を使いませんから、メンバー全員がいくつかの約束ごとの上に立って演じるわけです。で、主役はあくまでも踊りですから、もし踊り手が間違えてもギタりストは間違えたなりに踊り手に合わせなければなりません。ギタリストが意地を張って正しいことをやっても、見る側のお客さんにはギタりストが間違ったようにしか見えません。ギタリストはつらい。さらに歌い手は当然踊り手に合わせているわけですが、かなりそのときの気分で歌を変えたりすることもあります。そうなったらまたギタリストは必死です。
すべて経験がものをいう世界ですが、ギタリストは踊り手、歌い手の気分、いわばアドリブについて行かなければなりません。ですから、実はギタリストが一番フラメンコのことを知っているのです。ギタリストはえらい!そしてつらい!

カンテを歌おう!

日本では、カンテはなかなか根付きませんでした。ごくわずかなプロと生粋のアフィシオナードがカンテを愛好するのみで、歌う人もリスナーもその数は非常に限られたものでした。言葉の壁、複雑で耳慣れない音階、体得が難しいリズム、独特の発声などなど、日本人とカンテの間にはお大きな壁がいくつもありました。しかし、カンテはなんといってもフラメンコの要です。近年そのことが広く認知されるようになり、踊り練習生を中心んい多くの人がカンテに関心を持つようになりました。大変喜ばしいことです。カンテ・ソロのコンサートやクルシージョ(短期講習会)が増えてきたのもうれししい傾向です。

ヒターノ(ジプシー)とパジョ(非ジプシー、つまりスペイン人)について

flamenco4.jpgイメージアメリカのジャズに黒人ジャズ、白人ジャズがあるように、実はフラメンコにもジプシーと非ジプシー(つまり一般スペイン人)の違いが、ことさら強調すべきでもないのですが、あるのです。
フラメンコはアンダルシアの在来の民族舞踊・音楽に、15世紀ごろアンダルシアに流れ着いた放浪の民ジプシーたちの感性が絶妙に結びついて、類まれな舞踊と音楽に発展したものです。現代のフラメンコ・アーティストには勿論ジプシーもスペイン人もいますが、歌い手はやはりジプシーが優位にあり、人数も多いようです。
では両者にはどんな個性の違いがあるのでしょう。まず、スペイン人ですが、フラメンコを一つの作品に作り上げる能力に優れ、完成度の高い構成力を持っているアーティストが多い。一方、ジプシーは驚異的な集中力や霊感、神懸かったような瞬間的な表現力などを生まれつき持っているように思います。
スペイン人の代表といえば、踊りのアントニオ・ガデスやギターのパコ・デ・ルシアでしょうが、彼らが作品を作る上でどうしても必要なインスピレーションはジプシーから得ていることが多いのです。インスピレーションの源泉、これがジプシーなのです。[フラメンコなるもの」のコアにジプシーがいる、と考えていいでしょう。そんな意味で、この両者は車の両輪のように、お互いが影響関係にあるのです。

フラメンコ・ソフト専門店

手前味噌になりますが、このサイトを運営しているアクースティカは約30年前に設立され、当時から現在に至るまで、唯一の輸入フラメンコ・レコード専門店として営業してきました。
専門店といえば、情報や物、つまりフラメンコ・ソフトが集中している場所であり、かなりマニアックな面もあるところでしょう。しかしこれは裏を返せば、一般社会にフラメンコの環境が無いことを意味しています。最近のフラメンコ・ブームで少し変わってきているようですが。
なぜこんなことを話題にするかといいますと、本場スペインでもフラメンコ・ソフト専門店は1件しかないからです。それもできたのは、アクースティカよりもずっと後で90年代半ばのことです。フラメンコの本場は南スペインのアンダルシアですが、昔なら人々の日常生活の中にフラメンコが生きていて、仕事の後の宴には、フラメンコの歌や踊りが当たり前でした。ところが、あのスペインも西欧先進国への憧れ止みがたく、バルセロナ・オリンピック、セビリア万博、F1レース開催など、先進国の仲間入りを進めていくうちに庶民の意識は徐々に変化し、日常の中のフラメンコはどんどん失われて行ったのです。
フラメンコの国スペインにフラメンコ専門店が出現した理由は、逆に生活環境からフラメンコが無くなったからです。しかしこれは必ずしも悲しむべきことではなく、日常から離れた代わりに、フラメンコは世界にはばたく普遍性ゆたかな芸術として変貌を続け、この日本でもその魅力が広く認められるようになったのです。

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