パコが行ってしまった。遺作の「カンシオン・アンダルーサ」の依然ツヤのある音を聴く度に、この世の無常を感じてしまう。しかし、フラメンコの歴史はまだ続く。そのパコの唯一無二の盟友・カマロンの生まれ故郷から届いた、若きカンタオールのデビューアルバムをご紹介しよう。制作発表当時は弱冠25歳、カディス県サン・フェルナンド出身、ホアキン・デ・ソラの「プリンシピオ」(2013)だ。

 このアルバムは、先ごろ5月に発表された「第15回"現代フラメンコ"2013年度国家批評家賞(XV Premios 'Flamenco Hoy' 2013 De La Critica Nacional De Flamenco)」で、新人ベストアルバム賞にあたる「Mejor Disco de CANTE REVERACION」を獲得した。同賞はフラメンコを報道する記者ら56人以上の投票で決定され、単にバイレ、ギター、カンテ部門だけでなく、プロデュース賞や伴奏賞まで、多角的な部門賞を授与する点が特徴だ。
 後ろ髪を長く伸ばし、ライダースジャケット&Tシャツというラフな格好が、いかにもヒターノの兄ちゃん然としたホアキン。だが、1曲目のアレグリアスのサリーダ「ティリティトラントラントラン・・・・・・」だけで、ノックアウトされてしまった。サン・フェルナンドの潮風が目の前をサーッと吹きぬけたようだった。スバラシ!! 今どきこんなカンテがCD化されるとは! 極めて伝統的――なのに新しい。25歳とは思えない老成ぶり。だが爆発力も併せ持つのだ。5曲目のタンギージョの軽妙な遊びっぷりも堂に入っている。
 サラサラと軽やかに、流れるような伴奏のアドリアーノ・ロサーノも非常に素晴らしい。
 思わず――というか、ほぼ自動的にハイリキに手が伸びてゴクリとあおった。なんとも見事に調和するプーロなカンテと、日本を代表する缶チューハイのノド越し。梅雨のじっとり湿った空気を一掃できるゴールデン・コンビだ。これに近所で買ってきた焼き鳥(ぼんちり&皮)を加えたスーパートリオが、最近のヘヴィ・ローテーション。酒飲みアフィシオナードのみなさん、ぜひお試しあれ。

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◆◆◆追加情報◆◆◆ ※6月26日(木)更新
急ですが、ホアキン・デ・ソラのプロデューサーから、6月27日(金)23時、マドリードの「CANDELAカンデーラ」にて、本作のプレゼンテーションライヴ情報と、7~8月の出演スケジュールが送られてきたので掲載します。現地にいる方、スペイン旅行予定の方はぜひ!
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★6月27日(金) 23:00~ 【会場】CANDELA【住所】c/.Olmo esquina Olivar(地下鉄最寄駅Tirso de Molina)(Madrid)※「プリンシピオ」プレゼンライヴ
★7月7日(月)21:00~ 【会場】Playa de El Palmar, Vejer (Cadiz)※LUNES FLAMENCOS DE EL DORADOエル・ドラドの月曜フラメンコ
★7月12日(土)22:30~ 【会場】Paseo de la Constitucion. Jimena de la Frontera (Cadiz)
★8月2日(土)23:45~ 【会場】VENTA DE VARGAS  San Fernando (Cadiz)※MADRUGA FLAMENCA en VENTA DE VARGAS ベンタ・デ・バルガスのミッドナイト・フラメンコ
★8月11日(月)21:00~【会場】Playa de El Palmar, Vejer (Cadiz) ※LUNES FLAMENCOS DE EL DORADO エル・ドラドの月曜フラメンコ
★8月13日(水)22:30~ 【会場】.Alcala de los Gazules (Cadiz)※Festival AL-KA-LA アル・カ・ラ フェスティバル
★8月14日(木)22:30~ 【会場】Baluarte Candelaria. (Cadiz)※Jueves Flamencos de Cadiz カディスの木曜フラメンコ

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