フラメンコは難しい。
フラメンコに関わったほとんどの人は、
「フラメンコがわからない」まま一生を終えていくのではないだろうか?と思うくらい、フラメンコは難しい。
アルテを追求するということには、終わりがないので、
一生をかけてフラメンコを追求すること自体は、素晴らしいことだ。
アルティスタにとっては、その姿勢こそが、生命線とも言えるかもしれない。
しかし、だからといって、
お教室に5年通っても、10年やっても、20年やっても
フラメンコの輪郭がつかめないのは、
本質に近づけないのは
さびしすぎやしないだろうか?


自分が踊った曲、覚えた振り付けでしか、
フラメンコがわからない、というのは、もったいなさすぎる。
舞踊教室の生徒という立場でフラメンコに関わっていると、
なかなかフラメンコの全体像が見えてこないということは、よくあること。
フラメンコ舞踊教室では、フラメンコの部分よりも、舞踊の部分に重きをおいて
指導されることが多いからだろう。
踊りを踊ること自体、大変なことだから、
やらなくちゃいけないことがいっぱいある。
まず振りを覚えなくちゃ始まらないし、
肉体訓練もしなくちゃだし、フラメンコ舞踊独特のテクニカもみがかなきゃいけない。
週に1、2回のレッスンという限られた時間の中では
「フラメンコ」の部分まで、なかなか行き着けないというのが実際だろう。
踊りの先生自体が踊り重視の環境の中でやってきている場合も多い。これは、ある意味当たり前の話だが、
それだけだと残念ながらフラメンコにはならない。
osaka2.jpgまた「フラメンコ」の部分は、
「手に取るように書かれた」教科書などどこにもなかったので、
フラメンコの環境を持たない日本人にとっては、
フラメンコは、いわば迷路のようなものなのだ。
それは、プロと言われる人たちにとってさえ
長い時間をかけて、解き明かしていくしかなかったのだ。
フラメンコを好きな人は真面目人が多いし、
フラメンコを踊る楽しさに夢中になっている人が多いので、
みんなよく練習している。うまくなりたいという気持ちも強い。
でも、残念ながら、振り写しを主眼においた練習や肉体訓練からは、
フラメンコの本質や、全体像はなかなか見えてこないのだ。
(肉体訓練が必要ないという意味ではありませんよ!)
フラメンコを見るだけ聞くだけのファンならば、
何も理屈なんかわかってなくたって、感じたままでいい。
でも、フラメンコをもっと理解したい、もっと自分のものにしたい、
もっと自由にフラメンコを楽しみたい、と願うなら、
やはり、一刻も早く「フラメンコはわからない」の状態から抜け出した方がいい。
フラメンコ舞踊の上達の鍵は、そのことに気づくかどうかにあると、私はいつも感じている。
新人公演の取材や舞踊部門の選考を、長い間やってきた。
フラメンコ舞踊の舞踊部分を中心に練習を積んでいき、
フラメンコ的舞踊技術を身に付けていけば
美しく踊る、それなりにカッコよく踊るという意味では、
驚くほど多くの人が、高いレベルに達している。
新人公演でなくとも、どこかの発表会へ行っても、
今の練習生たちのレベルは総じて高い。
皆、フラメンコの格好にはなっているのだ。
でも、その先の
「フラメンコ」という大きな山を超えられる人は、
今もほんの一握りだ。
だから、その山を超えるには、
超えるためのアプローチの方法が、とても大切なってくる。
故堀越千秋大画伯は、
一言、「歌を聞け!」と、若き踊り手たちに吠え続けておられた。
それはもちろんその通りで、全く異論はないが、
もう少し、手がかりがほしい。
どう歌を聞けばいいのか?
そこから何を汲み取ればいいのか?
踊りと歌の関係は、具体的にどうからむのか?
さて、長い前書きになりました。
閑話休題。
1.jpgそんなフラメンコという迷路を、
ひたすら歩み続けているバイラオーラがいる。
セビージャを本拠地に日西を行き来しながら活動されている
La Yunkoこと萩原淳子さんだ。
スペイン人講師によるクルシージョが大流行の昨今だが、
淳子さんも、2009年から日本でクルシージョを定期的(現在は夏と冬の年2回)開かれている。
彼女が最初に開催したときの宣伝チラシを読んだ時の衝撃を、
私は今も忘れられない。
クラスの一つに、
「アレグリアス研究」というのがあった。
読めば、「振付クラスではありません。振り付けや技術だけで踊る「アレグリアス体操」からの脱却を目指します」とある。
テクニカの基礎クラスの説明を読むと、
「その技術がなぜ必要なのか、実践でどのように使うのかを、私自身のスペインでの舞踊活動経験からご説明します」と、書かれていた。
私は、90年代から、2000年代の初頭までの間、フラメンコ舞踊の教則記事やDVDの製作に多数携わってきた。
もちろん、その都度講師をアルティスタにお願いし、そのアルティスタを取材して、構成台本を作ったり、記事を書いたりしてきた。
フラメンコはファミリアの中で口伝で伝えられてきたものなので、
そもそも体系化されたメソツドというものがない。
加えて、私が教則ものの製作に関わり始めた90年代初め頃は、商品化された教則本や教則DVDもまだほとんどなかった。つまり、お手本がなかった。
そんな中での教則づくりは、いつも手探りの連続。
大づかみでフラメンコのイメージや概念を理解できても、
それを一つ一つ言葉にして言い切るのは、とても勇気のいる作業だった。
もっとはっきりいえば、
カンテの理解が不可欠なことはわかっても、
では、歌の何を汲み取ればいいのか
歌の何を理解すればよいのか、
歌にどう反応すればいいのかを、
プロの踊り手でさえ、
それを具体的に説明できる人は、ほとんどいなかったのだ。
実際に舞台づくりを重ねている踊り手たちは、
感覚的にフラメンコを理解し、自分のものにしている人が多い。
もともとプロでやっているような人は、そういうセンスの有る人でもある。
だが、それを人に伝えるときには、感覚だけでは伝えられない。
いろいろな事実や事例を、
体系化し、相対化し、論理的に言葉で解釈して見せなければ、
それを人に教えることはできないのだ。
淳子さんは、オリジナリティを発揮しつつ、
フラメンコとガッツリ四ツに組んだ
そのバイレで活躍を続けるアルティスタだ。
そして彼女には、もう一つの才能がある。
教える人としての稀有の才能が。
osaka1.jpg彼女のクルシージョのチラシを読んで興味を持った私は、
それまで以上に、彼女のステージを見たり、ブログを読んだり、インタビューをしたりという機会を持つようになった。
今では、彼女のクルシージョの受講生にまでなってしまった。
踊練習生ではないので、踊がうまくなりたいからではない。
フラメンコの取材者、ディレクターとして、
もっとフラメンコを具体的につかみたいと思うからだ。
それに応えてくれるクルシージョの内容なのだ。
さて、更に本題。
そんな淳子さんをゲストに迎えて、
来る6月23日に、
中野フラメンコ夜話会を行う。
テーマは、「フラメンコという迷路を歩む」。
淳子さんは、どのようにフラメンコに触れてきたのだろうか?
"教える人"としての傑出したその才能は、
どのようにフラメンコにアプローチして、
身につけてきたものなのか?
フラメンコの迷路を紐解く
その秘訣、方法について、
たっぷりと語っていただくつもりである。
"フラメンコの迷路"に、
立ち尽くしている踊り練習生の皆さん!
中野フラメンコ夜話会に集まれ!
■中野フラメンコ夜話会Vol.13
ゲスト 萩原淳子  聞き手 西脇美絵子
テーマ フラメンコという迷路を歩く
日時 2017年6月23日(金) 19:00開場 19:30開演
場所 中野スペースリンク(中野駅北口2分)
参加費 2,800円(ワイン1杯付き 持ち込み歓迎)
お申込み ①メールで info0915@n-spacelink.com 宛に、件名に「中野フラメンコ夜話会申し込み」と明記の上、①氏名 ②人数 ③メールアドレス ④連絡先電話番号を書いて送って下さい。
②電話03-5380-5066(中野スペースリンク( 11:00-19:00 /日月祝定休)

アクースティカ倶楽部

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