セビージャ、ビエナル・デ・フラメンコのヒラルディージョ賞の受賞者達

2年毎に行なわれるフラメンコ界最大のフラメンコフェスティバル、ビエナル・デ・フラメンコ。前回までこのフラメンコ・ウォーカーでもレポートをお送りしてきました。フェスティバルはコンクールではありませんが、毎回ヒラルディージョという名前の賞が出演したアーティストや作品に対して贈られます。ヒラルディージョはヒラルダの縮小辞。セビージャを訪れたことのある方は、大聖堂(カテドラル)にある「ヒラルダの塔」を覚えていますか?あの塔のてっぺんには風向計を持った勝利の女神の像があります。その愛称が「ヒラルディージョ」。セビージャのフェスティバルらしくそれに因んだ賞の名前で、トロフィーもご覧の通り「ヒラルディージョ」です。

フェスティバル終了後、12名の審査員(含:坂倉まきこ)+フェスティバルのディレクターにより各部門のヒラルディージョ賞と審査員特別賞が決定しました。報道内容はこちら。ヒラルディージョのトロフィー写真も掲載されています。

では、遅ればせながら各部門の受賞者を写真入りでご紹介します。

カンテ部門:ホセ・バレンシア(Giraldillo al CANTE: Jose Valencia)s_jose valencia4.jpg
前回2010年には伴唱部門で受賞したホセ・バレンシア。今回は、ホアキン・グリロの「La Mar de Flamenco」、最優秀作品賞に輝いた「Aleluya Erotica」、そして念願のソロ・コンサート。最優秀作品賞を受賞した「Aleluya Erotica」のドン・ペルリンプリン役では、アーティストとしての守備範囲の広さを示しました。まだ30代後半。ここで留まることなく、今回の受賞を機に一流のフラメンコアーティストとしての品格を備えていってくれることを期待しています。

カンテ(伴唱)部門:ホセ・アンヘル・カルモナ(作品「ロサ、メタル、セニサ」での歌唱)
Giraldillo al CANTE DE ACOMPANAMIENTO: Jose Angel Carmona por Rosa, Metal, Cenizas_IMG_7736.jpg
まさに、次の記事でご紹介しようと思っていたカンタオールです。セビージャにほど近いロス・パラシオス(Los Palacios)出身で、今回出演した作品の主役、バイラオーラのオルガ・ペリセ(Olga Percet)の他、ホアキン・グリロの舞台では、カンテ以外にもベースやマンドリンも担当していました。フュージョン系の時期もありましたが、やはり「根」がフラメンコにある”カルモナ”。モダンな印象の作品中でも、しっかりとフラメンコをのカンテを印象づけ、高く評価されました。(写真中、右から2人目)

バイレ部門:マリア・パヘス(Giraldillo al BAILE: Maria Pages)maria pagT007.jpg
セビージャ出身のバイラオーラ、マリア・パヘスは、新作「ユートピア(Utopia)」をマエストランサ劇場で2回公演しました。
今回のビエナルでは、大劇場マエストランサでのバイレ公演は非常に少なく、この他にアンダルシア舞踊団、サラ・バラス、エステべス/パニョス・カンバニー、小島章司舞踊団、そして最終日のフィナーレ公演のみでした。
この作品は、今年のヘレスのフェスティバルで既に上演されたもので、ブラジルの建築家オスカー・ニーマイヤーへのオマージュを込めて創られた作品で、前作同様、マリア・パヘス独特のスタイルは健在です。

ギター部門:アントニオ・レイ/ダニ・デ・モロン(Giraldillo al TOQUE: Antonio Rey / Dani de Moron )s_IMG_2904.jpgdani.jpg今回は2名が受賞。アントニオ・レイはヘレス出身。ファルーコ・ファミリーやアントニオ・エル・ピパの公演の常連カンタオーラ、マラ・レイの弟です。ヘラルド・ヌニェスやビセンテ・アミーゴらも早くから彼の才能を評価しており、期待通り着実に素晴らしいアーティストになりました。ダニ・デ・モロン(ダニ・メンデス(Dani Mendez))は、ギターの名門、モロン・デ・ラ・フロンテーラ出身。舞台作品「Aleluya Erotica」の3人の出演者のうちの一人として出演しました。あのドラマティックな作品の完成度を上げたのが彼の音楽だったのです。(左写真:アントニオ・レイ 右側はカンタオールのペドロ・エル・グラナイーノ(Pedro El Granaino)、右写真:ダニ・デ・モロン)

ギター伴奏部門:フアン・レケーナs_IMG_0433.jpg
Giraldillo al TOQUE DE ACOMPANAMIENTO: Juan Requena
アーティストの間でも非常に人気の高いギタリスト。今回のビエナルではファルーカ(Farruca)とエル・カルペタ(El Carpeta)の出演した「Huellas」、ホアキン・グリロの「El Mar del Flamenco」、ペドロ・エル・グラナイーノ(Pedro El Granaino)、カンテのヒラルディージョを受賞したホセ・バレンシア(Jose Valencia)のそれぞれのソロコンサートの伴奏をしました。ペドロのコンサートでは客席にいたファルーカが、フアンにも熱いハレオを送っていました。

最優秀作品:「アレルヤ・エロティカ」Giraldillo al MEJOR ESPECTACULO: Aleluya Erotica
s_IMG_0292.jpgs_DSCN0547.JPG第15回のフラメンコ・ウォーカーでもご紹介した、フェデリコ・ガルシア・ロルカの「ドン・ペルリンプリンの恋」を題材にした作品。出演者は3人だけ。バイレ、ロサリオ・トレド(Rosario Toledo)、カンテ、ホセ・バレンシア(Jose Valencia)そしてギターのダニ・デ・モロン(Dani de Moron)。既にお気づきのようにホセとダニはそれぞれ個人としても受賞。そこへさらなるこの最高作品賞の受賞は、ロサリオの素晴らしいバイレあってこそ。個人的にも、もう一度でも二度でも観たい作品です。(右写真は記者会見時。監督のフアナ・カサードと)

振付部門:「ラ・コンサグラシオン」s_IMG_7910.jpg
Giraldillo a la MEJOR COREOGRAFIA: La Consagracion
アントニオ・カナーレスを招待アーティストとして迎え、ラファエル・エステベス(Rafael Estevez)とバレリアノ・パニョス(Valeriano Panos)の2人が率いる新進カンパニーの作品。ラファエルとパニョスは、映画「フラメンコ・フラメンコ」で、アルカンヘルのカンテで”グアヒーラス”を踊っていたバイラオールと言えば、思い出す人もいらっしゃるかと思います。バレリアノ・パニョスは以前はナニ・パニョスという名前で、小島章司先生の舞台にも日本で出演したことがあります。


舞台監督:フアン・クルス・ディアス・デ・ガライオ・エスナオラ(作品「ロマンセ」)(Giraldillo a la MEJOR DIRECCION ESCENICA: Juan Kruz Diaz de Garaio Esnaola por Romances)
JuanKruz-111x69.jpg前出のラファエル・エステベス、バレリアノ・パニョスとウエルバ出身の歌手サンドラ・カラスコが出演した舞台の監督。バスク地方出身で、その後スペインを離れ、ヨーロッパ各地で世界的に有名な振付家達と仕事をしてきた方です。自ら、俳優、音楽監督、作曲、舞台監督をこなし、もちろん振付家としても活躍中とのこと。

最優秀音楽部門:「ラス・イダス・イ・ラス・ブエルタス」
Giraldillo a la MEJOR MUSICA: Las idas y las vueltass_IMG_0496.JPGビエナル2日目に、アルカサルで行われたコンサートです。カンタオールのアルカンヘル(Arcangel)が、ビオラ・ダ・ガンバ奏者のファミ・アルカイ(Fahmi Alghai)率いるバロック音楽グループ、アカデミア・デル・ピアチェーレ(Accademia del Piacere)と共演。「ラス・イダス・イ・ラス・ブエルタス」とは「行って、帰って」という意味。フラメンコのカンテのジャンルにもありますが、スペイン起源の音楽も、大航海時代に人々と共に旅をし、行った先々での影響を受けてスペインに帰って来ました。

顕著な活躍をした新人アーティスト:パトリシア・ゲレーロ
Giraldillo al ARTISTA REVELACION: Patricia Guerreros_IMG_0527.JPG
最優秀音楽賞をとったコンサート「ラス・イダス・イ・ラス・ブエルタス」とアンダルシア舞踊団の作品で一際目を引いたのがパトリシア・ゲレーロのバイレでした。層の厚いスペインの踊り手の世界。その中でも、頭角を現したパトリシア。これからの活躍が大いに期待されます。

ベテランマエストロとして活躍したアーティスト:ハビエル・ラ・トーレ
(Giraldillo a la MAESTRIA: Javier Latorre)s_DSCN0689.JPG
小島章司舞踊団の「セレスティーナ」、ラ・モネタの舞台など、その円熟したアルテを舞台裏でも表でも発揮した素晴らしいマエストロです。(写真は「セレスティーナ」の記者会見時。右から小島章司、ハビエル・ラトーレ、チクエロ)

ビエナル最高パフォーマンスの瞬間:エル・ペレによるソレア(カンテ)
(Giraldillo al MOMENTO MAGICO DE LA BIENAL: El Pele por Solea)s_IMG_9521.JPG
ビエナル初日のマヌエラ・カラスコ(Manuela Carrasco)の公演にゲストとして迎えられたカンタオール、エル・ペレ(El Pele)。登場したその最初の姿は、今でもはっきりと記憶に刻まれています。屋外、アルカサルでの公演。夜空に切なく響くソレア(フラメンコの曲種の中でも、もっとも大切にされている曲)に、魂の声を感じた瞬間でした。私は後から知ったのですが、エル・ペレは体調が非常に悪く、その日の出演も危ぶまれていたそうです。小さなスツールで身体を支えながら歌っていたのは、そのせいだったのです。身体は病に冒されていようと、魂はフラメンコパワー全開。渾身のカンテで聴衆を魅了してくれました。

s_IMG_1707.jpg審査員特別賞:「ラ・プンタ・イ・ラ・ライース」
PREMIO ESPECIAL DEL JURADO: Al espectaculo La punta y la raiz.
最終日を飾ったこの作品。ラファエラ・カラスコが監督となって、フラメンコのルーツを改めて見つめ、セビージャのバイレの歴史を更新する一夜となりました。ビエナルというフェスティバルならではのサプライズもありました。前回の記事をご参考下さい。(写真:ラファエラ・カラスコ)

受賞者の皆さん、おめでとうございました!!Enhorabuena a todos los premiados!

FOTOS 舞台写真:Antonio Acedo / その他:Makiko Sakakura