バカンス?修行?フラメンコフェスティバル期間中のもうひとつの楽しみ方

IMG_0310.jpgのどかな南仏の小村での一週間のバカンス。フラメンコ鑑賞に観光にとゆったり過ごしますか?それとも観るだけでなく、自らのフラメンコ修行に専念しますか?。その両方が可能なのがモン・デ・マルサン(Mont-de-Marsan)。

スクリーンショット 2013-08-22 13.08.01.png引き続きフランス南西部のモン・デ・マルサン(右地図参照)のフラメンコフェスティバル。公演についてはまだまだ語り尽くしていませんが、今回はそれ以外の過ごし方についてご紹介しましょう。
アルテ・フラメンコ・フェスティバル(Arte Flamenco Festival)は、毎年7月初旬。基本的に7月に入っての最初の月曜日から一週間にわたって開催されます。モン・デ・マルサン自体に空港がないので、外国人には余り知られていない場所だと思います。一番近い空港のボルドーまで行き、そこからモン・デ・マルサンまで列車で行くか、シャルル・ド・ゴール空港駅発の列車でボルドー(Bordeaux)へ行き、列車を乗り換えてモン・デ・マルサンに入る方法などのアクセス方法があります。ちなみにボルドー発モン・デ・マルサン行きの列車はこの時期増便されますので、とりあえずボルドーまで行けばあと一歩は簡単です。到着するモン・デ・マルサンの駅はとても小さく、小高い場所にあるため歩いて宿泊施設に行くのは難しいですが、列車の本数が少ないせいか、到着時間にはタクシーや地区の送迎バスが待っていました。そこから見渡すと、なんと闘牛場が!そう、ここは地図でご覧になっても分かるようにスペインとの国境に近く、ナバラ州の村と姉妹都市関係にあります。フランスの首都のパリよりもスペインのビルバオ(Bilbao)、サラゴサ(Zaragoza)、バルセロナへの方が近いのです。ですから、スペイン側から入るという方法もあると思います。日本から”とても”アクセスしやすいとは言えませんが、一度村に落ち着いてしまえば、自然あり美食あり、そして都会にはない地元の人との近い距離感。フェスティバル開催中ということもあってか街全体に活気があり、快適に過ごせました。同じフランスでもパリに比べると物価も安いのも魅力です。(写真左は観光案内所もある広場)DSCN0775.jpg
モン・デ・マルサンには観光案内所もあり(ランド県の県庁所在地ですので)歴史あるミュージアムや自然公園などがあります。さらにワインで有名なボルドーへも、日帰りでも余裕で足を延ばすこともできました。(下の小写真)borudo.jpg
気候は陽射しは強いものの、初夏の爽やかな青空を満喫できます。しかし、現代の気候に油断は禁物。今回の滞在中にも気温が激しく落ち込んだ日があり、その日に着いたアーティストは、余りの寒さに長袖の上着を買いに走っていました。

バカンス情報については、あとは村の公式サイトにお任せして、次は「せっかくだから日常を忘れてフラメンコのレッスンに打ち込んでみたい!」という殊勝な練習生の皆さんへの耳寄りな情報です。
以前の記事でも書きましたが、このフェスティバルでは様々なフラメンコのレッスンが受けられます。受講生には宿の斡旋や少し離れた会場への送迎バスも出ているとのこと。今回は取材のみでレッスンは受けませんでしたが、日本への紹介ということでクラスを見学させていただきました。

DSCN0991.jpg今年は、バイレ14クラス、ギター5クラス、カンテ3クラス、パルマ4クラス、カホン3クラス、さらに特別クラスとしてディエゴ・アマドール(Diego Amador)によるピアノのクラスも開催されました。講師には、フェスティバル期間中の劇場や屋外施設での公演に出演するアーティスト達があたります。ちなみに今年はバイレではファルキート(Farruquito)、ラ・モネタ(La Moneta)、フアン・パレデス(Juan Paredes)、左写真で踊っているヘスス・カルモナ(Jesus Carmona)、オスカル・デ・ロス・レジェス(Oscar de los Reyes),カルメン・ラセロ(Carmen Rasero)、ロルデス・レシオ(Lourdes Recio)、リディア・バジェ(Lidia Valle)ら主にセビージャで活動してる踊り手達。カンテのクラスの講師には、ホセ・バレンシア(Jose Valencia)、アリシア・ヒル(Alicia Gil)、エバ・デ・レブリハ(Eva de Lebrija)。ギターにはカンテ伴奏、バイレ伴奏用のクラスもありました。(右写真はオスカル・デ・ロス・レジェス)DSCN0784.jpg
レッスン代はバイレの入門/初級が110ユーロ。中級/上級140ユーロ。ファルキートクラスが180ユーロ。その他のクラスは110ユーロです。
各分野とも入門、初級、中級、上級などのレベル分けがありますが、実際にはそんなに厳密に区別されていないのが現状のようです。自分の受けたい先生、受けてみたい曲種、そして受けられる時間帯で選んでも良いと思います。何よりも大切なのは、講師となるアーティストへの敬意と「教えてもらおう」という受け身ではなく、自ら何かを学ぼうという姿勢。そうすれば毎日が新しい発見の連続で、クラスの1時間半はあっという間でしょう。クラスはスペイン語で行なわれ、フランス語の通訳などは入りませんので、スペインでレッスンを受けるのと同じ条件です。

レッスン会場は、地元の音楽学校や文化施設を利用しており十分な広さで快適に受講できます。第30回の記事で、ファルキートのクラスが開催された文化センターのスタジオの写真がご覧いただけます。クラスの様子にも触れておりますので、ご参考までに。もうひとつの会場である音楽学校でのレッスンについても少しご紹介しましょう。clasedejuan.jpgクラス最終日に伺ったのは、中級のタンゴのクラス。左の写真がその教室でクラスは始まる前のひと時の様子です。生徒さんは、10代からおばあちゃま世代と幅広い年代層で、全部で25人くらい。レベル「中級」の基準は各自の習ってきた環境によって違うと思います。経験年数ではかったとしても、毎日練習できる環境か、週一回のレッスンかでは違いは出てくるものです。先にも述べましたが、1週間というような短い期間のクラス(=クルシージョと呼んでいます)で、しかもフェスティバルの主催ということであれば、一通りの足の打ち方と腕の動きを習ったことがあり、周りの人の迷惑になるような行動をとらなければ、出席することは可能です。ちなみにこのクラスの先生も「どんなレベルの人が来てくれてもいいよ。踊りたいという気持ちがあれば。」と。さて、ここで注意ですが、この「周りの人の迷惑になる」というのは、振付けやパソ(ステップ)ができないということでは決してありません。例えば、できないからといってその場に座り込んだり、前後左右のクラスメートとの距離感を無視した行動をとったりすることです。また先生や生徒達の集中力を遮るような行為や私語はもってのほかです。一般にお行儀が良いと言われている日本人でも、残念ながらスペインでのクラスで、超大御所アーティストである先生が、自分の体験談を通して何かを伝えようと話している目の前で、屈伸運動をしたりストレッチをはじめたりする人がいました。先生に注意されなければいいというものではありません。paredes2.jpg
さて、クラスに話を戻しましょう。クラス最終日だったため、一通り最初からおさらいをすると、ウォーミングアップではおぼつかない動きをしていた人でさえも、ちゃんとついていいっていました。動きを覚え、音楽と共に動けるようなれば、あとは時間をかけて、繰り返し練習し、パソ(ステップ)や腕や身体の動きを磨いていくことができます。短期間でここまでできるとは立派!クラス後半には、カンタオーラのアリシア・ヒルが登場。迫力のある生歌で踊れるという嬉しいごほうび付きのレッスン。最後は、生徒一人ひとりに修了証が渡され、輝く笑顔と共に賑やかにクラスは終了しました。この成果は、担当講師フアン・パレデスのユーモアを交えた、的確な指導によるところも大きいかと思います。バイラオールとして30年のキャリアを持ち、クリスティーナ・オヨス舞踊団で活躍し、95年には新宿エル・フラメンコ (EL FLAMENCO)にも出演。していたアーティストです。リンクさせていただいた動画は画質的には見づらいですが、ショーの質は高く品格のあるバイレ。是非ご覧下さい。翌日行なわれた路上ブレリアレッスン(写真右上)では、全く踊ったこともない人も含めて、まさに老若男女入り混じった集団を前に、パルマの打ち方、一節のカンテ、そしてブレリアの振付けを施し、その指導手腕を発揮していました。(右上写真:左側のジーンズ&黒Tシャツの男性がフアン・パレデス)

diego.jpg前回ご紹介したディエゴ・アマドールの協力を得て、初めてフラメンコピアノのレッスンにも同行させていただきました。午前中は講堂で全員が集まってのクラス。そして午後は生徒一人一人に1台ずつピアノが与えられ、ディエゴが生徒のいる個室を回って個人レッスンをしていきます。こちらもレベルは様々。会場となった音楽学校の先生もいました。フラメンコは初めてということで、コンパス(フラメンコの曲を構成するリズムパターン)のつかみ方に苦労されていました。万国共通、最初はここからなんですね。
生徒達はとても積極的で、間違いを恐れて「固まる」ということはありません。ディエゴは各生徒のつまづいているところを丁寧に、何度も教えます。中には、習いに来たというより、自分のピアノをディエゴに聞かせに来たのかなと思うくらい、課題曲以外も弾きまくる生徒もいました。それを遮ることなく自由に弾かせていると、幾らピアノがうまく弾けても「フラメンコ」と呼ぶには欠けているものが自然と浮かび上がって来ます。ディエゴは、最初から結果を言ったり、「これはこうしろ」とその人の個性を打ち消したりはしませんでした。突っ走っている本人自身に、はっと気づかせる。そういう懐の広さを感じました。
doresumdm.jpgかつてバイレを習っていた時期があり、30人近くのスペイン人アーティストのクラスをスペインで受けた経験があります。そのほとんどが前出の”クルシージョ”という形態の短期間コースでした。いろいろな場所で、フェスティバル主催のものや個人のアカデミアの夏期コースなどと様々な環境でのクルシージョを経験してきましたが、それらと比べても、フランスでありながらスペインと変わらぬ、いやそれ以上に恵まれた環境でクラスの提供がされていると感じました。
DSCN0757.jpgまだまだ日本からの参加者は少ないですが、インターナショナルなフェスティバルとして発展していきたいので外国人も歓迎ですよ、という地元の方々のうれしい声も耳にしました。次のフラメンコバカンス、そして修行の場の候補地としていかがですか?
(写真右上は村の中心に開設されたフェスティバル情報センター内のフラメンコ用品ショッップのひとつ。左はミュージアム脇の小道。自然の美しい村の一角です。)