今月の26日まで、大阪松竹座で片岡愛之助主演の新作歌舞伎「GOEMON」が上演されている。
この作品、なんとフラメンコとのコラボレーションで、
踊り手の佐藤浩希、カンテのクーロ・バルデペーニャス、ギターの斎藤誠(最初の4日間は木村直哲)が、連日出演。
さらに、佐藤の振付・指導で愛之助はじめ歌舞伎役者たちが、フラメンコを踊っているという。


歌舞伎とフラメンコのコラボ? それもフラメンコの側が仕掛けたのではなく天下の松竹作品で!
これはいったいどんなことになっているのかと、先だっての16日土曜日に、行ってきました、大阪へ。
まずは、あらすじ。「GOEMONとは、ご存知、天下の大泥棒石川五右衛門のこと。
なんとあの五右衛門が、実は、スペインの宣教師と武士の娘との間に生まれたハーフだったという設定だ。
だが、キリスト教禁止令が出され、父は国外追放に、母は時の将軍秀吉に召され、無情にも引き裂かれる家族の哀切の物語。
その流れの中で、大泥棒となったGOEMONが、父に習ったフラメンコを出雲の阿国に教えるということで、フラメンコが登場する。
この奇想天外な話が、緻密かつダイナミックな舞台作りと芸達者な役者たちの熱演で
みごとな一大スペクタクル作品に仕上げられている。
メタリックな仕上がりの超モダンな美術と、それを様々に照らし浮かび上がらせる照明。
せり、すっぽん、回り舞台など歌舞伎ならでは舞台装置が駆使しされた大胆な演出、展開。
2階席まで使って、所せましと縦横無尽に客席を駆け巡る役者たち。
歌舞伎が本来持っている大胆な演出と斬新な試みが次から次へと波のように押し寄せ、観客の熱気はおのずと上がって行く。
フラメンコへのアプローチも期待以上に本格的で、ていねいだ。
芝居の一部、二部の両方で、佐藤浩希は数分にわたってヌメロを一曲踊る。
この時、歌い手とギタリストも舞台に一緒に登場し、フラメンコ本来のスタイルで上演される。
佐藤に「役柄」はなく、父の国の象徴、親子の熱い絆と激情の象徴、イメージとしてのフラメンコ。つまり、まんまのフラメンコを佐藤は踊る。
型の連続ともいえる歌舞伎の動きに囲まれた中で
フラメンコの型を突き破るがごとく(モデルノという意味ではない)、激しく実直に舞う佐藤。
客席からは、大きな拍手が沸き起こり、「佐藤!」の大向こうが、飛びかった。
父が五右衛門にフラメンコを教えるシーン、
スペインの居酒屋での踊り子たちのシーン、
スペインと日本、遠く海を隔てた父子が求めあうイメージ・シーン、
五右衛門がお国にフラメンコを踊るシーン、
阿国一座の群舞シーン......。
さらにカンテ、ギターと邦楽が、掛け合いをしながら展開される音楽のみのシーンまであって、
フラメンコがらみのシーンは、ゆうに30分を超えていた。
それらはもちろん、
フラメンコの本質がそこにあるとか、
通が見て、フラメンコとしての技術的完成度に満足するということではない。
そもそもそういうことを目指した作品ではないのだ。
だが、完璧とも言うべき様式と技と伝統をもち
日本のお家芸として君臨する歌舞伎が、
ここまで大胆に、丁寧にフラメンコに心を寄せ作品として消化吸収させる、
その懐の深さと手腕に、私は、心を打たれた。
何より、ほぼ100%歌舞伎ファンで埋め尽くされた観客の興奮が、
この作品の成功をものがったていた。

愛之助は、なぜフラメンコだったのかという問いに、こう答えている。
「今は新しい試みでも、100年、200年と上演され続ければ、これも古典になります」。
いやぁ、歌舞伎ってやっぱりすごい!
こんな作品を創り上げた、愛之助さんに、
役者とスタッフの皆さんに、
そして天下の松竹さんにオレ!
もちろん、
またしても果敢なチャレンジ挑んだ佐藤をはじめとするフラメンコ陣にオレ!
この大舞台の経験は、演出家・振付家としての佐藤の今後に、きっと大きな影響をもたらすことだろう。
ぜひ、東京でも上演してほしい!!
余談ながら、歌舞伎の舞台でありながら、
思わずオレ!と叫んでしまったのはいうまでもない。
※この作品は、毎年徳島県の大塚国際美術館で上演される「システィーナ歌舞伎」の3作目の作品として昨年初演されたもの。
初演に際しては、フラメンコは小島章司の出演・振付・指導のもとに上演している。

3つの壁の乗り越え方

【フラメンコに行き詰まりを感じている方へ】

フラメンコ(カンテ/踊り/ギター/他)が難しい...
先行きが見えない...
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