ISSEYのフラメンコ一人旅

吹き抜ける乾いた風、コンクリートジャングルに漂う深い哀愁。
人々の欲望うづまく眠れぬ街「不夜城」、歌舞伎町。
午前0時を過ぎた頃だろうか、私は一軒のバーに立ち寄った。
「カランカラン」、重い回転扉を開いた。
まるで自分の心のドアを開けるかのように、静寂は打ち消された。


「いらっしゃい」
バーの中から初老の男が呟く。
男は、もう何年も愛というものに見放され、
ただ欲望という名の悪魔にとりつかれた、そんな印象だった。
私はカウンターに座り、アイルランド産のシングルモルトをオン・ザ・ロックで注文した。
葉巻には、このピートがたまらないからだ。
突然、耳慣れた曲が流れてきた。
「シギリージャだ」
私は一人で酒を飲む時、よく古びたスペインの遺産ともいえるこの曲を聴く。
まるで大藪春彦のハードボイルド小説の主人公になったかのような錯覚を覚えるからだ。
「野獣死すべし」、「よみがえる金狼」など
70年代当時、角川ハードボイルド映画には、よくフラメンコが使われていた。
フラメンコこそハードボイルドのBGMであると、今も私は確信している。
初老のマスターはこう切りだした。
「お客さん、この音楽はなんという音楽なんですか?」
愛に裏切られたこの男にフラメンコはあまりに官能的であるに違いない。
「フラメンコ」
私は切り返した。すると、
「あっ知ってます。フラミンゴって、薔薇くわえてオッレ~!っていうやつですよね?」
チャンチャン! ドッカーン!
ボケッ! 薔薇くわえへん!
オッレ~! やのうてオレ!ぢゃ!!
フラミンゴちゃう、フラメンコや!!
お前の耳の穴、ドライバーでこじあけたろか?
え~、お初でがんす。
ワシ、いや私はフラメンコギターを志し、フラメンコ音楽芸能が大好きなへその曲がったとっちゃんボーヤ。名はISSEY(イッセイ)と申します。
日本のヒターノ地区ともいうべき、通天閣のおひざ元西成の出身ですわ。
ひとつよろしゅう(ベンベン!)。
この間、こんな体験しましたんですわ。
まぁ、元々は10代の頃からロックドラマ―をやっておりまして、
そのうちパーカッションにも手を出し、
ロック、ジャズ、サルサ、ボサノバ、R&B、HIPHOP、レゲェなど、
手広くやっている音楽野郎ですわ。
一時期、カホン、ジャンべ、ボンゴ、コンガなどでフラメンコもやっとりました。。
そん中にスティールパンちゅうドリニタードのパーカッションがありましてな。
これがワシの心をコチョコチョくすぐりますのんや。
グアヒーラなんかで使いますと非常に官能的な音を出して、たまりまへんで。
せやけど個人的にフラメンコにパーカッションは必要ないと思いましてな。
ギターを志すことになったんですわ。

http://paulanna2011.jimdo.com/_Live@shibyatakeoff7crossroadで、わしのスティールパンの音聞けまっせ。

子供の頃からフラメンコの音が好きでしてね。
当時「Gメン75」でフラメンコの踊り手が殺人犯ちゅうんがありましてな。
たぶんソレアやったと思うんですが、
最後ブレリアに入ってメロディが島崎由里の「面影」になった時は興奮しましたわ。
で、フラメンコ学ぶためにどうしたらいいのかわからず、踊りから入門しましたがな。
セビジャーナス踊るときの男女の距離が遠いのがいやで、アルゼンチンタンゴも習いましたわ。
そしたら、みなさんフラメンコとアルゼンチンタンゴがごっちゃになってましてな。
「アルゼンチンタンゴって薔薇加えてバンバンするやつでしょ?」
 って何度言われたことか。薔薇くわえへん! パルマも打たへん!
当時「あばれはっちゃく」ちゅーテレビがドラマがありまして、
メインテーマが「タンゴ・むりすんな」ちゅう曲で薔薇くわえてパルマ打ってたんですわ。
それでちゃいまっか? フラメンコも薔薇くわえるイメージがあるさかい。
まぁ、そんなこんなで、フラメンコの片隅ではぐれもんの一人旅を続けてまんがな。
でも、フラメンコって、難しいでんなぁ。
フラメンコの世界て、けっこうややこしいでんなぁ。
どないせいっちゅうんぢゃ? 今もわからんことだらけですわ。
でもな、わしフラメンコ好きですねん。
どうしてもつかみたいんすわぁ。
フラメンコだけみとると、なんやわけわからんことがぎょうさんあるんやけど、
わし、一見フラメンコとは関係あらへんもんの中に、フラメンコを感じることが、ようあるんですわ。
そんなはぐれ者の旅の途中の発見やボヤキ、ここに書かしてもらいます。
Issey流の切り口で、フラメンコにアプローチしてみますわ。
腹からシャウトしますんで、よろしゅうに。
こんでも、お遊びは結構やってまっせ。
布袋寅泰P「裏切りゴメン」で薔薇くわえてグアヒーラ踊ったこともありましたわ。
アバニコだけ写って顔はカットやったけど。
「湘南の風」PV<黄金魂>では、泥の中で、ブレリア踊りましたわいな。
泥でっせ! 裸足でっせ! 滑りまっせ! 4拍子でっせ! 一人アップで写ってましたわ。
最後に女子の皆様、セビジャーナス踊るパサーダで
男子の手が触れても引かんといてや。
わしいつも「近!」っていわれるさかいシュンとしてまんがな。
パレハは絶対、近いほうがカッコええでっせ。

アクースティカ倶楽部

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アクースティカ倶楽部は、仲間とともにフラメンコの「楽しさ」を追求する、フラメンコ好きのためのコミュニティです。