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フェスティバル2日目は、待ちに待ったイスラエル・ガルバンの「黄金時代」が上演された。
大きな舞台に、踊り手(イスラエル)、カンタオール(ダビ・ラゴス)、ギタリスト(アルフレッド・ラゴス)の3人のみ。
美術も、大がかりな演出も一切なし。
シンプルな照明が、唯一無二の踊り手イスラエルを淡々と照らす中、
彼の全身からは、よどみないコンパスが、波のように繰り出される。
かつて見たことのない、かつて聴いたことのない、
さまざまなフラメンコの言語が、
イスラエルの身体からは、次から次へと溢れ、
カンタオール、ギタリストと濃密にコミュニケーションする。


イスラエルは、フラメンコから前近代の鎧(みなぎる情熱とか、土臭さとか、血とナイフを連想させるフラメンコのイメージとか)を削ぎ落とした。
それは、ある意味フラメンコの"印"のようなものだから、
これ以上の破壊行為はないと言ってもいいだろう。
だが、彼はフラメンコを再構築する。
一見クールで、デジタルチックで、時に滑稽でさえあるその動きは、
フラメンコというより、コンテンポラリーといいたくなるほど、スタイリッシュだ。
これがフラメンコ? だれもがそういいたくなるほどの前衛。
だが、そこで表現されるのは、まさに"現代"である。
いや、ポスト・モダンである。
ポスト・モダンが登場してすでに30年近くの時が流れている。
そして、ポスト・モダンは、その辿りつくべき行き先を見失っている。
ますます混迷を深めていく時代。行き場所を失った魂たち。私たちは出口の見えない迷路の中にいるかのようだ。
そこにイスラエルが描き出すのは、大きな海だ。
カンテとギターと共に、寄せてはかえす、コンパスの海だ。
そしてそれは、共生の海だ。
よどみないコンパスは、尽きることのない命の讃歌を奏でる。
あぁ、私たちは、こんなにも自由なのだ!
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イスラエルは、本国スペインでも作品を発表するごとに、
賛否が渦巻く異端児である。
前近代への憧憬がフラメンコ人気の大きな理由の一つと思われる日本でも、
彼を理解しない人は数多くいた。
だが、この日イスラエルは、
観客の大きな喝采の中で、ステージを終えた。
天才イスラエルに、皆が熱狂、そこに疑いのの余地などもはやなかった。
難解なテーマ設定もなく
生身でフラメンコの深窓へと突き進む作品「黄金時代」は、
日本のフラメンコファンの多くの胸を鷲掴みした。
よりストレートに、彼のフラメンコが体感できる作品だったことの意味も大きかったように思う。
イスラエルは、時にカンテに伴走者のように寄り添い踊った。
カンテ・ギター、バイレ、これほどの三位一体を、私は経験したことがない。
上演中は、観客は皆、かたずをのんで、ステージを凝視し続けた。
途中拍手が沸き起こったり、オレ!が飛び交う、いつもの上質のフラメンコ公演の会場とは、少し趣が違った。
多くの観客は、初めてのフラメンコ体験に、どう相対したらよいのか、戸惑いもあっただろう。
そりゃそうだ、あの超絶フラメンコ、超絶コンパスに同時通訳みたいな反射神経で反応するのは至難の業だもの。
だが、感動は、観客の中で、じわじわと静かに蓄積されていったのだと思う。
ステージが終わるや否や、客席は、熱い喝采の海と化した。
それは、天才が受け入れられた歴史的瞬間だ。
唯一無二とは、イスラエルのことだ。
そう、ポスト・モダンを表現する唯一無二のフラメンコ・アーティスト、イスラエル。
この人は、いったいどこまで私たちを連れて行ってくれるのだろう?
フラメンコの真の革命者イスラエル。
彼はフラメンコ新たな命を吹き込んだ。
イスラエルによって、フラメンコはより多くの語彙を獲得したのだ。
この日、私のイスラエルへの想いは、確信となった。
写真 青柳裕久
■フラメンコ・フェスティバル・イン・東京 2日目 「黄金時代」
日時:(10月13日(日)14:00開演 
場所:新宿文化センター
バイレ:イスラエル・ガルバン
カンテ:ダビ・ラゴス、マティアス・ロペス 
ギター:アルフレド・ラゴス
■演目
1. Aurreski
2. Pregon
3.Morente
4.Solea
5.Caña
6.poli cana
7.Solea por Bulerias
8.malaguena
9.Belmonte
10.Fandagos Naturales
11.Fandangos
12.Tonas
13.Seguirilla
14.Farruca
15.Tientos
16.tangos
17.Alegrias
18.Bulesias

3つの壁の乗り越え方

【フラメンコに行き詰まりを感じている方へ】

フラメンコ(カンテ/踊り/ギター/他)が難しい...
先行きが見えない...
壁を感じている...