大沼由紀舞踊公演「Seno Flamenco」まで一か月を切ってしまった。今年は私同様長年フラメンコを追い求め続ける日本人の仲間と、日本に活動拠点を移したカディス出身の歌い手クーロ・デ・ラ・チクエラがメンバーだ。去年はヘレスから4人のヒターノを招聘し、彼らから必然的に湧き上がるフラメンコを受け止め、溺れそうになりながらもなんとか泳ぎ切ったという感じだったが、今年はさて、どんなことになるだろう。

クーロは鹿児島在住なので、先月と今月それぞれ2日間ずつ上京してもらったのだが、先月はまずは初対面同志、お互いを知るために時間を過ごした。公演で何をやるかなど考えず、ただしみじみと彼の歌を聴いたり、彼にソレア、シギリージャ、アレグリアスなど歌ってもらって私が全力で踊ったり、西さんに「歌いたいものを歌って!」と言って歌ってもらったり、挙句の果てには井山直子ちゃんにも「歌えー!」とけしかけたり。

そんなふうに過ごす時間の中で、公演のイメージが少しずつ湧いてくる。うっすらと何かが見えて来た段階で、クーロは鹿児島へ帰って行った。

クーロ今月の上京の前には、私の中でおおよその流れが出来ていた。うまくいくかわからないけれど、やってみよう。アイデアを説明し練習が始まると、クーロがスッと立って歌い始めた。先月は聞こえなかったものが聞こえはじめる。あー、そうだ、カンテを踊る時のこの感触だ。動く瞬間を、動き方を、カンテが誘っている。この糸を辿れば、踊りが生まれる。

つくづく、こういったフラメンコの踊りは、一般的に言うダンスとは大きく違うと思う。どういう身体表現をするかが最初にあるダンスと違って、私達にはカンテがある。そしてそれを支えるギターがある。その音が持つ世界と身体の世界が一致しなかったら、どんなに素晴らしい身体使いをしてもつまらない。

少しずつ、少しずつ何かが開かれていく。クーロが私の目を見て話しかけた。
「ユキ、こんなレトラがあるよね。Con los ojito senas・・・」
(おっ、知ってるぞ!)急いで私が続ける。
「Que en algunas ocasiones・・・」
2人一緒に「los ojos sirven de lengua」(笑顔)
(時に目は言葉になる、という意味)

 カンテの微細な襞を聞き取ろうと、ついつい目線が下になっていた私に、なんと粋なはかない! じわっとあったかい気持ちになる。

商業的な匂いが皆無のクーロの歌は、私達に改めてフラメンコの魅力を再認識させ、たっぷりと栄養を降り注ぐよう。また私達日本人の熱いアフィシオンは彼を奮い立たせ、気が付くとお互いを尊重し合える仲間になっていた。

11月15日。日本人5名と鹿児島在住のスペイン人1名というユニークなメンバーで、どんなフラメンコが生まれるのか。何が起きるのか。何を起こせるのか。

目指すはSeno(懐、奥深いところ)。  
フラメンコの懐は、実は意外に心安らぐ場所なのではないかと思っています。

Seno_Flamenco公演チラシ?大沼由紀舞踊公演「Seno Flamenco」
 日にち 11月15日(水)
 場所  あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術センター)
     ・東京メトロ有楽町線「東池袋駅」直結
     ・JR「池袋駅」東口グリーン大通り直進徒歩10分
     ・都電荒川線「東池袋四丁目駅」徒歩2分
 料金  6,500円(当日7,000円)
 出演  大沼由紀(バイレ)
     Curro de la Chicuela(カンテ)西容子(カンテ)
     山内裕之(ギター)あいしまなおき(ギター)
     井山直子(パルマ)

 
【チケット取扱い】Confetti(カンフェティ)
 Confetti-web.com/senoflamenco
0120-240-540(オペレーター対応/10:00-18:00)
 (webからは座席がお選びいただけます)

談笑するメンバー

アクースティカ倶楽部

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