高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

2014年1月


フラメンコ三昧の秋(3) バイレの巻/マヌエル・リニャン&ベレン・マジャ


昨年の10月にフラメンコフェスティバルin Tokyo(10/12,13,14)という催し物がありました。「いろいろとフラメンコ三昧の秋」の幕開けはこの公演でしたが、書きかけのまま、あっという間に3ヶ月以上も経ってしまいました。遅ればせながら、あの時のスター達との簡単な思い出話などを混ぜて振り返ってみたいと思います。

belenmaya.png第1日目、最近著しい活躍が目立つマヌエル・リニャンと偉大なアーティスト、マリオ・マジャの血を引くベレン・マジャ。わたしにとって同じグラナダ縁のこの2人の公演、観に行かない訳には行きませんでした。
ベレンのお父さん、マリオ・マジャとはよくご一緒させていただく機会もありましたが、ベレンとは全然なくて今回初めてその人柄に接し、あのカラッとした雰囲気がとても気に入りました。踊りは、本人もちょっと嘆いていましたが、何かが気になって引きずられるような重さが動きに見られたような感じがしないわけではありませんでした。
今回の出し物は「トラスミンTrasmín」、それって何?きっと「Transmisión伝えること」から来ている言葉じゃないですかね?ベレンは父のマリオ、マヌエルはグラナダのアイレなど、という風に単純に考えていました。確かに、ベレンは父マリオへのオマージュ(オメナッヘHomenaje)の意味でマルティネーテを踊ったということです。パンタロンでイスに座ってサパテアートから始まり、彼女の想い入れが十分感じられました。そういうこと以外、この作品は深く考えなくても、何か息があったマヌエルとベレンが、2人で壮麗なフラメンコのスぺクタルを見せてやろうではないか!といった意気込みで、取り組んだ舞台だったように思います。それはそれとして、何といってもマヌエルの演技が多くの観客を楽しませ、圧巻でした。マヌエルの演技は幸い昨年の夏に観るチャンスが数回ありましたが、この作品では皆さんもご存じのように出だしにバタ・デ・コーラで登場!カンティーニャスをベレンと踊りました。

manolillo.png実は私奴、マヌエルを13年前に自分の公演に招聘しました。アレグリアスをやはり出だしに2人で踊ることになっていて、マヌエルがその合わせ練習にグラナダの私のスタジオに来た時のことです。彼はまだ17歳でした。マヌエルはわたしがちょっといないすきにわたしの練習用のバタをちゃっかり着て、ヒューヒューとコーラを振り回して踊っていました!何の抵抗もない様子、ただただ好きなんだということでして......でも、それが立派なさばき方なので感心してしまったのであります。好きこそ物の上手なれ、まだあどけなさが残っていたマノリージョ君でしたが、今は立派なアーティストに育ってくれて嬉しい限りです。

マヌエルのバタさばきは今回が初めてではないようですが、今回は、男性用衣装のままのクエルポで、下だけがバタ・デ・コーラ(全部女装はしない)なんとも不思議な雰囲気が漂っていました。近年は男性がバタを着て踊るのを見かけるようになりました。ショー的に魅せる目的なのか、何なのか?マヌエルの場合、きっと彼の中に何らかの必然性があってのバタの着用なのだと思いますが、これもまたひとつ彼の特技として賞賛したいです。それから、他の踊りもいいとこだらけでしたが、タンゴで見せた古のアイレ!これは誰もに受けましたね。サクロモンテのおばさん達を彷彿とさせるあのマルカール、腰の動き、表情......オレ!でしたね。因みにそのサクロモンテのおばさん達もだんだん減って来てしまいました。もうマヌエルが今回見せてくれたようなアイレをもったおばさんは殆んど現存していません。だから、トラスミン、意義ありました。楽しめました!


                                        (続く)


はじめに!(このブログに寄せる新たな思い)   


2014年あけましておめでとうございます。今年も皆さんにとって健康で仕事にも恵まれ、
フラメンキートで楽しい年になりますようお祈りいたします。

さて、この「スペイン、グラナダ、きもったま」も、この3月で1年を迎えます。
ですから、今回のタイトル「はじめに!」というのもおかしな話ですが、
何でここでまた「はじめに!」なのかと申しますと、これからどんなブログにしたいのかが
自分の中で固まり始め、それを新たにお伝えしたいからです!

スタート時点では、とにかく私の「スペインの歩み」を書いていこう!と意気込みましたが、
そのうち、現在の自分の活動状況や、昨年末にはイベントなどのレポートなどを書いたりと、
カテゴリーが増えてきてしまいました。そして、「スペインの歩み」が、
かなりゆっくりペースになってしまっています。楽しみにしてくださっている方には
申し訳ありませんが、まぁちょっと聞いていただけますでしょうか。

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「スペインの歩み」には、今勉強している研究生の皆さんにも
共通するテーマがあり、何か後進の方々へ参考になれば嬉しいのですし、
なにより私自身が楽しく書かせていただいています。
このブログを始めた頃は過去を思い出すことで頭がパニック状態になったりしましたが、
私にとっては再勉強の意味、老朽化した私のエンジンが蘇るように!
などの希望の意味もあるので、是非続けていきたいと思っています。
ただ、物書きではない私にはどうしてもまとめるのに時間が掛かってしまいます。
タイムマシンは、今まだセビージャで留学生活を始めたばかりの頃にいまして、
グラナダに到着するのは夏以降になってしまいそうなのです。

このところブログのカテゴリーが増えてきてしまったのは、
タイムマシンでのんびりと過去のことを振り返るのもいいけれど、日々新しい変化が
生じている今のフラメンコ界を見ていて感じることや、踊り手として思うこと、
教えていて思うこととか、良いことも、これちょっと問題かもと思うこととかもあったら、
何でもいいから書いてみたいと思うようになったからなのです。

近年、目まぐるしく発展したフラメンコはとても多様化しています。
フラメンコを勉強するのに便利な環境になったことは嬉しいですが、今のネット社会や
グローバルな指向、フラメンコというレッテルでの商業化などが、いいような悪いような、
私が大切にしてきたフラメンコの素朴な世界を妨害し始めているような......。
なんだか考えさせられることも多々あって、のんびり自分だけの小さな世界に閉じこもって、
フラメンコを楽しむことができなくなりました。

多くの人を感動に導き、心を癒し、明るい希望を抱かせ、
パワーを与えてくれるフラメンコ。みんながフラメンコの恩恵を被っています。
各人にそれぞれのフラメンコがあって、フラメンコ感も、その好みや趣味も、想い入れも、
フラメンコとの付き合い方も人それぞれでしょうが、
実際のフラメンコ学習の面白さ、楽しさだけでなく、その素晴らしいフラメンコを
もっと身近に、大切な「友として生きる」ことを実感していくことは、
私にとって重要な、生きていくためのエネルギーとなっています。
そして、幸せなことだと思います。

私もフラメンコの恩恵を被って生きている一人なのです。
フラメンコに関わって生きて行くなら、周りの人達とフラメンコを共有していることを認識し、
お互いがそれぞれの持つ幸福感を理解し、分かち合い、時には慰めあう、
そんな協調の気持ちも大切ですよね。そしてお互いがいい意味で刺激し合って生きていく......
このブログを通して、自分ももっと仲間に入っていきたい、そんな風に思うのです。

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人間しゃべりたくなる時ありませんか?そんな時も、このブログがあると助かります。
私にとって、大仏のようにでんと構えているのがフラメンコです。
いつでもその微笑みで私たちを見守っていてほしいものです。
だから、失礼にならないように!と、ちょっと慎重な構えでもあります。

そして正直な話、私にとって公の場でしゃべったり、書くのは難し~いのであります。
何が何だかわからなくなってしまう時があって、まとまりが付かなくなってしまいます。
結局よくわかってなかったということかな?などと自己嫌悪に陥ってしまったりもします。

でも、乗りかけた船です。これを機会に自分の言葉で、自分らしく書きながら、
考えをまとめて自分なりの結論を見出して行きたい!そういうことなのです。
ただ、わからないことはわからないとハッキリ言うしかありません。
皆さんへ意見を求めてもいい、提案してもいい、そんな気持ちでいきたいです。

以前、「周りに感心ばかりしていないで、私にも発信できることがあるんじゃないか、
わたしだからできることを見い出していけたら......」
と、このブログで書いています。その発信って意外と難しく、ではどうすることが発信なのか?
私だからできることって、そんな自信はあるのか?などと考え込んだりしましたが、
少なくともこのブログを通して、もっとバラエテーに富んだテーマで
フラメンコやそれに関わることを素直に考えていく、そんなことでいいのかもしれないな、
気張らず行きたい!そんな風に思っています。

今年はここ数年実現できないでいることの1つでも実現したい、しなければならない年です。
そのために頑張ります。それが何であるかは、またこのブログでお伝えできれば嬉しいです。

しかしあれこれ言ってしまったけれど、今の私はポンコツなのにうまく作動するのかな~。
おどおどしたって始まらないですね! ¡Vamos allá!(Go!)

今年もよろしくお願いしますね!