高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

春のフラメンコ、ディエゴ・カラスコ他


グラナダの街に、ここ数年タブラオが増えました。観光客が押し寄せるグラナダ。アルハンブラ宮殿には当日急に思い立って行ったって、チケットは売り切れで入場できない状況です。観光客目当てのタブラオが増えたのです。土地の人には高い価格です。でも中には、入場料が比較的安いけどタブラオとは言い難いお店などでもフラメンコをやっていたりします。タブラオの出演者は様々ですが中には中堅のいいアーティストもいたりします。

flamencovienedelsur.pngタブラオではなく劇場で観るフラメンコといえば、毎年、2月~5月の月曜日に平均月2~3回ぐらいのペースでフラメンコ・ビエネ・デル・スルFlamenco viene del surというコンサートがテアトロ・アランブラTeatro Alhambraであります。これはアンダルシア全体でやっているようです。グラナダでは合計10コンサートぐらいはあって、全部観られるボノBonoを買えば安く済むのが有り難いですし、グラナダ以外の人気アーティストが中心に多く出演するのでフラメンコファンには嬉しい内容なのです。ですが、今年のプログラムは例年に比べてちょっと寂しいように思いました。大物のアーティストの出し物が少ないのです。予算がないのでしょうか?
それでも、いままで、マイテ・マルティンやパコ・セペーロ、ベレン・マジャなどが出演しました。私がグラナダ到着したのは3月30日。楽しみにしていたその夜のレメディオス・アマージャとカルメリージャ・モントージャのコンサートがレメディオの体調不良とかで中止になってしまい、とても残念でした!めったに公演中止なんてないのですけど......。

その次の週、4月7日にホべネス・フラメンコスのアンダルシア・コンクールの優勝者のガラ(コンサート)がありました。各部門(カンテ、ギター、バイレ)の優勝者が2曲ずつ1部、2部と2回に分けて演技を披露しましたが、段取りが悪い上にすぐ終わってしまってちょっと物足りなかったです。ただ、グラナダのギタリスト、アルバロ・ペレスのギターはなかなか良かったのであります。しっかり、がんと聞こえてくる音でした。古きアイレと独自のファンタジックな世界を同時に堪能できました。

jeromo.png28日には昨年のカンテ・デ・ラス・ミーナス(Unión)の優勝者、へロモ・セグーラの唄とエドワルド・ゲェレーロの踊りのコンサートがありました。これは良かったです。サルバドール・グティエレスのギターが加わり、3人で一つの流れを作り出し、飽きさせない構成でした。やはりこのコンクールの優勝者は上記のコンクールのようにただのホべネス(新進の若者)ではない。カディス出身のエドワルドの踊りはきちんとした舞踊テクニックで、男性には少ない上体をフルに使った動きが特徴です。時々誇大な表現が見え、人によっては気に障るかもしれませんが、全体としてまとまっていて悪くなかったのであります。それと、踊り判奏もうまいサルバドールが巧みな音楽構成でうまく彼らの演技を導いて流石でした。へロモはソレア・デ・トリアーナやカンテ・デ・レバンテを沢山唄ってそれがなかなか良かったです。しっとり聞かせてくれる唄でした。3人だけの舞台なので、踊りが入った時に一人でパルマはきつそうに見えましたが、ガチャガチャしていなくてじっくり観ることができました。

グアダルーペ・トーレスさて5月に入り、最後の出し物、グアダルーペ・トーレスという踊り手の「アクエルダテ・クアンド・エントンセスAcuérdate cuando entonces」がありました。グアダルーペは過去の大アーティストが残してくれた貴重な財産、そのアルテを振り返って、そのアルマ(魂)を身体に秘めて踊りたかったのでしょうか。背景に大きなスクリーンが時々出て来て、往年の名アーティストの写真や映像が映し出され、彼らの肉声の録音なども最初に流れました。そんな雰囲気作りが先ずあって、2人の歌い手ペペ・デ・プーラとモイ・デ・モロンによる唄がとてもプーロで雰囲気がさらに盛り上がりました。
グアダルーペの踊りは特にチスパ(火花)がある訳ではなく、わりとおとなしめなモダンな踊りでしたが、ステキなパソが沢山見られました。振付がとても良かったです。久しぶりに女性のステキな踊りを堪能しました。カホンを叩く人が一人いて、かなり踊り手を助けていました。また、ギターのアントニオ・サンチェスもなかなかいい感じの音楽センスと巧みなトーケで、全体が締まりました。彼はパコ・デ・ルシアの甥にあたると聞きました。なかなかカッコいい青年、記念写真撮っちゃいました!


パトリモニオ・フラメンコ劇場で観るフラメンコは、もう一つあります。パトリモニオ・フラメンコ Patrimonio Flamenco です。毎週土曜日にグラナダ市営劇場「チュンベーラ」で、春と秋に何ヶ月かに渡ってあります。春は2月頃~6月まで、秋は10月頃~12月までです。このコンサートは主にグラナダのアーティストが出演します。
ですから私もいままで3回公演をしたことがありまして、土地のアーティストにとっては嬉しい催し物です。観る側も入場料は安いし、場所がサクロモンテなので、ちょっと歩きますが景色がいいです。帰りはアルハンブラ宮殿や、サクロモンテ、市内中心街の夜景を見ることができます。

さて最後に、4月11日にグラナダの一番大きいディスコテカでディエゴ・カラスコのコンサートがありました。グラナダのフラメンコ人、特にヒターノ達はへレス好きで、個人的に仲良いアーティストを呼んでディスコやタブラオなどで小コンサートしたりします。今回もそういう個人的繋がりがもとで実現したようです。正面のいい席はヒターノファミリー等向けのタパス付の予約席!私たち一行は座るところありませんでしたが、比較的早く行ったので、正面横の見やすい場所を確保できてよかったです。

ディエゴ・カラスコこういうコンサートはその筋では前売り券を売り出したりしますが、宣伝が一般の人にまでは行き渡らないことが多く、いったいどこでチケットを売っているのかと人に聞かれたりします。昔からスペインは直前にポスターが貼られたりして告知されるケースが多いです。今はネットで情報が伝わってきますが、うっかりすると見逃してしまったりもします。     


ディエゴ・カラスコ コンサートさて、内容は新しいCDヒッピータノHIPPYTANO のプレゼンテーションでした。ちょっと遅いかな?でも何でもいいんですね、ディエゴなら。わたしも久しぶりだったんでパルマ叩きながら楽しく観戦です。中には踊り出してしまう人も。後半、興奮しきっていたヒターナのカンタオーラがディエゴの誘いに応え、一節歌いだしまして雰囲気満点!賑やかなうちに終了しました。


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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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