高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

ビックなニエト、ある日のスタジオ・カチューチャ、そして夏のフラメンコなど


juan nieto.pngこの春のビックニュースはやはり5月末にグラナダ期待の若きギタリスト、フォアン・アビチュエラ・ニエト(名ギタリストであるフォアン・アビチュエラの孫nietoという意味の名前)の初CDが発売されたことです。グラナダの名門家系から出た新星、歳はまだ23か24です!CDはもう随分前から準備していましたが、一度できかけたのに止めてしまったりしているということで、いったいいつになったらでるのかな~と思っていました。とにかく発売には慎重だったようですが、Universalユニバーサルというなんだか凄いレコード会社が付いて堂々としたCDデビューとなりました。今、彼はCDのプロモーションなどであちこち駆け回っています。

ですので今回はなかなか会えない、会えてもホンの一時で、ろくに話もできない状態なのでした。でも日本にもプレゼンテーションに行きたいと積極的です。とにかくこのCD売れているそうで、本人とっても嬉しそう!このCDジャケットもステキじゃないですか!初CDはモダンでちょっと商業ベースに乗った感もありますが、それが逆に私にはデビュー作としての新鮮な香りに満ちていていいんじゃないのかなと思えます。これから出していく第2作、第3作がどんなものになるのか?もうその準備できているみたいですけど......凄い!何といってもステキな音楽と音色の中に、しっかりとギターの弦をかき鳴らす指の肉感が伝わってきます。聴く人への感謝とメッセージを託しています。サクロモンテに生まれ育ち、自然を愛し、ギターと戯れるように練習に打ち込んできました。小さい時から将来が期待されていたフォアン、その奥深い世界を垣間見るCDだと思います。日本発売も間近でしょう。是非買ってくださいね!


moneta1.pngところで帰国前のある日、我がスタジオにステキな訪問客がやってきました。日本でもお馴染みのフエンサンタ・ラ・モネタです。常に新しいプロジェクトをもって活動中のモネタ。最近、マドリッドのスマ・フラメンカというフェスティバルで「パソ・ア・パソpaso a paso」という作品をご披露したばかり。また「街のフラメンコFlamenco Urbano」とう今風の試みもグラナダでやったりしている。
「フラメンコ人は早起きなのよ!」と、毎朝9時からプロジェクトのための練習をやっているというが、その日は、そんな忙しい合間を縫っての個人レッスンのためスタジオを借りてくれました。
実は彼女が生まれたのは30年前に私がグラナダに移住した年なんです! 彼女にしても、エバ(ジェルバブエナ)にしても、小さい時からその優れた素質が窺われ、あっという間に一流のアーティストになってしまいました。モネタはまだ踊りを習い始めたばかりの頃、ペーニャで踊る私を見たことがあって、それは18年ぐらい前の話......あの頃から知っていますが、普段はとても気さくで庶民的、いつも気軽におしゃべりできます。
この10年ぐらいモネタはメキメキと成長してきてその活躍は素晴らしいです。エバもそうでしたが、グラナダに籠ってないんですよね。外に出て勉強し、活動してきたのです。今や彼女たちの活躍は国際的なのです。わたしはグラナダのフラメンコ界を30年見てきましたが、私には、彼女たちの苦労がわかるような気がします。私とモネタでは状況が違いますが、共通に考えさせられることも多いのです。また、モネタがえらいのは他のアーティストの舞台もよく見ていることです。誰かの舞台を観に行くと会場でよく彼女に会ったものです。人の舞台を観るのは大切、勉強になりますよね。

moneta2.pngお茶しながら久し振りに楽しくあれこれおしゃべりしましたが、私の半分しか生きていないのに私より大人のよう!いろいろ乗り越えてやってきているので、意見がハッキリしている。アーティストとしての自分の方向性もしっかりつかんでいる。人間的にも逞しいのです。踊りに出る凄味は彼女の迷いなく突っ走る生き方から来ているような、とまぁ、私は彼女に感心しっぱなしでした。
人生悩みは尽きませんが、いろいろ問題があってちょっと凹んでしまっても、凹みっぱなしではいられない。いつも前向きに、何か方法を見付けて続けていくしかないのだ!そんなことを思いました。ちょっとモネタにパワーをもらった感じの有意義な一時でした。


さて、私は予定より2週間以上も遅れて日本帰国となりましたが、6月14日にコルプスと呼ばれるグラナダのお祭り(フェリア)が始まりました。いつも移動の前後は頭が混乱するので、フェリアを楽しんでいる時間は全くありませんで、帰国直前にフェリア会場へ行って、ポルターダ(正面入口の門)だけ撮りました(下の写真)。
corpus.pngグラナダのフェリアはセビージャに比べるとだいぶスケール小さいですが、楽しみ方は同じです。カセタはプライベートが多いですが、誰でも入れるカセタもあって、セビジャーナスなど踊り放題です。お祭りの最中はフェリア会場のカセタ(皆が集まる仮設の小屋)だけでなく中心街でも催し物が沢山あります。闘牛もありますよ。


コルプスが終わると国際音楽祭Festival Internacional Musica y Danzaが始まります。7月~9月は近郊の村々で夏のフラメンコフェスティバルもあります。7月下旬から8月中旬にはロス・ベラーノス・デ・コラール、アルハンブラ宮殿のヘネラリッフェ劇場ではラファエラ・カラスコの率いる「エン・ラ・メモリア・デル・カンテ、コンクルソ・デ・カンテホンド1922」の公演が7月末~8月いっぱい1ヶ月に渡ってあります。カルメン・デ・ラス・クエバスのカルメン祭りFiesta del Carmenもあります。これらの定例のフェスティバルの他にもあれこれいっぱい催し物がありますので、夏場にこちらにいらっしゃる方はいろいろ楽しめます。詳しくはこちらで!

今回の「カチューチャ便り」は終わりの巻~

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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