高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

2015年1月


春先のフラメンコen Granada


クリスマスが終わってビジャンシーコの歌声も、イルミネーションも消えてしまったと同時に一斉にバーゲンが始まり、街なかの賑わいは以前と変わりない感じです。さて、これから春に向かって見られるグラナダフラメンコの情報などお届けします。

enrique.png2010年末に急逝したエンリケ・モレンテの貴重なフラメンコ資料・写真・身に付けていた遺品やオーディオ、ビデオなどが見られる、聴けるというファンの方には嬉しい展覧会Universo Morente. Creación y vida de Enrique Morenteが入場無料で開かれています。目を惹くのは同時に展示されているエンリケの奥さん、アウロラ・カルボネルの芸術作品で、そのため展覧会自体が更なる芸術的趣き、輝きを増しています。アウロラは踊りもうまいんですよ。でも美術の才能もあることは知りませんでした。エンリケのCDジャケットのあの絵は彼女が書いたものだったのかなどと知り、流石エンリケ・ファミリー!などと感心させられます。場所はアルハンブラ宮殿敷地内のカルロスⅤ宮殿の展覧会会場Museo de Bellas Artes. Palacio de Carlos Vですので宮殿の見学後に見られます。3月1日まで。


flamenco viene del sur.jpg1月中旬よりペーニャも再開し、2月末からは定例の催し物フラメンコ・ビエネ・デル・スルFlamenco viene del Surも始まります。今年はとても興味深く、踊りが多いプログラムです!ギターではディエゴ・デ・モロンとペペ・アビチュエラ、歌ではヘレスのお馴染みラ・マカニータ、ウエルバ出身の若きロシオ・マルケス、ベテランのエル・ペレ、踊りではパストーラ・ガルバン、イサベル・バジョン、グラナダのアナ・カリ、アナ・モラーレス、ルーベン・オルモなどのコンサートが観られます。5月11日まで。
2/23ディエゴ・デ・モロン(ギター)
Diego de Morón y Pepe Habichuela Guitarras de cal
3/2 ラ・マカニータ La Macanita(唄) Así canta Jerez
3/9 パストーラ・ガルバン(踊り)Pastora Galván ¡Pastora baila!
3/16 ロシオ・マルケス(唄)Rocío Márquez Por qué cantamos
3/23 アナ・カリ(踊り)Ana Calí P'atras
4/13 イサベル・バジョン(踊り)Isabel Bayón Caprichos del tiempo
4/20 アナ・モラーレス(踊り)Ana Morales ReciclARTE
5/4 ルーベン・オルモ(踊り)Rubén Olmo La tentación de Poe
5/11 エル・ペレ(唄)El Pele Recital flamenco


anacali.jpgさて、このフラメンコ・ビエネ・デル・スルに2回目の出演となるアナ・カリをちょっとご紹介します。ヒターノの血を引くアナは長年グラナダでは中堅バイラオーラとして活躍しています。普段はタブラオで働きながらも何かのイベントがあると積極的に参加しています。勉強熱心で長年の経験と現場で鍛えた実力の持ち主であるアナは、ここ数年創作意欲が増して来てその活動には目を見張るものがあります。数年前にはデ・コブレ・イ・ルナーレスDe Cobre y Lunaresという作品で、古のサクロモンテで踊られたいた一連の歌や踊りサンブラを自分なりに踊ったり、昨年はグラナダのアイレを盛り込んだ踊りでコルドバのコンクールに出場し、惜しくも数表差で賞は逃がしましたが素晴らしい演技を見せてくれました。今回のフラメンコ・ビエネ・デル・スルではパ・アトラスP'atrasという作品、これまたグラナダの古のアイレを振り返ることをテーマにした作品ということで楽しみです。アナは昨年来日してクルシージョも開催しています。


marioestatua.pngさて私は昨年夏に設置されたマリオ・マジャの銅像を見てきました。この銅像はマリオ・マジャの友人であり、マリオを何回も日本招聘している株・イベリア蒲谷照雄氏の切なる願いが叶い、グラナダ市、フンダシオン・マリオ・マジャ、蒲谷氏によって建立されたものです。場所はパセオ・デ・ロス・トゥリステスPaseo de los Tristesです。アルハンブラ宮殿を背にダーロ川沿いにあるこのパセオは、その昔アルハンブラの上の方にある墓地に埋葬される人々をここで見送ったと言われています。葬列がこのパセオを通って登って行ったのでしょうか。一時ここでフラメンコフェスティバルが開かれていた時もありました。バルが並んでいてグラナダに訪れたら是非行っていただきたい場所の一つです。


クリスマスのフラメンコ


puertareal.pngスペインの師走は日本と同じで募金や慈善コンサートなどの歳末助け合い運動が盛んです。そんな中クリスマスNavidadは始まり、クリスマス宝くじもありまして盛大にテレビで当選番号が決まる様子など放映されます。クリスマスイブNoche Buenaで日本のお正月みたいに家族が集まり豪華な夕食を取ったりして楽しく過ごします。クリスマスが終わるのは1月6日です。6日は東方から3人の王様Reyes Magosがキリスト誕生を祝うためプレゼントを持ってやって来るという嬉しい日で、子ども達はこの日のプレゼントを楽しみにしています。クリスマス、新年、グラナダはレコンキスタ完了の祝日と約1ヶ月の長い期間、街もイルミネーションで明るく、賑やかでお祭りムード、気分も浮き浮きして来ます。

cororociero.pngクリスマスのフラメンコといったらビジャンシーコですね。街を歩いていてもどこからともなく聞こえてきます。ビジャンシーコもいろいろありまして、一般の市民が歌うのはポピュラーなもの-例えば「ジングルベル~ジングルベル~~」のようなものです。各地方に必ずある地方合唱団やコーラス隊(左の写真)やフラメンコアーティスト......唄う人達によって雰囲気が変わってきますね。土地によって、例えばへレスにはへレスの、グラナダにはグラナダの歌があります。が、とにかく長い歴史があるらしく、昔から唄い継がれてきて各地方でその土地の人達が編曲してできてきた、そんな感じがします。同じ曲、歌詞でも歌い方、メロディーが違ったりしますので面白く、歌詞には勿論マリア様やサン・ホセなどがよくでてきます。カトリック王国のスペイン、特にアンダルシアではビジャンシーコがかなり発展している感じがします。とにかくいっぱいあって、飽きないです。3拍子でパルマ、タンバリン、サンボンバ、ガラス瓶などでリズムを取って唄うのがもっともビジャンシーコらしい雰囲気をかもし出します。ギターも加わってタンゴ、ルンバ、ブレリアなどでも楽しく歌ったり踊ったりできます。グラナダでは子供から青年などが中心のビジャンシーココンクールなども盛大に催されました。ビジャンシーコはこの時期には欠かせないのです。

peñavillancico.pngただ近年は街中を歩いていてもあまりビジャンシーコは聞こえてこなくなりました。近代化とともに失われていく年末の風情......ちょっと寂しいです。とはいってもあるところにはあるのがビジャンシーコで、それを大切に思う人達もいる訳です。またそれを歌わずにはいられない人達もいる訳です。そんな輪の一つがペーニャフラメンカです。クリスマスイブの前の週に我がグラナダのペーニャ、ラ・プラテリアla Plateriaで今年最後の催し物となるクリスマスの宴La noche de los villancicos navideños y flamencos.がありました。グラナダのビジャンシーコを若い世代に継承していきたいという願いから一昨年より開催されています。わたしはこの時とばかり参加させていただきました!この日のためにビジャンシーコの練習をしていました。この時の動画があり、それを見るとビジャンシーコがどんな感じで歌われるのか雰囲気がわかります。私もタンバリンPanderetaの叩き方や、新しい歌などちょっと教わったりしました。本番は風邪気味、声が出なくなり唄えませんで残念でしたが、踊らされまして動画にほんのちょっと映っています。是非ご覧ください!動画はこちら

catedralmisagallo.png24日のクリスマスイブは夜中の12時になると教会でミサMisa de Galloが行われます。敬虔なキリスト教の信者はミサに行きます。この日のミサは特別盛大で、昔、地方の友人の家でイブを過ごした時、いっしょにミサについていったことがあります。信者でない私には退屈でしたが、子どもの合唱隊が馴染みのビジャンシーコを歌ってそれなりの雰囲気があったのを思い出しました。それで、ちょっとグラナダのカテドラルを覗いてみましたが、ビジャンシーコらしき歌はなかなか歌わないので間がもたず途中で失礼しました。小さな村の教会の方がファミリーなのかもしれませんね。

porrona.png大晦日Noche Viejaは12回の鐘の音に合わせて12粒のブドウUvaを食べて新年を迎えますが、その後は皆で新しい年をお祝いしてパーテーとなります。日本でもパーテー組や初詣組とかでそれぞれですが、スペインも若者はディスコとかで朝まで、フラメンコ好きは勿論フィエスタです。
ビジャンシーコに限らずフラメンコを歌ったり踊ったりで夜を明かします。クリスマスの期間中は昼間もみんなが集まってフィエスタになることがあったりします。それっていいですね!みんなそれぞれ問題抱えているものだけれど、一時的でも全てを忘れて愉しんでいる。ビジャンシーコはそんな人々の輪の中に存在し、クリスマスの伝統的な音楽として生き続けているのです。