高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

春先のフラメンコen Granada


クリスマスが終わってビジャンシーコの歌声も、イルミネーションも消えてしまったと同時に一斉にバーゲンが始まり、街なかの賑わいは以前と変わりない感じです。さて、これから春に向かって見られるグラナダフラメンコの情報などお届けします。

enrique.png2010年末に急逝したエンリケ・モレンテの貴重なフラメンコ資料・写真・身に付けていた遺品やオーディオ、ビデオなどが見られる、聴けるというファンの方には嬉しい展覧会Universo Morente. Creación y vida de Enrique Morenteが入場無料で開かれています。目を惹くのは同時に展示されているエンリケの奥さん、アウロラ・カルボネルの芸術作品で、そのため展覧会自体が更なる芸術的趣き、輝きを増しています。アウロラは踊りもうまいんですよ。でも美術の才能もあることは知りませんでした。エンリケのCDジャケットのあの絵は彼女が書いたものだったのかなどと知り、流石エンリケ・ファミリー!などと感心させられます。場所はアルハンブラ宮殿敷地内のカルロスⅤ宮殿の展覧会会場Museo de Bellas Artes. Palacio de Carlos Vですので宮殿の見学後に見られます。3月1日まで。


flamenco viene del sur.jpg1月中旬よりペーニャも再開し、2月末からは定例の催し物フラメンコ・ビエネ・デル・スルFlamenco viene del Surも始まります。今年はとても興味深く、踊りが多いプログラムです!ギターではディエゴ・デ・モロンとペペ・アビチュエラ、歌ではヘレスのお馴染みラ・マカニータ、ウエルバ出身の若きロシオ・マルケス、ベテランのエル・ペレ、踊りではパストーラ・ガルバン、イサベル・バジョン、グラナダのアナ・カリ、アナ・モラーレス、ルーベン・オルモなどのコンサートが観られます。5月11日まで。
2/23ディエゴ・デ・モロン(ギター)
Diego de Morón y Pepe Habichuela Guitarras de cal
3/2 ラ・マカニータ La Macanita(唄) Así canta Jerez
3/9 パストーラ・ガルバン(踊り)Pastora Galván ¡Pastora baila!
3/16 ロシオ・マルケス(唄)Rocío Márquez Por qué cantamos
3/23 アナ・カリ(踊り)Ana Calí P'atras
4/13 イサベル・バジョン(踊り)Isabel Bayón Caprichos del tiempo
4/20 アナ・モラーレス(踊り)Ana Morales ReciclARTE
5/4 ルーベン・オルモ(踊り)Rubén Olmo La tentación de Poe
5/11 エル・ペレ(唄)El Pele Recital flamenco


anacali.jpgさて、このフラメンコ・ビエネ・デル・スルに2回目の出演となるアナ・カリをちょっとご紹介します。ヒターノの血を引くアナは長年グラナダでは中堅バイラオーラとして活躍しています。普段はタブラオで働きながらも何かのイベントがあると積極的に参加しています。勉強熱心で長年の経験と現場で鍛えた実力の持ち主であるアナは、ここ数年創作意欲が増して来てその活動には目を見張るものがあります。数年前にはデ・コブレ・イ・ルナーレスDe Cobre y Lunaresという作品で、古のサクロモンテで踊られたいた一連の歌や踊りサンブラを自分なりに踊ったり、昨年はグラナダのアイレを盛り込んだ踊りでコルドバのコンクールに出場し、惜しくも数表差で賞は逃がしましたが素晴らしい演技を見せてくれました。今回のフラメンコ・ビエネ・デル・スルではパ・アトラスP'atrasという作品、これまたグラナダの古のアイレを振り返ることをテーマにした作品ということで楽しみです。アナは昨年来日してクルシージョも開催しています。


marioestatua.pngさて私は昨年夏に設置されたマリオ・マジャの銅像を見てきました。この銅像はマリオ・マジャの友人であり、マリオを何回も日本招聘している株・イベリア蒲谷照雄氏の切なる願いが叶い、グラナダ市、フンダシオン・マリオ・マジャ、蒲谷氏によって建立されたものです。場所はパセオ・デ・ロス・トゥリステスPaseo de los Tristesです。アルハンブラ宮殿を背にダーロ川沿いにあるこのパセオは、その昔アルハンブラの上の方にある墓地に埋葬される人々をここで見送ったと言われています。葬列がこのパセオを通って登って行ったのでしょうか。一時ここでフラメンコフェスティバルが開かれていた時もありました。バルが並んでいてグラナダに訪れたら是非行っていただきたい場所の一つです。

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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