高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

公演ラッシュ!フラメンコ、春真っ盛りのグラナダ②


毎年2月~5月にフラメンコ・ビエネ・デル・スルという催し物があります。月2~3回ぐらいで月曜です。これは1月にプログラムをご紹介していますが、場所はTeatro Alhambraテアトロ・アランブラというところでやります。300人ぐらい収容のフラメンコに最適な小劇場ですが、舞台は広く奥行きがあって、舞台装置も凝ったものをいままで沢山見ました。最前列の席は舞台と同じ高さで、1,5メートルぐらいしか離れていません。アーティストの息づかいまでもしっかり見ることができます。4月はIsabel Bayónイサベル・バジョンAna Moralesアナ・モラーレスの作品を観ることができました。イサベリータのCaprichos del tiempoカプリッチョ・デル・ティエンポ、これはうまく訳せませんが、幼少時代の自分を振り返ったりもして自分の舞踊人生を通して己を舞踊化したような作品でした。アナのReciclARTEレシクルアルテ、これはreciclar「リサイクルする」とarte「芸術」をくっつけたタイトルのようです。

flamencovienedelsurfolleto.pngどちらも作品も素晴らしいものでした。共通していることは、古えのアーティストの録音などをドバンと出して、イサベリータの作品では映像(ビデオ)も写しだされ、とにかくフラメンコ界の今は亡きカンテやギターのマエストロ(先生)達を振り返って、古きに学べ!とでも言いたいかのように作品に取り入れている。フラメンコの幅広い知識と教養とその中での発見がないとなかなかできない、そしてフラメンコ芸術に深い興味と愛好心がないとできない、そんな域の作品。今、こういった作品創りの傾向がちょっと流行っている、そんな感じもします。これはひとつのいい傾向で、フラメンコの知識を高めるためにも一役かっているようにも思えます。私は、分からないことがあると日頃の勉強不足を責められているようで落ち着かなくなります。あぁもう一度、二ーニャ・デ・ロス・ぺイネスの唄を聴きなおさないととか、マヌエル・バジェッホをちゃんとは聴いていないなとか......もう切りがないほど古いものは置き去りになってしまっていて、必要に応じで聴くだけで年月が過ぎて行く......。これは私の独り言。1時間踊りっぱなしの彼女たちの体力もさることながら、その思いのこもった作品づくりにOLEです。


次にFestival Internacional Musica y Danzaグラナダ国際音楽祭のプログラムをご紹介します。今年のフラメンコ関係公演はギター、カンテでグラナダの大物が出演します。とても充実したプログラム!もうチケットないかもしれないです。けっこう高い入場料ですが、直ぐ売り切れてしまうのです。(併行して行われるFEXのプログラムはまだ発表されていません。FEXの公演はあれこれありますし、入場無料が多いです。)チケットの値段は高い席でも40ユーロですから5,000~6,000円の話ですので、日本で見ること考えたら安いですね。

festivalmusiaydanza.jpg6月21日にはエストレージャ・モレンテのGranada...cante y guitarraというコンサートがあり、フォアン・アビチュエラ・ニエト、ダビ・カルモナ、ミゲル・アンヘル・コルテスのグラナダ生まれのギタリストとモントジータが出演します。歌はエストレージャの弟、ホセ・エンリケ・モレンテも出演します。また、バイオリンでハラル・チェケアが出演、踊りでフォアン・アンドレス・マジャが出演します。なんだか凄くグラナダたっぷりのコンサートです。
6月28日にはビセンテ・アミーゴのコンサートが、Palacio de CarlosVパラシオ・デ・カルロスキントであります。
7月4日にはアントニオ・ナハーロ監督率いるバレエ・ナショナル・デ・エスパーニャの公演があります。Blanca de Rey ブランカ・デ・レイのソレア・デ・マントンが見られるということです。懐かしい!ブランカのマントンさばきはもう随分前によく見ましたが、彼女はまだ健在なんですね。きっと彼女がマントン舞踊の元祖なんじゃないかな?とにかく素晴らしかったのです。
7月8日フォアン・アビチュエラ・ニエトのギターコンサートがPlaza de los Aljibesプラサ・デ・ロス・アルヒーベスであります。

manuel de falla.jpg7月10日La Fura dels Bausラ・フーラ・デルス・バウスというバルセローナの劇団の、革新的で魔術がかった作品らしいです。なんだか私によくわかりませんが、内容はマヌエル・デ・ファジャの恋の魔術師El amor brujoで、elfuego y la palabraというタイトルが付いています。Plaza de Torosプラサ・デ・トロ、闘牛場でやるんですよ。なんだか凄そう!スケール大きそうです。マリーナ・エレディアが出演します。これちょっと面白そうですね、私は観られないので残念です。


fesbenefico.jpgさて、よく慈善公演(チャリテーショー)があります。例えば、身体障害などの子供たちや、病気で苦しんでいる人達などのためにチケット収入を寄付する公演です。アーティストの名前が沢山ポスターに載っていて、楽しみに見に行くと出演しなかったりしてガッカリすることも多い。それは公演日に仕事が入っていないアーティストしか出ないのに、ポスターには一応名前を入れておくケースが多いからです。アーティストなどのHomenajeオメナへなどもそうですが、ギャラが出なくても進んで参加するアーティストもいるし、公演の内容によって変わってきます。でも見に行く側としては普段観られない、ピンからキリまでの色んなアーティストがでるので、面白いとも言えます。日本では見られませんしね。グラナダでも年に2,3回はあります。右のポスターは4月にあったチャリテー公演のものです。

あぁそれから、5月29日にグラナダにSara Barasサラ・バラスがやって来ます!サラは一般の人にも人気があるフラメンコアーティストで、つい最近もCanalSurテレビのお茶の間番組に出演しました。大きな劇場でやって入場料も高い(いい席は約50ユーロ)ですけどもうチケット殆んどない状態です!

まぁそういうことで、公演ラッシュで書ききれないです。グラナダはタブラオも増えて来ています。フラメンコ花盛り、おまけに春はフィエスタ、フェリアも各地でいっぱい!スペインフラメンコを楽しむにはいい季節です。
ただ、暑かったり寒かったり、そして、Abril(4月),aguas(水)mil(千)、雨も多い時期なので風邪ひかないように注意が必要だったりします。(つづく)

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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