高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

ペサディージャ(悪夢)


いきなりこの大根足をお見せするのはなんともお恥ずかしい話ではありますが、
これは5ヵ月前にスペインで右膝を捻挫し、救急病院で包帯をグルグル巻きにされた時の
写真なのであります。捻挫したのは、帰国前のハードスケジュールが原因です。
追い込み練習の他、雑用などであちこちへ出歩いていて、足の疲れを感じていたにもかかわらず、
ケアするでもなく無理してしまったのです。なんであの日に!そんなに急ぐこともなかったのに......などと今でも悔やまれる13日の金曜日!しかも仏滅、ああ!いろいろあった還暦の夏をこんなペサディージャ(Pesadilla悪夢)で締めくくることになるとは。

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不覚!わたしとしたことが......。でもその時はまだ大したことないだろうと思っていました。そのうちなんとか買い物に行けるようになり、3週間遅れて日本に帰国しました。
まだ踊るなんてとんでもなかったけれど、生徒もレッスンを楽しみに待っているのでクラスを再開。
痛みは動かなければそうでもないけど、クラスの後、どうも右膝の外側に辛いものがあり、
損傷した靭帯がまだよくなっていないようで、もともと昔から同じ場所にある良性腫瘍の痛みも
併発しているようで心配になり、仕方なく整形外科へ行きました。腫瘍は何でもないもので、
靭帯も痛みの原因ではなくて、どうも膝関節の半月板が心配だということで、MRIを撮りました。
そして外側の半月板が損傷しているのがわかったのです。やっぱりただの捻挫じゃなかった!
でも幸いなことに、内側の半月板はまだちゃんとしていました。

そのうちよくなるんじゃないかな、深く考えず、理学療法士の指示で筋肉の硬直をとるストレッチや
軽い筋トレなどのリハビリを続け、クラスだけ何とか続けました。そしてそのうち右膝外側の痛みは
相変わらずでしたが、だんだんサパテアードを加減して打てるようになりました。
よかった、この調子でしばらく我慢しながら無理せずやって行こうなどと思っていましたが、ある日レッスン中、ついうっかりバタバタやってしまったのです!だいたいが、気を入れないでフラメンコできないです。
足腰が安定しないと上体の動きも制限されて、中途半端な振付になってしまいます。
おまけに、自分の練習もできずにイライラしています。ちょっと足が先行してしまった。
その日はギター伴奏があったので、リズムに乗って調子づいてしまったようです。
耐えられなかった膝が見事に腫れてしまいました。
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★捻挫した時は、家の大屋の奥さんが毎日手料理を届けてくれました!この日は鶏肉の人参ソース、煮込みで白米付、デザートはグラナダ銘菓のピオノノです!(右上)グラナダに行ったらぜひ食べてね!

油断大敵!わたしらしいな......。ただの炎症かと思っていたら、腫れがなかなかひかず、
膝が曲がらなくなってしまいました。そして、お皿の上がなんだかブヨブヨしているのです。
嫌な予感!ひょっとしてこれが所謂「水が溜まる」ってやつかな?
よくお年寄りが「膝のお皿に水が溜まりまして...」と言っているのを聞くけれど......。
一度抜くと癖になるとか誰かが言っていたなぁ~。行かない方がいいかな?でも明後日のクラスが
この状態ではできそうにない、やっぱり行かなくちゃ!と、緊急に整形外科に行きました。
そして先生に確認しましたら、「そうですよ、抜きますか?」と簡単に聞かれました!なにしろ生まれて初めてのことですから、ちょっと動揺している私に親切な言葉は何もなく、サラッと「あなたの判断に任せます。」えーっ!どうしたらいいの~そんな簡単に決められな~い!
幸い、看護士がやさしく対応してくれて考えること1時間、わたしは決断しました!

取りあえず抜いてもらうことにしました。靴づれでできる水ぶくれの何百倍もの量がありそうで、
とてもあの水が簡単に引いてくれるようには思えなかったし、応急の処置として仕方なかったです。
処置後には膝も曲がるようになったし、2日後のクラスもなんとかできました。
しかし注射器で抜いた水を見せてくれたけど、とってもきれいなクリスタル・イエロー!
その輝きに見入ってしまいましたが、同時に2度と水を溜めちゃいけないな、
そう自分に言い聞かせました。

と、まあ、そういうことなのです。
今、捻挫から5ヶ月以上経ちましたが、今回の故障はその後の快復が遅いです。
ですので、舞台活動はしばらくお休みです。ちょっと暗い!憂鬱!
そして過去の怪我や故障の歴史を思い出してしまいました。

comida2.png
★これはキャベツの煮込み料理でモルシージャやチョリソが入ってます。

そういえば、初めての帰国リサイタルの1ヶ月前に、真昼間のアルバイシン(グラナダの地区)で
引っ手繰りに遭ってバックごと転がり、ろっ骨を打撲してえらい目に会ったことがありました。
膝の怪我では、やはりアルバイシンで、いつも目的地に向かって急ぎ足だからか、不運にも
マンホールにドスンと落ちてしまったことがありまして、打撲してちょっと深い傷を負いました。
また、セビージャで道を歩いていて何の因果か、段ボールの梱包用の頑丈な紐が足に絡まって
転がり、膝、肘などを打撲軽傷。日本に帰国中に自転車横転事故で膝や顔、腕を打撲軽傷した時は
大変だった思い出があります。などなどこの30年、我が膝は何回となく痛めつけられました。

これらはフラメンコとは関係なく起きてしまったことです。でも腰の故障はフラメンコで
バンバンとサパテアートやったり、身体をひねくり回したりしてきたからかなと思います。
随分前ですが、帰国クルシージョでレッスンに追われている時に電気ショックのような激しい
坐骨神経痛に襲われ、立てなくなって痺れが止まらないので入院したことがありました。
あの痛みは2度と経験したくないですね。あれから何とか立ち直り頑張って来られましたが腰はもうもうガタガタで、きっと腰椎はぐちゃぐちゃでしょう。6年前に頑張り過ぎて、
その後も休む間もなくあれこれ仕事に追われていたある日、腰椎がガギクッと鳴り、腰痛が再発。
1年ぐらい舞台では踊れなくなりました。すべり症→椎間板ヘルニア→脊柱管狭窄症といった具合に
だんだんエスカレートして悪くなっています。

思い出せるだけでもいっぱいありました。何かある度にリハビリ生活。
長かったり、短くて済んだり。全く身体が資本ですから、強い身体づくりや体力維持、
痛めつけた身体のケアなどが大切ですね。普段から生活のリズムも調整して、
怪我をしないように気を付けるのも仕事のうちではないでしょうか。
自分の生活をみると反省ばっかり、事務作業に追われて身体のケアを忘れていることが多いです。
慌ててついうっかりという不注意も多いし、ただ気を付けているつもりでも、外に出ると
想定外の悪夢が待っていたりもするので怖いです。


さて、今回の故障でまともに踊れなくなってから、右足が痩せてしまいました。
そこで、痛みをかばいながらも1月からスポーツクラブに通い始めました。
水中ウオーキングに専念し、家で軽く筋トレとストレッチ、今月からマシンで負荷を増やしての
筋トレを開始しました。そしてこのところ、少しずつ効果が見え始めてきて、
駅の階段を下りるのが少し楽になってきました!
スポーツクラブではゆっくり炭酸泉浴もできて、とってもいいです!スッキリします。
なにしろ昨年の夏はスペインでしたので、お風呂が無く、3ヶ月間シャワーだけだったのです。
捻挫した頃は、身体も休められない状態で疲労が蓄積していたのですね。
一時は膝に水が溜まってどうしてよいのかわからなくなったけど、今ようやくちょっとですが
明るい兆しが見えてきました。もうすぐ春、調子をすこしでも取り戻せたら嬉しいです。

cantepalma.png

思うに、踊れない時って普段できないことを勉強できるチャンスでもあります。
今回リハビリ生活が長引き、去年の夏にグラナダで踊った踊りも、そのあと練習していたことも、
何もかも忘れてしまい、なんだかいつもリハビリ中はそうなのですが、自分がいったい何者なのか
わからなくなってしまいます。でもそんな中、私は自分の好きだったフラメンコを思い出しました。
ふーむ、そうだった。こんな世界に昔は憧れていた!などと昔を振り返りながら、
歌ったり、パルマ叩いたりとサパテアード以外のフラメンコを楽しんでいます。

もうすぐ生徒ライブがあり、私も何かやらなければなりません。先生は辛い!
でもなんとか踊れるかもしれない、そんな感じになってきました。
いつだったか腰がダメだった時の生徒ライブでブレリアをちょこっと唄わせていただいたけど、
悲しいかな、唄はダメ。声がダメ。オンチで声量もないのでやはりできたら踊りたいです。
無理できない時は椅子に座って踊ったり、小道具使ったり、ブラッソやパルマだけでもいいですよ。
左足はバンバンたたけるので、左足をうまく使って......考えればなんかできそうじゃないですか?
今回もなんとかフラメンキータで行こう!そう思っている今日この頃です。

《生徒ライブ3/7が終わったらスペイン行が待っています。タイムマシンに戻ります!》

chottohitokoto2.png今日2/28は「アンダルシア州の日」でお祝いしますが、フラメンコ界は偉大なパコ・デ・ルシアを失った悲しみに包まれています。お悔み申し上げます。パコが生きた時代に私もフラメンコできてよかった!パコが残してくれたフラメンコの財産、宝物いっぱいです。ありがとう!パコは永遠です!

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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