高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

やってます!「どんなタンゴ?」体験レッスン


今年は映画「サクロモンテの丘」が封切られ、その関連イベントでグラナダを踊ったり、サクロモンテに関するレクチャーや簡単な入門講座、「サンブラって何?」という講習会などさせていただきましたが、その後その流れで個人的に続けているのがタンゴス・デ・グラナダの体験レッスン「どんなタンゴ?」であります。

clase1.pngグラナダといえばタンゴの土地として有名で、沢山のタンゴ歌があります。ですが、さて踊りはどんな感じなのかといいますと、あれっ、どんななのだろう?首をかしげてしまう方も多いのではないでしょうか。
タンゴは、カディスやセビージャ、エストレマドゥーラ地方、マラガ、グラナダなどでそれぞれ独特のタンゴがあります。その中でもグラナダのタンゴはアラブの香りが濃いのが特徴で、殆んどはサクロモンテで発展しました。ですからだいたいの普通のテンポで歌われる、又はあちこちでタンゴ・デ・グラナダとして歌われるタンゴはタンゴ・デル・カミーノ(カミーノとはCamino del Monteサクロモンテのこと)で、タンゴ・パラーオなどとも呼ばれ、これは歌い方になると考えます。
とてもグラナダ的なのは、高音で力強く歌うバリエンテと呼ばれる歌い方で、とっても歌唱力がいります。アラブ風のサンブラは遅めのテンポで歌われ、コミカルなタンゴはだいたい早いテンポで歌います。グラナダのタンゴは幾つかに分類できますが、このようにテンポの速さで考えると、タンゴ・デ・ファルセータ(他にも呼び方があってややこしい)といって、実に速いタイプのタンゴがあります。これを踊るのは非常に難しく、それはそれは古の味がムンムンするものでありました......

そうでなんです!グラナダのタンゴはエスぺシアル(特別)なのであります。少なくとも私にとっては魅惑の世界です。とても私なんかに踊り熟せる世界ではないかもしれないですが、自分が踊るのに比較的スムーズに入り込めるタンゴもあって有り難い、豊かな気分になれるんですね。それで、いったいどんなタンゴなのかを体験して、グラナダ的なアイレを少しでも感じていただけたらと思い、私のクルシージョ活動の一環として始めました。

clase2.pngではいったいどんなやり方でやっているかといいますと、いわゆるサクロモンテの洞窟で今から50年ぐらい前に録音されたフラメンコショー(サンブラ)でのタンゴの音源を聞いて、それに合わせて私が簡易的に振付けた踊りをフラッシュ・モブみたいに踊っていただいております。誰かが踊っている録音ですので、それに合わせて踊るのは踊りにくいです。でもダイレクトにグラナダの典型的な歌やあの時代のギターのトーケが耳に入ってきます。サクロモンテ独特のハレオも聞こえてきます。まさに本場の雰囲気をつかむことができます。音楽でフラメンコ踊るのは学習段階では仕方ないことで、こうやって勉強するしか他に方法は見付りません。これでこれで私は気に入っています。

clase5.png要するに勉強するのは古いタイプの踊りであります。ご存知のようにフラメンコ舞踊は近年急激に発展し、舞踊テクニックが幅を利かす時代になってしまいました。なってしまったというのは、半分「残念だ!」という気持ちが私の中にあるからそう言うのかもしれません。勿論、発展するのはいいことで、その時代の踊りを踊る、そういうものだと思います。現代は現代で素晴らしいアーティストがいっぱいでてきました。ただ、踊りのモダン化がフラメンコ性を封じ込めてしまった感があります。古き良き時代のフラメンコ舞踊にはそのシンプルさの中にテクニックで解決できない、それなりの雰囲気、その人なりの持ち味がでていたものでした。そしてそういうものは、やはり各人が余裕を持って踊り、自然に出す、又は自然に出て来るものであって欲しいです。フラメンコが発展していく基となった昔のフラメンコの素朴なアイレを勉強しながら、踊りの世界での「自分」というものを見付けて欲しい、そんなふうにも思います。

clase3.pngフラメンコは各人が自由に振付けることができます。ですから勿論、モダンな振付でグラナダのタンゴを歌ってもらってタンゴス・デ・グラナダと称することもできます。でも伝統的なスタイルやアイレを心得た時、踊りが冴えてくるものです。私は他の土地のタンゴ歌も好きですが、それらをその土地でどんな風に踊られていたのか知りません。おそらく踊りは一般的なタンゴのノリで地方色はそんなに強いものではなかったのではないかと想像しています。
でもグラナダは違います。長年の洞窟フラメンコショー(サンブラ)で踊られてきまして、そこで雰囲気が固まりました。それを私は大切にしたいと思っています。ですから、この体験レッスンでは長年サクロモンテと付き合ってきた私の記憶や感覚を頼りにやっていますが、あんな感じだった、こんな感じだったな......、難しいです。私風になってしまっているでしょう。そこは私なりになんとか折り合いをつけて、自分も勉強し直すつもりでやっています。映画「サクロモンテの丘」の中でもまだ現存で昔からのアイレをもっている貴重なアーティストを見ることできるのは嬉しいですが、歌ばっかりですね~~~~。歌はそのまま残り、踊りはそのままは残らない......。
まぁとにかく、今の自分の持っている基本的なテクニックだけで充分なんで、要は皆さんのグラシアが自然に出て自分でも心から楽しんでいけるようになって欲しいな、皆さんの身体に潜んでいるものをもっと引き出してもらえたらな、という気持ちでやっています。

cursillonet.pngこの体験レッスンは現在月1回ぐらいのペースで続けています。若い方から60代の中高年の方、舞踊レベルも様々な中やっています。とにかくこの体験レッスンは雰囲気をつかんでいただくことを第一に考えています。来年は新しい音楽と振付でやってみたいと思います。将来的には生のギターで自分なりに踊れるようになれば楽しいですね。ですのでこのやり方でない普通の常時クラスも設けられればと思っています。興味のある方はドシドシご希望をお寄せくださいね。
実は前回のレッスンに地方からお越しだった飛び入り参加者がいまして靴無しで頑張ってくださいましたよ!クラスの雰囲気も明るく、皆さん楽しそうに受けてくださいました。おまけに主催者に協力的!忘れないために最後に撮っているビデオを公開することを承諾してくださいましたので、クラスの雰囲気をちょびっとだけですがお見せします。あなたも是非体験しに来てくださいね!

《グラナダの魅力、それはタンゴ/Tango de Graná体験レッスン》
♪ 音源があるから雰囲気つかみやすい!
♪ シンプルでそれなり、誰でも楽しく踊れる!
♪ 1回でだいたい、2回受けてバッチリ覚えられる!
[日時]12月10日(日)、1月28日(日) 13:30~14:50
[会場]後楽園プレステージ 
[料金]¥3,500(9人以上で500円引)
※1月の日時は変更になる可能性がありますので事前にお問合せください。
お問合せ、お申込み: ecoflamenco@nifty.com 高橋まで

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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