高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

Resistiré、スペインでコロナ危機に遭遇の巻


今日は雲が消えて青空、気持ちいいです。心地よい加減の太陽で暖かく、花粉がふわふわ飛んでいます。冬が終わって春になると普通は心うきうきしてくるものですが、今年はさんざんなことになってしまって憂鬱です。ですがちょっとご紹介したい歌もあるので、久しぶりに「カチューチャ便り」をお届けします。
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b,san juan cruz.JPGご存じのように新型コロナウイルスによるパンデミックで、このスペインも3月14日にEstado de Alarma(警戒事態)となり、国民に外出禁止令が出ました。こんな時ですけど、私は前々からの変えられない予定があってグラナダに戻っています。実は、この厳しいおふれが出たのは私が到着した翌日だったのです。スペインの若きリーダー、ペドロ・サンチェス首相のテレビ放送があり、第一声が"A partir de hoy, única autoridad es el Gobierno de España" 今日からすべての権限はスペイン政府にある、そんな感じでしょうか、こんなことを旗の前に立って言われちゃうと、ビクっとします、戦争でも始まるみたいな緊張感となり、えーっ、なんということに!...想定外の事態に愕然としました。

b,periodico.JPG日本でも「緊急事態宣言」ができるような法案が出ていて、そうなる前にスペインに行った方がいい、向こうのが安全かも、などと軽く考えていましたが、さすがに出発の2,3日前あたりからスペインも感染者数などが急に増えだし、おまけに出発の前日には世界保健機関のパンデミック宣言もありました。家族の反対や忠告を受けて私の心も揺れ動き、とても悩みました。でも目先のことに拘り、とにかく今回は用事だけ済ませ早く帰ってこようと、結局飛行機に乗ってしまったわけです。

警戒事態発令時点ではスペインの感染者数は約4千人、亡くなったのは100人以下でしたけど、その後急激に増えました。数字って怖いですね。1日に4千、5千人、一時はもっと多く感染者が増え、病院は対応で大変なことになってしまいました。全国民が不安いっぱいになりました。テレビは見るな、と言われましたけどやっぱり心配でくぎ付けとなりました。しだいに感染は勢いを増して世界に広がり始めました。私の乗った飛行機も最後のスペイン行の便となり、次の日から飛ばなくなったのを後から知り、複雑な心境になりました。

b,isabel.JPGこういう時でも必要不可欠な職業の人しか働けないので、限られた機関やお店しか開いていません。春の行事やお祭りも全滅、友達にも会いに行けない、社会生活が中断されて何もできなくなってしまいました。途方にくれました。外出禁止ですから家に閉じ込められました。うっかり許可なく出歩いてしまったら罰金が601ユーロ(約7万円)も取られるのです。警察がパトロールしています。食料とかの買い物なら近場に出られるのでそれがせめてもの救いです。でも感染しないように気を付けないとなりません。

とにかくどこもかしこも閉まってしまい動きが取れません。私の予定は宙ぶらりんとなり、観念して様子を見ながらじっとしているしかありませんでした。家の中でできるストレッチや筋トレ、ちょっと踊りの振りを思い出したり、突然襲ってきた時間の空間の中で、ではそれを生かして少しはたまり溜まったパソコン作業などもやってしまおう、などとも考えましたが、実際はニュースを見て状況を理解するのに政治用語などのスペイン語をいっぱい勉強しなければならず、それでもどうなっているのかわからないこともいっぱいで頭が混乱しました。ただでも心穏やかでない状態の中ですので、うまく気分を変えられず、自分がやりたいこともろくにできません。とても落ち着かない日々を送ることになってしまいました。
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そんな調子で6週間経ちましたが、なんと感染者は20万人を超え、亡くなった方も2万人を超してしまいました。いままで3回延長された警戒事態体制は一応5月9日まで続くことになっています。また延長されるかもしれません。職を失った人々は困っていますし、経済に影響するいろいろな問題が出てきて政府もあれこれ対策に追われています。

b,granvia.JPGでもこのところ、感染者数は増え続けているとはいえ、外出禁止の効果が出てきたのでしょうか、一時の勢いはなくなってきました。治癒者も増えました。事態収束の兆しが見え始めた感があります。あまり規制が長く続くと経済問題がさらに深刻になります。国民の外出禁止による精神状態も考えなければなりません。政府も3回目の延長ではやっと外出禁止などの規制を少しずつ緩めていく決定をしました。
最近は他の国でも制限を緩めはじめています。スペインも平常な社会に戻していく段階に入ったということです。5月は徐々に経済回復が始まるのです。しかし、これって凄く難しいです。相手はウイルス、感染症です。感染が収まったようでもまた広がらないようにしないといけません。私たち個人の、感染しない、感染させない、そのための深い認識も必要です。感染が怖いからまだ外には出ないと言っている人も多いです。サンチェス首相も用心しながら、くれぐれも慎重にやっていかなければならないと繰り返し言っています。

因みにグラナダは南部のアンダルシア地方で、アンダルシア地方はマドリッドやカタルーニャ地方に比べると感染者などはかなり少ないです。ですが政府は地域別に警戒事態を発令していくのではなくて、一気に全国を対象にしてしまったのですね。アンダルシアの中でもウエルバやアルメリアは、感染が少ないです。でも感染症の非常事態ですから国の決定も仕方ないかもしれません。このグラナダはマラガ、セビージャに次いで3番目に感染者や犠牲者が多いです。人口約90万で、感染者数が約2,600人です。亡くなった方が約240人です。犠牲者が多い中心部の地方ほどは深刻さが少ないですが、やはり感染症となるとみんな心配ですから、おとなしく政府の命令に従っています。ですから規制緩和はとっても嬉しいことだと思います。

b,puenteblanco.JPGそれで、どのように規制緩和が始まったかと言いますと、先ず先週の日曜日から(4/26)から子供の一時外出ができるようになりました。子供は本当にかわいそうです。家に閉じ込められてオンライン授業でしっかり勉強させられるけど外で思いっきり遊べない、公園も進入禁止になってしまったわけですから。ただし、14歳までの子供で、親とかの大人同伴、1㎞以内で9:00~21:00の間の1時間以内、勿論2mの距離を保つ、手洗いをする、マスクも推奨等。これは大切なことです。油断できません。

これで何も問題がなければ、1週間後の5/2からは子供の外出だけでなく、老人や、成人は夫婦での外出、個人スポーツができるようになるとか最初は報道されていました。そして、11日からは一般商店の営業再開、25日にはバル(一杯飲み屋)やレストランも再開とか、ということは友人たちともバルで間隔置いてですけど乾杯できるということですね、待ち遠しいです。個人のスポーツってジョギングとかでしょうか、時間帯は朝早く、夜遅くとか、これは子供の外出時間外でやってほしいと考えているのでしょう。その他少しずつ緩和の対象が増えていくということでして、細かいのでちょっとややこしくなりそうだなと思っていました。警察のパトロールも厳しくなるのか...

そうこうしているうちに、一昨日(28日)に政府の規制緩和のプランが正式発表されました。それは、5/4からの⓪準備期間、その後①5/11~、②5/25~、③6/8~の各段階、2週間ごと(子供外出が始まってから5/3までの1週間も準備期間とすれば2週間となる計算)の合計4段階の緩和を経て新しい平常な日常生活に戻していくというものです。ただし、公共医療、社会、経済面などの影響を考えた基準があって、それをクリアしないと次の段階に行けないそうです。よくわかりませんが、状況によっては次の段階に進めないこともあり得るわけで、問題なく順調にいけば6月下旬には平常にもどせるということです。長いですが仕方ないです。スペインの一部の地域では最初から①段階が適用されたりしています。

b.plazanueva.JPGバルとかは開いても最初は全体面積の30%、その後50%というふうに収容人数などに制限がでてきたりするんですね。ちょっと細かいので私もまだよくわかっていません。それに今日また発表があって、5/2からの散歩、個人スポーツなどの外出許可は、市民が14歳未満と14歳以上、70歳以上の老人等の3つのグループに分けられてそれぞれに時間帯が決められることになったというのです。これは外出禁止の緩和による人の密集を避けるためで、子供の外出可能時間が修正されて短くなりました。これによると14歳以上のだいたいの大人は朝6~10時、夜8~11時しか出られないです。これでは私には無理ですね。しばらくは今まで通り買い物行くだけで我慢したいです。私にとっては官公庁の窓口がいつ再開するのかが問題です。今回、市役所ともう一つのオフィスが開くのを待っていますが、再来週ぐらいになりそうです。はやく自分のことで動けるようになりたいです。また、いつになったら友人の家に遊びに行けるのか、そこのところがわかりません。
でもまぁ、これからはいままでの死んだような街が少しずつ活気づいてくるのでしょう。本当に事態が後戻りしてしまわないよう、各個人がモラルをもって行動し、規則を守らないといけないです。ちゃんと皆は守れるか...、心配もあります。

ということで、警戒事態が終わるのはまだまだ先ですね。でも今は一つ前進、普段の社会や生活が戻るまでのゆっくりの長い道のりを我慢強く歩いていくことになりますが、ちょっとずつ状況は回復に向かっていると信じて、手洗いして、人との間隔忘れず、マスクも付けて辛抱です。みんなカラフルマスクを作ってやっていますよ~。そしてこんな状況がスペインだけではないし、もっと死活問題な国もあるようですから、これからこのパンデミックの一刻も早い終息をただただ祈るのみです。
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目先のことに拘って飛行機に乗ってしまった自分、エゴイスティックな行動だった、失敗、家族にも心配かけてしまった。でも後悔しても始まらない、これも一つの試練と考えたいです。第2の故郷スペインです。スペインでの長い歴史がある私です。晴れて卒業となる前に「コロナ危機」に遭遇してしまったなんて運命的な感じもします。色々面倒なことになり、予期せぬ出費もあり、その上今回の目的も達成できなくなったとしても、それはそれで受け入れるしかないです。私だけじゃありません。みんなが影響を受けています。犠牲者も沢山でています。とにかく早く無事に帰ることが大切です。ただ、今は日本に移動するのもままなりません。もう少しヨーロッパの状況なども見ないとなりません。ちょっと長期戦になりそうですが、やむを得ません、自業自得です。我慢です。

b.cieloazul.JPGこの1ヵ月以上スペイン国民がそれぞれに不安や心配を抱えながらもMal tiempo, buena cara(直訳:悪い時でもいい顔で)でユーモアを忘れず、明るさを失わずポシティブにやっている様子をテレビで見てきました。何はともあれ、「がんばれスペイン」ですね、フラメンコが生まれ育った国ですし、こっちも元気ださないと。

実は、夜8時(とはいってもまだ明るいです)になるとバルコニーに出てAplauso拍手をしています。誰におくる拍手かと言いますと、それは、このコロナ衛生危機のなか患者の世話をしている医療関係の方々とか、その他国民生活を維持するために、国を守るために懸命に働いている人たちにおくる拍手です。屋上でも、テラスでも、バルコニーや窓からでもいい、その時ご近所さんたちと遠くからですが顔を合わせ、みんなで応援の拍手というわけです。緊急事態になってすぐに、ワサップWhatsApp(スペイン人の大半が活用しているSNS)で呼びかけられ、自然に国民の間で広まりまして、今や恒例の日常アクションとなっています。
全ての人が毎日遂行しているわけではないですが、こうやって応援して感謝して「みんなで、この危機を乗り越えよう」と頑張っています。ですから私も参加しています。実は私にとって、思いっきりPalmaパルマ(フラメンコの手拍子)を叩ける貴重な時間でもあります。ただし拍子はつけません、純粋なる拍手です。でもこの時、拍手し始めて1分ぐらい経つと音楽をかけるVecinos(お隣さん)がいて、この音楽がかかるとどうしても4拍子になってしまいます。

b,vecino.JPG冒頭でご紹介したい歌があると言いましたが、それはこの歌なのです。気軽に歌えるCanción(歌)です。ちょっとテンポは速いですがリズミカルでいいです、叫べます! ゆっくりでもそれなりに素敵に歌えます。試してみてください。今のみんなの状況にピッタリだからでしょうか、いままで1ヶ月聞いていながら聞き流していましたが、最近は私も歌いだしました。YouTubeのビデオを見てください。色んなミュージシャンが出てきて楽しいです。フラメンコのアーティストも出てきます。

曲のタイトルはResistiré 「レシスティレ」って言います。どんな意味かって言ったら、まぁこれは「耐えるさ、がんばるぞ~」みたいな感じでしょうか。歌詞付きですので、皆さんも歌ってみてください、4拍子でしっかり音頭をとってくださいね。踊ってもいいですよ、元気になります、Vamos!

●Resistiré2020 Video Oficial
YouTubeでの映像はこちら

●他に、こんなのもあります、きれいです!
スペイン国歌‐SOS COVID19 CORONAVIRUS
YouTubeでの映像はこちら

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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