高橋英子のスペイン、グラナダ、きもったま

コロナに負けず頑張る、グラナダ夏のフラメンコ2020 


今年はコロナ衛生危機に見舞われた全世界、スペインでは今、第2波との闘いが続いています。この夏のスペインフラメンコ、やっているのかどうなのかと気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、カンテ・デ・ラス・ミーナスのフェスティバルもありましたし、セビージャのビエナールフラメンコも始まっているようです。そしてグラナダでも事態が収束し始めた6月下旬からは毎年恒例の催物が開催されています。ただし、いくつかの公演はオンライン興行に変更になったり、会場に行けても席の数に制限があったり、マスク着用義務があったりで例年と違った様相を呈しています。またコロナ影響で急遽変更や新たに開催されたコンサートなどもありました。そして状況回復の願いを込めた素晴らしい公演が多く、コロナ禍にあえぐ人たちの心を癒しています。今回はグラナダ夏の恒例フラメンコフェスティバル(6月~9月)等をいくつか観たものの感想も交えてご紹介します。

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69festivalgranada.pngFesteval de Granada (グラナダ国際音楽舞踊祭)
fex (併行音楽祭) 6月下旬~7月上旬
もう69回も続いている由緒あるこの国際音楽祭は、世界各国からオーケストラ、音楽家、舞踊団などが参加する音楽舞踊全体が対象の格調高いコンサートが多い。今年、フラメンコではオンラインでギターのカニサーレス、歌のロシオ・マルケスやニーニョ・デ・エルチェ、舞踊ではバレエ・ナショナル前監督アントニオ・ナハーロ作品の公演などがありました。

fex.png併行して行われるエクステンシオン(FEX)は街の公共施設や広場、道でやったりもする入場無料の公演、第一線で活躍するアーティストの公演ではなく、参加するための公募があり、選ばれた人、団体などが参加できるようなシステムになっているという。入場無料なのは嬉しいのですが、早く行かない席がなくなるので、私も1時間前から並んで2つの公演を見てきました。

LaboratoriA Flamenco - Y perdí mi centro 7/24
 パラシオ・デ・キンタ・アレグレ Palacete de Quinta Alegre
raboratorio.jpgラボラトリオって最近よく聞きます。アーティスト以外のフラメンコセミプロやアフィシオナード等も参加して実験的な試みをする催し物なのでしょうか?フラッシュモブ的に街中で突然やったりするものもあるようですが、今回のグラナダフェスティバルに参加したラボラトリア・フラメンコというチームの作品は1時間半ぐらいの娯楽フラメンコといった感じで生活の中の存在するフラメンコな場面、考え方、表現などをフラメンコの音楽舞踊で振り付け舞台化したものでした。フラメンコのプーロな名詞を現代風突飛な振付で始まり興味をそそりますが、その後も数々の意表をつく面白いアイディア、ユーモアがいっぱいでよくまとめてあると感心しました。例えばフラメンコの歌を逆さになった体で歌ったりというサーカス的なシーンなどもありました。バルセローナからやってきた4人の女性が歌ったり、ギター弾いたり踊ったり、例えばラ・カーニャ等のパロも入れ込んでいました。一般的な意味でフラメンコ性は薄いですが、それなりにフラメンコの多様性を生かして豊かな感性を感じさせる作品で、衣装は作業着みたいなものを着用、一風変わった趣でそれなりに楽しめました。

raul.jpgRaúl Alcover: La voz de Federico - 7/26
パラシオ・デ・キンタ・アレグレ Palacete de Quinta Alegre
ラウル・アルコベルはグラナダのシンガーソングライターです。フラメンコアーティストとも親交があって、90年代のザンブラ復興活動でも活躍、一役買いました。その作品にも素敵なヒット曲があります。今回はロルカの作品群を自分風にまとめて作品を上演し、ラウルの率いる音楽隊がそれぞれの楽器、ピアノ、ギター、フルート、パーカッション、カスタネット...etcで盛り上げ、観客と一体となったFEXの最終日のグランイベントになりました。


fes de guitarra.jpgFestival de la Guitarra(7/27~8/7)
このフェスティバルはまだ新しく、今年で4回目です。ギターが主ですが関連した音楽が楽しめます。今年はマノロ・サンルーカルに捧げるフェスとなりました。初日のクラシックスペイン音楽ギターの名ギタリスト、ぺぺ・ロメ-ロのコンサートから始まって、最終日のファドなどを歌うDulce Pontes以外の公演は全て入場無料、場所もアルハンブラ宮殿の中庭、カルロスⅤ、カテドラル前広場、支役所中庭...など厳かで落ち着くスペースで嬉しいことです。

nieto.jpgフラメンコではカンテ・デ・ラス・ミーナスで昨年ギター(ボルドン・ミネーロ)賞に輝いたホセ・フェルミン・フェルナンデスや、同じくすでにボルドン・ミネーロ賞獲得者のフォアン・アビチュエラ・ニエト(写真)などのコンサートがありました。フォアンの赤いギター目立ちますね~。踊り手はサライ・フェルナンデス「ラ・ピティータ」、彼女はイバン・バルガスと11月にガルロチ出演が決まっていましたが、ガルロチ閉店で残念ながら中止になりました。これまたピカっと光る踊り手さんです。いつか日本行きが決まるといいですね。


Lorca y Granada2.jpgLorca y Granada ロルカとグラナダ(7月下旬~8月下旬)
フェデリコ・ガルシア・ロルカはグラナダが誇る芸術家、毎年8月の1ヵ月間アルハンブラのヘネラリッフェ公園内の野外劇場で行われる。いつもは1つの選ばれたロルカ関係の作品が毎日上演されますが、コロナ影響で今年は4つの公演が急遽上演されました。

●エストレージャ・モレンテの「Tesela」
●マヌエル・リニャンの「VIVA!」
●カルメン・リナーレス、アルカンヘル、マリーナ・エレディアの「Tempo de luz」
●エバ・ジェルバブエナの「Carne y hueso」

この中で「これは見逃せない!」と勇んで見てきたのがマヌエル・リニャンや日本でも人気のマヌエル・べタンソ、ミゲルアンヘルの出演する下記の作品です。

viva.jpg¡VIVA! ビバ!とってもいい公演です。とにかく歌もいいですのでフラメンコをいろんな角度から楽しめます。ホモセクシャルの男性ダンサー達の意欲的な公演なのでパワーが半端でないのです。あっという間の2時間でした。ちょっと長いといえば長く、もう少し短くすることは可能なのですが、出演者それぞれのアイレをたっぷり吸収できるので得した気分、今のままでもいいと思いました。
夢の世界から現実へ、異をつく感動的な終盤の構成はちょっとドギツイともいえるでしょうか、私は目が潤んでしまったけれどマヌエル・リニャンの挑戦的な試みにオレ!です。来年4月の日本公演が決まっているそうです。実現すればいいですね!


la-cañaflamenca.jpgLa Caña Flamenca カーニャ・フラメンカ
この催しものはグラナダの海岸の村Almuñécar アルムネェーカルで開催されます。今年は5つのコンサートがありまして、人気アーティストが参加。トマティート(7/18)、ディエゴ・カラスコ(8/8)、グラナダからはエストレージャ・モレンテ(8/16)、マリーナ・エレディア親子、クーロ・アルバイシン(8/28)など。
昼間は海水浴、夜はコンサートで楽しむ。車があれば日帰りでもグラナダから行けますよ!

live360.jpgLIVE 360° ライブ360°7月~9月
地方のコンサートなどを主催しているディプタシオン・デ・グラナダDiputación de Granadaでは、今年はちょっとモダンなタイトルでパンデミックでの景気喪失を取り戻そうという試みで、7月、8月に90種類のコンサートをグラナダの各村々で行っています。その催し物は実に沢山、音楽芸術関係全般でどんな人でも楽しめます。ジャズ、フラメンコ、シンガーソングライターの歌、伝統的音楽、ロック、フォーク、世界の音楽、クラシック、演劇、人形劇、舞踊、サーカス、マジック、ユーモア、映画...etc 村々の住民向け夏祭りといった感じで、気軽に見に行けるのがいいですね。


ogijares2020.jpgFestival de Cante Flamenco de Ogíjares
フェスティバル・カンテフラメンコ・デ・オヒハレス 9月4,5日
これはペーニャ・フラメンカが主催する恒例のカンテ・フェスティバルです。グラナダ近郊の村、オヒハレス Ogíjaresのカンテ・フェスティバルは、長い歴史があり例年大物アーティストが出演、ハレオが飛び交って盛り上がり、かなり大規模です。今年はソーシャルディスタンスを考えて前代未聞の2日公演となりました。チケット数も例年の半分に減らしています。
残念なのはアーティストが分かれてしまうこと、2日間車で見に行くのもしんどい、チケット代も高くつく...などはありますが、ポスターを見てみるとやっぱり2日見に行きたくなりますね。やっぱり中止せずに何とか続けたいという主催者側の努力にオレ!、応援しなくちゃいけないです。


juanangel.jpgその他の催し物など
愛好家の集まるペーニャフラメンカはささやかに可能な限りのコンサートをやったところもありました。プラテリアでは7月の毎週金曜日に野外テラサでカンテコンサートをやっていました。これは会員のためです。春のコンサートは全て中止になったので急遽決まったようです。写真はグラナダの中堅といってもなかなかいい味を持っているプーロなカンタオール、フォアン・アンヘル・ティラードと名ギタリスト、ルイス・マリアーノです。
市内の各地区でも夏祭りフィエスタなど例年はありますが今年は中止が多いです。また、8月18日はフェデリコ・ガルシア・ロルカの命日、Visnalビスナルでは慰霊祭などあったりします。自主的なロルカファンで例年集まるフィエスタなどは中止になりましたが、ビスナルVisnal主催でカンテフェスティバルがであり、ランカピーノ・チコとホセ・フェルミン・フェルナンデスのコンサートがささやかに行われました。


milnof1922B.jpgMilnoff 1922 - Granada Siente Flamenco ミルノフ1922
9月13~17日
グラナダはフラメンコを感じる(直訳)。これはアビチュエラ一族のカンタオール、ペペ・ルイス・カルモナが先頭に立って企画されました。1922年のコンクルソ・デ・カンテホンドを振り返り意識を高める目的で6月に開催される予定でしたが、コロナ影響で9月に変更になりました。グラナダ市主催で、日程変更後はパンデミックの影響下であえぐフラメンコ復旧の意図もあり、9月はグラナダフラメンコ花盛りです。出演はグラナダの中堅アーティストが中心、グラナダ音楽祭FEXのように街中でやるものがほとんどで入場無料ですが、でももうINVITACION(チケットの代わりに主催者が配る)は無くなりました。入場制限などもあるのですが何千枚かが配り始めて4時間で無くなったそうです。でも公園や寺院前広場などで昼間からやるものも多く、INVITACIONがなくても近くに行けば見られる、聞けるとは思います。椅子に座れないだけです。来年も続けられればいいですね。

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ざっとこの夏のグラナダフラメンコ状況をまとめました。スペインからフラメンコが無くなることはありません。こうしてみるとどのフェスティバルもなんとか続けています。ただ、恒例の大きなフェスティバルはまだ予算があるでしょうし、夏は屋外で行われるので少し救われます。ですがこれから秋に向けて、ただでもコロナ影響で外国観光客がいないので、フラメンコを近くで見ることができるタブラオや、ライブスペースなど室内で行われる小さな興行の問題が深刻化しています。多くの中堅アーティストに仕事がありません。でもこればっかりはしばらくの間、我慢するしかないということになってしまう、寂しい限りです。また日本の皆さんも行きたくてもスペインにはなかなか行けない状況で残念なことですが、来年の夏、または2年後とかにはこれらのフェスティバルを観に行く計画が立てられるように状況が回復することを祈っています。

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高橋英子 プロフィール

フラメンコ舞踊家。スペインに暮らしながら、現地での舞台活動を重ねてきた貴重な存在。81年渡西。83年、セビージャでセビジャーナスコンクールに入賞し話題を撒く。翌年、グラナダを代表する踊り手マリキージャのアカデミーに招かれてセビジャーナスのクラスを開講。以来グラナダに住み、フェスティバルやタブラオ、ペーニャ等に出演。リサイタルも度々開催している。98年にはスタジオ「ラ・カチューチャ」を開設した。一方日本では、ペヌルティモ・コンサートシリーズ、「きもったま鍋」シリーズなどを上演。フラメンコ舞踊独特のペソ(重さ)とコラヘ(怒り、内に秘めた激情)、そして粋なグラシア(愛嬌)に溢れたバイレは高い評価と人気を得ている。現在は日本でも常設クラスを開講し、日西を行き来しながら精力的に活動を続けている。
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